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東京海上が中核子会社を売却した「再保険」市場の厳しい現実

2018年11月13日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部,中村正毅(ダイヤモンド・オンライン

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トキオ・ミレニアム・リー
英領バミューダ諸島に拠点がある再保険のトキオ・ミレニアム・リー(TMR)。来年3月末の売却完了を目指す

 東京海上ホールディングスが、再保険事業の中核となる子会社、トキオ・ミレニアム・リー(TMR)を売却することを決めた。

 TMRといえば、毎年100億円規模の純利益を安定的に計上してきた“孝行息子”で、18年前の設立時には現会長の隅修三氏が携わるなど、東京海上にとっては特に思い入れが深い会社だ。

 にもかかわらず、一体なぜ本体から切り離すという決断に至ったのか。きっかけの一つが、昨夏に米国で発生したハリケーンだ。

 3度にわたって米国を襲来し、十数年に一度という甚大な規模の被害を及ぼしたことで、損害保険各社からリスクの一部を引き受けていた再保険会社は収益が急速に悪化。スイス・リーや独ミュンヘンなど大手の自己資本利益率(ROE)は、それまで10%台で推移(業界推計)していたものの、2017年は一気に2%台にまで悪化してしまったのだ。

 TMRも保険金の支払いが膨らんだことで、17年は170億円超の最終赤字に沈んでいる。

 ただ数年に一度のサイクルで、大規模な自然災害によって利益が大きく悪化するのは、各社にとっては分かり切ったことだ。

 むしろ再保険会社にとっては、大規模な自然災害を受けて、以降の契約更改で再保険の料率をいかに引き上げ、その後の高収益につなげられるかが最大の焦点だった。

資本流入がもたらす変調

「2割程度は保険料率が上がるのではないか」

 昨秋にはそうした期待の声が再保険各社から多く上がっていたものの、今年に入って待ち受けていたのは、更改しても料率が微増にとどまり、一部から悲鳴が上がるという厳しい現実だった。

 背景にあるのは、世界的な金融緩和でだぶついたマネーの流入だ。機関投資家が災害時の保険金支払いリスクを引き受ける「大災害債券」を中心に、年金基金などの投資マネーが集中。再保険市場がいわば“資本過剰”に陥ることで、リスクに見合った再保険料を取りにくくなっているのだ。

 年金基金などの第三者資本は、再保険市場に占める割合が足元で15%程度と5年前の2倍近い水準になっており、もはや一過性ではなく、構造的に保険料率の引き上げがしにくい状態といえる。

 資本流入の潮目が変わる兆しも見えないという状況で、再保険事業にこれ以上経営資源を投入し続けるべきではない──。東京海上が今夏、そう判断を下して売却に踏み出したことで、グループの海外事業に占める再保険の割合は3%程度にまで縮小するという。

 TMRの売却劇は、MSアムリンやSOMPOインターナショナルといった海外子会社を抱え、再保険の同割合が3割前後と大きい国内大手の戦略にも、今後じわりと影響を及ぼすことになりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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