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トランプ流「異端の経済政策」が中間選挙後も続く理由

2018年10月24日 06時00分更新

文● 末澤豪謙(ダイヤモンド・オンライン

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トランプ大統領
Photo by Keiko Hiromi

 今月に入り、世界同時株安が再度、進行している。

 10月15日の日経平均株価はムニューシン米財務長官の日米貿易協定に為替条項を盛り込むとの発言などから大幅下落、前週末比423円安の2万2271円で引けた。その後も、内外で株価は不安定な展開が続いている。

 NYダウは10月第2週に1100ドル下がった。特に10日と11日の2日間で計1377ドル下落したが、今回同様、米長期金利が上昇した後の2月5日の週には1330ドル下落、5日には下落幅が過去最大の1175ドルになり、今回もその時と似た展開といえそうだ。

同時株安招いた金利上昇
景気拡大局面で大型減税

 米国は日本と違い、個人金融資産における現預金の比率が小さい(図表1)。金利上昇局面では、リスク資産から金利商品へのシフトが進み、結果として、株安などを招きやすいと考えられる。

 これは、過去最大の株価下落率となった1987年10月19日(月)の「ブラックマンデー」時にも見られた傾向だ。

◆図表1:日米個人金融資産の構成比較(2018年6月末)

出所: 日本銀行、FRB資料よりSMBC日興証券作成 拡大画像表示

 ただし、通常、金利上昇局面では、好景気を背景に米財政収支も改善する。いわゆるビルト・イン・スタビライザー効果で、税収が増え、国債の発行額は抑制される。

 またFRBの利上げが継続することから将来の景気減速・後退予想に加え、国債需給面からもイールドカーブはフラット化し、中立金利を超えた一定の水準では、長期金利が短期金利より低くなる逆イールド化すると考えられる。

 ところが、トランプ政権は既に米経済の拡大局面が戦後第2位の長さ(丸9年、2018年6月)になる中、過去最大規模の大型減税を実施、一方で国防費を大幅増額したことで、財政収支を悪化させた。

 加えて、FRBの国債保有残高が減少していることで、市中向けの国債が大増発されている。

 短期金利と長期金利のスプレッドが縮小しても、逆転に至らないのは、米国債の大増発の影響も大きいと考えられる。また、保護主義は海外からの米国債の需要を弱め、米国内の資金調達コストの上昇にもつながっている。

◆図表2:米国債の市中増発必要額と米長期金利の推移

出所: 財務省及びQUICK資料よりSMBC日興証券作成 拡大画像表示

 異端とも見えるトランプ政策は、史上最高の株高、個人純資産の100兆ドル超え(2018年6月末時点で106.9兆ドル)、雇用市場の大幅改善(失業率は3.7%と、48年9ヵ月ぶりの低水準)などをもたらしたが、長期金利の上昇などは、景気拡大の持続性に関しマイナスの影響を与えつつあるとも考えられる。

「光あるところに影がある」ということだ。

中間選挙、再選意識して
公約実現に「邁進」

 トランプ大統領は11月6日の中間選挙、さらに2020年の大統領選での再選を目指し、公約の実現に、一段と邁進するとみられるが、先の大統領選の際、2016年11月9日の東京市場では、トランプ勝利の第一報を受けて、日経平均株価は前日比919円安で引けた。

 NY市場ではトランプ氏のリフレ政策を好感して株高が続いたが、日本やアジア市場の株価が下落したのは、トランプ氏の大統領選時の公約の保護主義的側面を警戒したとみられる。

 ちなみに公約のトップ3は、「Pay for the Wall:(メキシコ国境の)壁の建設代金を支払わせる」「Healthcare Reform:医療保険制度改革」、そして、巨額の貿易不均衡是正などの「U.S.-China Trade Reform:米中貿易改革」だ。

 また、2015年6月16日、NYのトランプタワーで大統領選への出馬表明を行った際、トランプ氏は「日本は米国に何百万台もの車を送ってくるが、東京でシボレーを見たことがあるか」とし、「中国、日本、メキシコから米国に雇用を取り戻す」と訴えた経緯もある。

  2週間後に迫る中間選挙は、「ロシアゲート」問題を抱えるトランプ大統領にとっては、結果次第では、自らが弾劾されかねない重要な選挙だ。力の入れ方も半端ない。

 大統領は、日々、ツイッターや支持者の前で好調な米経済や株高などを自らの成果として声高に宣伝。地方遊説も積極的にこなし、米中貿易改革等、2016年の大統領選時の公約も矢継ぎ早に実施に移してきた。

中間選挙予想では
民主が下院で多数派に

 終盤の選挙情勢は、カバノー連邦最高裁判事の承認騒動の影響で、中間選挙への共和党支持者の関心が高まったことで、共和党がやや持ち直す動きになっており、セクハラ疑惑を抱える同判事の承認に激怒する民主党支持者との間で、「ガチンコ」勝負の様相になっている。

 政治専門サイトのリアル・クリア・ポリティクス(RCP)の予想(10月21日時点)でも、今回35議席が改選となる上院は、優勢は共和8に対し、民主21、トスアップ(五分五分)6だ。

 トスアップ選挙区は現有共和2:民主4。非改選を含めると、優勢は共和50に対し、民主44、トスアップ6となる。トスアップなしの予想では、共和53に対し、民主47と、現在の勢力から共和が3議席増となる。 

 一方、下院(435議席)は、優勢が共和199に対し、民主205、トスアップ31。大接戦となっているトスアップ選挙区のうち、30選挙区は共和党が現職であり、共和党の議席減が濃厚だ。1ヵ月前と比較すると、共和党がやや追い上げているが、依然、下院は民主党が多数派を奪還する可能性が高そうだ。

◆図表3:米中間選挙の情勢(上図が現在、下図が予想、10月21日時点)

出所:米上下両院及びRCP資料よりSMBC日興証券作成 拡大画像表示

 また知事選は、優勢が共和23州に対し、民主19州、トスアップ8州で、トスアップなしの予想では、共和26州に対し、民主24州とほぼ互角となる。現状は共和33州、民主16州、無所属1州であり、民主党が州レベルでも、勢力を回復する可能性が高い。

 カバノー氏の連邦最高裁判事承認問題は、キリスト教福音派などの共和党のコアの支持者の結束を強めたことで、共和党地盤州で、民主党の現職が共和党の新人に敗れる可能性が高まっている。具体的には、ノースダコタ州とミズーリ州だ。結果、共和党が2議席増となる予想だ。

 ただし、上院でも、ヒスパニック等の人口が増えている州では、民主党が議席を共和党から奪う可能性がある。具体的には、ネバダ州とアリゾナ州だ。この場合、最終的な勢力は共和51に対し民主49と、現有議席と同じとなる。

 一方、下院では、カバノー氏の連邦最高裁判事承認問題は、民主党支持者や無党派や共和党穏健派の女性の反感を買ったことで、民主党が多数派を奪還する可能性をやや高めたと考えられる。

低所得白人男性は共和党に
高学歴白人女性は民主党に

 実際、ワシントンポストとABCニュースが10月8~11日に実施した世論調査では、有権者登録済みの有権者のうち、「必ず投票に行くないし既に投票済み」の割合は2014年10月の65%に対し、2018年10月は77%と12ポイント上昇。特に、民主党支持者では63%から81%に18ポイント上昇した。

 これに対して、共和党支持者は75%から79%の4ポイントの上昇にとどまった。無党派層も59%から72%に13ポイント上昇し、特に若年層や非白人層での上昇が大きい。18-39歳は42%から67%に25ポイント上昇。非白人は48%から72%に24ポイント上昇した。

 2016年の大統領選でも、若者や非白人層は、民主党のクリントン候補に投票した割合が高いことが出口調査などで明らかになっている。

 この世論調査を見る限り、民主党支持者ないし無党派層における相対的民主党支持者の投票意欲が4年前の中間選挙時と比較して大きく高まっていることがわかる。

 なお、下院に関しては、2010年の国勢調査に基づく選挙区割りの有利になるような変更、いわゆる「ゲリマンダー」ないし「ゲリマンダリング」の影響も指摘されるが、2016年の大統領選以降、民主党と共和党の支持層に変化が見られており、前回の中間選挙に比べると影響は軽減されていると考えられる。

 具体的には、従来、民主党の支持者であった低学歴・低所得の白人男性層が共和党にシフトする一方、高学歴・高所得の白人女性層が民主党にシフトする傾向が見られる。

米国の「分断」や
財政拡張、保護主義は続く

 仮に事前の予想通り、上院は現状維持ないし若干の共和党の議席増、下院は民主党が多数派を奪還、知事も拮抗することになれば、米国の人口動態的には、共和党は2年後のみならず、長期的にも相当厳しい時代を迎えることになりそうだ。

 共和党の上院の改選議員は次回以降、急増することや、民主党知事の下、下院の選挙区割りも民主党に有利なように変更される可能性が高いからだ。

 いずれにせよ、今回の米中間選挙は、保守とリベラル、共和党と民主党の溝を一段と深める可能性が高く、米国の分断状態や混乱は、2020年の大統領選・議会選に持ち越されることとなりそうだ。

 中間選挙の結果、上院は共和党が下院は民主党が多数派という「ねじれ議会」となった場合、増税や社会保障費の削減といった法案は、与野党の反対で成立しないものの、国防費等の歳出増に関しては、超党派の賛成票が集まりそうだ。

 このため財政収支が悪化、それが、金利上昇を招き、利払い費の増加等を招くという財政悪化スパイラルが続く可能性がある。

 また、保護主義は伝統的には、民主党の「お家芸」であり、この点に関しても、むしろ超党派で推進される可能性がある。

 過去の多くのケースで、米経済、また、世界経済のピークアウトは米株価の下落から始まっている。

 足元の米国の実体経済は強いものの、トランプ政策が景気変動を大きくしているとみるなら、2019年に向けては、内外株価や経済に関しても、ピークアウトの可能性を慎重に見極める必要がありそうだ。

(SMBC日興証券金融財政アナリスト 末澤豪謙)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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