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中間選挙を切り抜けたトランプ大統領に迫る次なる「逆風」とは?

2018年11月12日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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ポピュリズム的な政策を掲げ、破天荒な言動で世界中を混乱の渦に巻き込んできたトランプ米大統領 Photo:AP/アフロ

トランプ米大統領の「中間テスト」となった米中間選挙の結果を受け、米議会には上下両院で多数派政党が異なる「ねじれ」が生じることになった。この先、大統領選挙での再選をもくろむトランプ氏が成果づくりへ一段と過激な行動に出ることが懸念される状況にある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田幸平、竹田孝洋)

「トランプ大統領を支持するかどうか」──。端的に言えば、これこそが最大の争点となった11月6日投開票の米中間選挙。改選前は与党・共和党が多数派だった上下両院のうち、下院(定数・改選435議席)は野党・民主党が8年ぶりに過半数を奪還する一方、上院(定数100議席、改選35議席)は共和党が過半を保つ形で決着した。

 大勢判明と取引時間帯が重なった7日の東京株式市場は、現地メディアなどからの選挙速報に一喜一憂し乱高下。日経平均株価は続伸して始まった後、午後に下院での民主党の勢いが伝わると売りに押され、前日比61円95銭安の2万2085円80銭で取引を終了した。

 米中間選挙について株式市場が最も望んでいた結果は、追加減税やインフラ投資など景気浮揚目的の法案などが議会を通りやすいという意味で、上下両院とも共和党が過半の議席を得ることだった。

 だが、結果は上下院で多数派の政党が異なる「ねじれ」となり、トランプ氏の意図をくんだ法案の議会通過が難航するのは避けられない情勢だ。

一段の激化は不可避の
米中貿易戦争

 そうした状況下、これから日本を含む世界にどのようなシナリオが待ち受けているのか。

 前提となるのは、トランプ氏が2020年の米大統領選挙で再選を果たすことを最重要視している、ということだ。米国内の関心もそこに集まっており、識者からも「大統領選までの主な政治テーマは『トランプ氏が再選されるか否か』に尽きる」(みずほ総合研究所の安井明彦欧米調査部長)との声が上がっている。

 与党の法案が議会を通過しにくくなることから、今まで以上に大統領令を連発することが考えられる。大統領令で決定を下しやすい分野こそが、中国と激しい「貿易戦争」を繰り広げる通商交渉の分野に他ならない。

 支持者を引き付けてきたトランプ氏の「米国第一主義」は当然、今後も変わらない。財政政策が思うに任せなくなる分、通商政策で保護主義的な姿勢をこれまで以上に貫き、支持層へ訴えかける成果をつくるために各国首脳と交渉してディール(取引)をまとめようとしてくるだろう。

 トランプ氏の支持層である白人労働者には、中国からの安価な輸入品が雇用を奪ったとの考えがあり、大統領選に向けた成果づくりの観点からも、米中貿易戦争の一段の激化が懸念される。

 足元では11月末にアルゼンチンで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせ、米中首脳会談を開いて貿易分野での合意を探ろうとしているとの動きも伝わるが、トランプ氏が米国の貿易赤字が大きい相手国をたたく方針は一貫しており、「一見何らかの手打ちをしたように演出しても、再び手のひらを返すことは十分にあり得る」(丸紅経済研究所の今村卓所長)。

 またペンス米副大統領の10月上旬の演説にも見られるように、米国の対中政策は、知的財産権の侵害や軍事的拡張など多様な面から覇権争いを繰り広げる時代に入っており、中長期的にも強硬姿勢が緩むような環境にはない。

 来年1月からは2000億ドル相当の中国からの輸入品を対象とした追加関税率の10%から25%への引き上げが実施される公算は大きい。加えて、残り全品目に追加関税を課す可能性もある。

 対日政策に関しては、9月に交渉開始で合意した「日米物品貿易協定(TAG)」をめぐり、成果づくりの一環としてトランプ氏が自動車分野での譲歩や為替条項の明記などを迫ってくる可能性がより高まるだろう。

 下院は過半数で大統領の弾劾発議が可能だが、成立には上院で3分の2以上の賛成が必要なため、弾劾へのハードルは高い。

 すでに触れたように中間選挙前にトランプ氏が突如ぶち上げた中間層への追加減税案や、以前から公約に掲げるインフラ投資などは民主党の反対で実現しそうにない。

 そうした中、2年後の大統領選に向けて大きな逆風となり得るのは、回復局面が今夏で10年目に入った米景気の減速懸念が台頭していることだ。

 共和党は好調な景気や雇用増を今回の選挙戦でもアピール材料にしていたが、この条件が崩れる可能性も十分にあり得る。というのも、来年秋ごろには減税政策の景気押し上げ効果が一巡する上、足元では財政悪化を伴う「悪い金利上昇」の兆候が見られるからだ。

 つまりトランプ氏の「中間テスト(中間選挙)」は好況を支えに何とか通過したが、減税策で点数を“先取り”した面も少なくない。後にツケが回ってきたとき、世界経済はトランプ落選のみならず、激しい乱気流に巻き込まれることになりかねない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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