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スルガ銀めぐり自治体も混乱、海老名市が立ち入り検査する理由

2018年11月03日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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静岡県沼津市にあるスルガ銀行の本店
静岡県沼津市にあるスルガ銀行の本店 Photo by Takahiro Tanoue

神奈川県に続き海老名市も臨時立ち入り検査

 シェアハウス投資をめぐり、未曾有の不正融資問題を引き起こした静岡県のスルガ銀行。投資家のみならず、お隣の神奈川県など自治体でも混乱が起きている。

 10月22日、スルガ銀の横浜支店に対し、神奈川県が県財務規則に基づく臨時の立ち入り検査に入ったのだ。さらに同県の海老名市も、同行の海老名支店に対して、臨時の立ち入り検査に入ることが「週刊ダイヤモンド」の調べで分かった。

 銀行への立ち入り検査といえば、監督官庁である金融庁の“専売特許”というイメージだろう。だが、実は、地方自治体も定期的に検査を行っている。なぜなら、各種税金など行政に関わる「公金」の収納などは各金融機関が行っており、その事務が適切に行われているかを検査するためだ。

 だが、自治体による臨時の立ち入り検査というのは「ほとんど聞いたことがない」と、ある地方自治体の職員は困惑を隠さない。

 では、その経緯を見ていこう。

 まずは、神奈川県。スルガ銀に対し、金融庁が6ヵ月間の一部業務停止を含む行政処分を出したのが10月5日のこと。これを受けて神奈川県は、今年7月に定期検査を行ったばかりだったが、10月22日に初となる臨時の立ち入り検査に踏み切った。

 今回の行政処分を受けて、膨大な作業量を伴う収納業務について、スルガ銀が滞りなく行えるかどうかを見極めるためだ。

 もっとも、神奈川県にとってスルガ銀は「指定代理金融機関」であり、公金収納事務の大半を担う「指定金融機関」は横浜銀行である。あくまでスルガ銀は、業務の一部を“代理”している金融機関にすぎない。

 ところが、神奈川県に続いて臨時検査に入ることを決めた海老名市は違う。まさにスルガ銀が公金収納事務のメーンバンクともいえる「指定金融機関」なのだ。つまり、神奈川県とでは、事態の深刻さが大きく異なると言っても過言ではない。

 故に、神奈川県が臨時検査に動いたのに慌てた海老名市は、今年2月に定期検査を行っていたが、急きょ11月19日に臨時の立ち入り検査に入ることを決めたのだ。「数十年にわたりスルガ銀行と付き合ってきたが、臨時検査というのはついぞ聞いたことがない。おそらく初めてのことではないか」(海老名市職員)という。

慌てて預金口座を変更

 加えて、海老名市は公金の取りまとめを行う口座をスルガ銀に開いているが、今年4月に報道でスルガ銀の不正関与が取り沙汰されるや否や、従来の「普通預金口座」から、無利息ではあるが銀行が破綻した際に預金が全額保護される「決済用預金口座」に慌てて移行するはめに陥っている。

 また、海老名市は昨年、指定金融機関の輪番制を導入すべく、周辺の金融機関にヒアリングを行っていたという。「不正をキャッチしていたわけではない」(海老名市)というが、スルガ銀一本足打法への懸念があったのかもしれない。それだけに今回の事態は、海老名市にすればいかにもタイミングが悪かったというほかない。

 話を臨時検査に戻そう。海老名市は10月31日に公金業務に関する報告を受けており、今回の臨時検査ではその報告内容を踏まえ、偽りなく公金業務が履行されているかどうかについて、伝票などを精査することになる。

 今回の検査はあくまで業務の適正さを確認するのみだが、今後の成り行きによっては、「指定金融機関の変更を検討することは当然あり得る」(海老名市職員)と、厳しい姿勢を崩さない。

 片や、神奈川県も状況は同じだ。スルガ銀は行政処分に対する改善計画を11月末までに提出するが、同県は、これらの内容を総合的に見て状況を判断する。業務に支障をきたすとなれば、指定代理金融機関から外すことも視野に入っていることだろう。

 さらに、神奈川県庁にはスルガ銀の出張所が設置されているが、これは「指定代理金融機関だから出張所を置いている」(県関係者)ため、指定から外されるような事態になれば、「県庁に出張所を置いておけなくなる可能性が高い」(県内地銀幹部)という。そうなれば、スルガ銀のさらなるイメージ低下は避けられそうにない。

 前述の通り、スルガ銀は11月末までに業務改善計画を提出するが、その前の14日には中間決算の発表を控えており、不動産向け融資の自己査定結果を発表する。

 日本銀行が、同行の住宅ローン債権を元にした信託受益権を担保にして、2000億円超の資金供給を行う体制を整えるとの報道がなされているが、裏を返せば、それだけスルガ銀の体力低下が著しいともいえる。同行の行方を金融関係者のみならず、隣県の自治体関係者も固唾をのんで見守っている。

(週刊ダイヤモンド編集部 田上貴大)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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