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個人間の「スキルシェア」事業者が副業解禁でも相次ぎ撤退する事情

2018年10月24日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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副業
写真はイメージです Photo:PIXTA

 副業が解禁され副業元年と呼ばれる2018年だが、想定とは違う方向に進んでいるようだ。

 今年に発表された内閣府の調査によると、シェアリングエコノミー市場は16年で約4700億~5250億円。うちオンラインマッチングサービスやクラウドソーシングを含むスキル・時間のシェアサービスは約150~250億円程度だ。今は車などモノのシェアが先行して増えているが、今後はスキルシェアが伸び率の高い分野として期待されている。特に今年は政府が副業容認にかじを切り、スキルシェアがしやすい状況が広がると考えられている。

 スキルシェアとは、自分が得意なスキルや知識を個人間(CtoC)で“シェア”することで、分野は問わない。ビジネスにおける自分の専門分野はもちろん、語学やWebデザイン、料理や家事、さらには「Excelのショートカットを教える」「献立を考える」「イタリアについて何でも答える」といったちょっとしたスキルや知識も売ることができる。

 政府にとって副業解禁は、社員が他社など別の組織に所属し、そこで別の知見を得ることで、新たな発想を生むことが狙いであった。ところが、政府の狙いと企業の思惑にはずれがある。

 独立行政法人労働政策研究・研修機構が企業に今年行ったアンケート結果では、過重労働や労務管理の煩雑さを恐れ、企業の75.8%が「副業を許可する予定はない」と回答しているのだ。

 そもそも、副業を解禁している企業にとって「『副業』の位置付けは三つある」とPwCコンサルティングの野口功一常務執行役は言う。一つ目は、政府の狙い通り新たなイノベーションを生むために副業を促す企業、二つ目は離職防止のために副業を認める企業、そして三つ目が「福利厚生」として副業を認める企業で、実はこれが最も多い。

 こうした企業は、「うちは副業OKですよ」とアピールして少しでも採用を有利にしようとしているのだ。つまり、「副業OK」をうたう企業の全てが、必ずしも社員の副業に前向きというわけではない。

 副業解禁といいながら、フタを開けてみれば副業を認める企業は3割にも満たず、スキルシェアサービスの市場は伸び悩む。今年に入り、メルカリやランサーズ、クラウドワークスなど大手が相次いで撤退し、残っているのはココナラやストアカといったスキルシェア専業サービスのみとなった。

伸び悩むスキルシェアサービスに
参入するベネフィット・ワンの狙い

 そんな中、スキルシェアサービスを強化しようという企業もある。福利厚生代行サービス最大手のベネフィット・ワンだ。同社は昨年7月から、会員企業の社員向けに、CtoCのシェアリングアプリ「Worker’s Market」を提供している。

 このアプリを利用すれば、同社の福利厚生代行サービスを利用している会員(約475万人)の間で、モノやスキルをシェアできる。利用者は、モノやスキルをアプリの掲示板に投稿したり検索したりする際に、「社内限定」という設定も選ぶことができるため、社内コミュニケーションの活性化にもつながる。実はこの機能が、企業にとっては非常に都合がいいのである。

 先述したように、副業を容認する企業の全てが社員の副業に前向きなわけではない。社員が外部で副業すると、労務管理が難しくなるからだ。その点、社員同士でスキルシェアなどの副業をしてくれれば、匿名で使えるとはいってもある程度誰がどこでどんな副業をどのくらいやっているのか目が行き届く。

 同社サービス開発部の石田耕太郎新規事業推進グループ長は、「社内の福利厚生として、あくまでもコミュニケーションツールを目指す」と、サービスの狙いを語るが、企業側はコミュニケーションの活性化だけでなく、社員の副業を管理するための手段としても注目しているようだ。明らかに、政府の副業解禁の狙いとはずれている。

 しかし、複業(複数の本業を持つこと)研究家の西村創一朗氏は「副業のタネは社内にあることが多いため、筋のいいサービスだ」と話す。副業というと、ともすれば土日勤務の外食店でのバイトなどを選んでしまい、全くスキルアップにつながらないケースも少なくない。むしろ、社内で自分の特技を教えたり、勉強会を開いたりすることが、「自分に何ができるのか」を考えることが、本業の役にも立つというわけだ。

 そもそも副業の解禁は、個人の多様な働き方を実現するためのものであり、副業まで会社が管理しようというのは趣旨に逆行している。

 しかし、そんな企業側の論理をよそに、「世界中で個人の『信用』が重視されるようになってきている。将来的には、企業の看板より、信用が積み上がった個人の方が選ばれていくだろう」(野口氏)。そんな時代の到来に備えて、個人は会社に勤め続けるか否かにかかわらず、利用できるものは利用しつつ、信用を積み上げておくのが賢明なのかもしれない。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相馬留美)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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