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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第481回

業界に多大な影響を与えた現存メーカー System/370の投入で黄金期を迎えたIBM

2018年10月22日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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低価格帯のラインナップを増やし
顧客を確保

 さて、IBMはSystem/370と名称のラインナップはModel 168が最後になり、1977年に発表された後継製品はIBM 3031/3032/3033となった。

 内部構造はSystem/370世代の延長にあるものの、プロセッサー内部のパイプライン化や素子の高性能化、メモリーのインターリーブ化などで大幅に性能を引き上げており、3031はSystem/370 Model 148比で2~2.5倍、3032はSystem/370 Model 158-3比で2.5倍~3倍、3033はSystem/370 Model 168-3比で1.6~1.8倍の性能を出すに至っている。

 特にハイエンドの3033に関しては、1978年にはマルチプロセッサー化、1979年にはAttached Processor Complex(要するにベクトル演算用のコプロセッサー)を発売するなど高性能化が著しいが、これはもうAmdahl 470V/6への対抗であるのは明白である。

 IBM 303xはハイエンド機種であるが、続いて1979年にはローエンド~ミッドレンジ向けにIBM 43xxシリーズを投入する。まず発表されたのがエントリーモデルのIBM 4331とミッドレンジモデルのIBM 4341で、前者がSystem/370 Model 115のほぼ4倍、後者がSystem/370 Model 138の3.2倍ほどの性能になる。

ミッドレンジモデルのIBM 4331

 ちなみに価格は、先のIBM 3033の基本システムが48ヵ月リースの場合で月額7万400ドルからだったのに対し、IBM 4331は基本構成24ヵ月リースの場合で月額1585ドルからと猛烈に安く、IBM 4341でも同じく24ヵ月ローンで5975ドルからとされた。

 IBMの(Amdahlにはない)強みは、こうした低価格帯のラインナップが厚いことで、一般論的に言えばハイエンドの顧客からの売上よりも、こうしたローエンド~ミッドレンジの顧客からの売上の方が総額では大きくなる。

 利幅が少ない、ハイエンドの顧客ほどのインパクトがないなど、問題がないわけではないが、こうしたローエンド~ミッドレンジの顧客が将来はハイエンドに移行してくれる可能性もあるわけで、この市場がIBMの強さの源泉だったのは間違いない。

 結果として1980年の売上は262億1000万ドルと、またもや5年前のほぼ2倍を達成することになる。1983年には、IBM 4331の3倍の性能を持つ、やはりローエンド向けのIBM 4361と、IBM 4341の9倍(!)の性能を持つIBM 4381も追加されており、既存のユーザーのアップグレードが進むことになった(余談だが、このIBM 4381のみS/370-XA対応である)。

System/370の後継機を次々と投入

 System/370シリーズはこの後も続く。先ほども名前が出てきたが、1980年にIBM 3081が発表される。これはIBM 303xの後継となるハイエンド機種であるが、ここで物理アドレスの26bit化が実現される。内部にはLSI(大規模集積回路)が全面的に採用されることになった。

 ベースモデルはIBM 3081 Model Dで、これが5MIPSほど。Model Kが6.5~7MIPSほどで、Model Gがこれをさらに上回る、とされた。マルチプロセッサー構成も当初から用意されており、IBM 3033のほぼ倍の性能を実現した。

 ちなみに発表当時はIBM 3081は“Extended Real Address”対応ということになっているが、1983年にOS側の対応が終わったことでS/370-XA対応の、31bit物理アドレス対応ということになっている。

 IBM 3081のプロセッサー性能を高め、「最高速の単一プロセッサー」を搭載したのが1982年5月発表のIBM 3081、逆に4プロセッサーを搭載してシステムパフォーマンスを最高にしたのが1982年9月発表のIBM 3084である。(次回に続く)

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