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ユニクロ「柳井社長退任」へ地固め、矢継ぎ早の提携や子息昇格

2018年10月15日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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メディアに初公開された東京・有明の自動倉庫。人の姿はほとんど見当たらない
メディアに初公開された東京・有明の自動倉庫。人の姿はほとんど見当たらない Photo by Hiroki Matsumoto

「(ユニクロが)グローバルブランドとして確立された」(柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長)

 ファーストリテイリング(以下ファストリ)が10月11日に発表した18年8月期決算の席上、柳井氏は自信満々にそう答えた。

 それを裏付けるのが業績の好調ぶりだ。売上高は前年比14.4%増の2兆1300億円と、初の2兆円台となった。当期純利益も前年比29.8%増の1548億円と過去最高を更新した。

 好決算の最大の要因は海外ユニクロ事業の成長にある。18年8月期の海外ユニクロ事業の売上高は前年比26.6%増の8963億円となり、国内ユニクロ事業の売上高8647億円を初めて上回った。特に海外売上高の約半分を占める中国事業は、ユニクロブランドが浸透したことや、エリアごとの気候、ニーズに合わせた商品展開により、売上高は前年比26.9%増、営業利益は前年比47.1%という急成長となった。しまむらをはじめ、多くの国内アパレル企業が苦境に陥る中、ファストリは一人勝ちの状況だ。

 とはいえ、柳井氏が目指す世界一まではまだ道半ばである。最大のライバルである「ZARA」を手掛ける世界最大手インディテックス(スペイン)の18年1月期の売上高は253億ユーロ(約3.3兆円)、2位のスウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)は17年11月期の売上高が4%増の2000億スウェーデンクローナ(約2.5兆円)と、その差はいまだ大きい。

 前門に立ちふさがるのがこうした世界のアパレルの雄とすれば、後門にはアマゾンやゾゾなどのネット企業がいる。特にアマゾンは近年、ファッション分野に注力。日本でも今年3月、品川で世界最大規模の「アマゾン ファッション」専用の撮影スタジオを開設するなど、国内市場を虎視眈々と狙う。

事業モデルの進化へ向けて
矢継ぎ早に事業提携を公表

 これらの強敵を打ち破るための「秘策」が、柳井氏が掲げる「情報製造小売業」への転換だ。

 ファストリは企画から製造、販売まで自社で手掛ける「SPA(製造小売業)」という事業モデルで成功した。だが、今後はそれを発展させ、商品企画、生産、物流、販売までの全ての情報をITで一元管理する「情報製造小売業」に進化することで、機会ロスや過剰在庫による値引き販売の最小化を目指す。

 この事業モデル転換への動きは今夏以降、加速している。

 今年7月にはコンピューター制御によりニットを一着まるごと縫い上げる製造機「ホールガーメント」で知られる島精機製作所との戦略的パートナーシップを強化し、中長期で包括的なニット商品の開発と技術革新への取り組みを強化。

 9月にはグーグルとIT分野での協業を発表。人工知能(AI)を使った画像認識技術などを活用し、商品トレンドや需要予測などのシステムの構築を進める。

 そして10月9日には物流機器大手のダイフクと中長期的・包括的な物流に関するパートナーシップ合意書を締結。国内外で世界最新鋭の自動化設備を開発・構築する。同日、ファストリは10月からフル稼働したインターネット通販用の配送拠点の自動化された東京・有明の倉庫をメディアに初めて公開した。

 ベルトコンベアが敷き詰められた同倉庫は、無線タグのRFIDを使った自動識別技術で検品や在庫管理を自動化。人が担うのは、商品を配送用の箱に詰め替えるピッキング作業のみとなったことで、人員数は10分の1に減少。また、顧客の注文から出庫までの時間は「従来の8~16時間に対し、15分~1時間と大幅に短縮した」(神保拓也・グループ執行役員)。

 ファストリでは世界各地にあるユニクロの全ての物流倉庫を2~3年以内に自動化させる計画。投資額は1拠点あたり10億~100億円、合計1000億円規模に上る見込みだ。

 こうして矢継ぎ早に異業種との提携を進める背景にあるのは、「現在の(IoTややAIの進展による)産業革命が完成する前にやらなければならない」(柳井氏)という危機感が大きな理由だが、加えて、「ポスト柳井」体制へ向けた成長基盤の確立という点も見逃せない。

 冒頭の決算発表当日、柳井氏の長男と次男が執行役員から取締役に昇格することを明らかにした。ファストリの社内取締役は現在、柳井氏ただ一人だが、今年11月末の株主総会後は、長男・次男および岡崎健・最高財務責任者の3人が取締役に就任する。

 この人事の狙いについて柳井氏は「私がいなくてもガバナンス(企業統治)がきくため」であり、息子2人を経営者にする気はないことを強調した。

 柳井氏は来年2月で70歳となる。かねてから70歳での社長退任の可能性を示唆している。ファストリにとって、今年度は「ポスト柳井」へ向けた勝負の1年となりそうだ。

(週刊ダイヤモンド編集部 松本裕樹)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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