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物流費高騰でも銀行の「警備輸送」だけが値下げされる理由

2018年11月13日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部,柳澤里佳(ダイヤモンド・オンライン

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警備輸送
大手銀行以外からも警備輸送のニーズが拡大中。訪日外国人が急増する地域では、ATMの現金補充や障害対応の依頼が増えている

 物流各社の2018年上期決算が軒並み好調だ。ヤマトホールディングスやSGホールディングスは、宅配便の平均単価を前年同期に比べて20%弱も改善。自然災害多発によるマイナス影響をも吸収する「値上げ効果」が表れた。

 業界最大手の日本通運も増収増益を確保。値上げ効果を通期で80億円とみていたが、上期で55億円を達成したため120億円に引き上げたほどだ。

 ところが同社の警備輸送事業だけは事情が異なる。警備輸送は現金などの貴重品を運ぶ業務で、防護ベストを着たガードマンが銀行の店舗間や駅、コンビニエンスストアのATMから現金を運んだりするものだ。今上期に同事業の売上高は350億円強と前年並みを維持したが、営業利益は3億円弱と前年同期比で7割も減った。

 大幅減益の理由は「主要顧客である銀行がゼロ金利政策の影響で業績が厳しく、値下げ要請が来ているからだ」と関係者は明かす。他の業界からは値上げに理解を得られたのに、銀行だけは「逆」だ。

 警備輸送は現場業務を下請けに出しておらず、自社戦力。人件費を含む固定費が他事業に比べて高いのも利益を押し下げる要因となっている。日通は警備業法の有資格者を含む警備員を約7000人抱えており、自社戦力による「高品質重視」は今後も継続する方針。値下げに応じてでも売り上げを確保し、人件費に充てるわけだ。

コンビニATMは稼げる

 もっとも、競合の状況は日通と異なる。警備輸送分野で日通に続く2番手の綜合警備保障(ALSOK)は「一部の銀行から値下げ要請はあるものの、他の新規客を開拓したため、増収増益で利益率は伸びている」という。

 同社が請け負うセブン銀行のATM業務では、現金を運ぶだけではなく、ATMの管理・運用、障害対応などをトータルでサポート。どのタイミングで幾ら現金を補充するか、紙幣の種類はどれが適切かなど、機械1台ごとに緻密に予測して補充、回収を行う。最新の予測機能によりセブン銀行のATMは99.9%の稼働率を誇る。

 この実績が評価されてALSOKは競合の契約をひっくり返すなど、ATM警備でトップに躍り出た(全国で約7万台)。

 3番手のセコムは、小売業や外食など金融機関以外の顧客に強い現金輸送専業のアサヒセキュリティを15年に買収。「人手不足により釣り銭準備や売上金回収などを専門業者にアウトソースする流れはますます高まっている」と事業成長性に期待を寄せる。

 日通はメガバンクなど古くから取引のある銀行の業務が競合より多く、値下げ圧力をもろに受けた。が、最近は訪日外国人の外貨両替も急増するなど警備輸送ビジネスの需要は拡大している。商機を狙い各社の競争は激しさを増していきそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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