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麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第30回

坂本龍一のBTTB20周年リマスター盤なども

麻倉推薦:ヒラリー・ハーンのバッハは素晴らしいのひとこと、MQA音源も増加

2018年10月06日 12時30分更新

文● 麻倉怜士 編集●HK(ASCII)

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『Dancing Queen』
Cher

推薦

 あの偉大なるシェールによるABBAの名曲カバー。基本的にABBAのオリジナルバージョンとほとんど同じアレンジだ。おなじみの前奏が奏でられ、ABBAが出てくるのかと思いきや、器量が大きく、抱擁力たっぷりの、余裕のシェールのヴォーカルが登場するのだから、意外な新鮮さだ。ABBAの女性ヴォーカルは中高域の艶と燦めき(きらめき)が特徴だが、シェールは中低域の量感と、朗々とした歌い上げで迫る。お馴染みのヒット曲がワン・アンド・オンリーの、そして大人の朗唱で蘇った。デジタリーで金属的な力感たっぷりの強輪郭の音調で、前進力が強い。

FLAC:44.1kHz/24bit、MQA:44.1kHz/24bit
Warner Bros.、e-onkyo music

『Combo 66』
ジョン・スコフィールド

推薦

 ジャズ界の至宝とも形容されるギタリスト、ジョン・スコフィールドの最新作は全曲オリジナル。センターに定位するエレクトリックギターがよい味を出している。音場的には左右に分かれず、ギター、ベース、ドラムス、キーボードがファントムセンターの同じ位置にポジションを持つ。そのため音像的な凝縮感が高く、同時に演奏の密度の高さも反映される。軽快なベース、白玉の長押しのキーボード、激しくビートを刻むドラムスを背景に、グルーブ溢れるギターソロが、耳の快感だ。2018年4月9日、10日、ニューヨーク郊外のStudio Carriage Houseで録音。

FLAC:96kHz/24bit
Decca、e-onkyo music

『Lean On Me』
ホセ・ジェイムズ

推薦

 ソウルフルで、クリヤーな歌唱で綴られる、伝説のR&Bシンガー、ビル・ウィザースへのトリビュート・アルバム。センターに安定的に定位したソウルヴォーカルを、これまたセンターを中心に凝縮した音場構成のバックバンド(キーボード、ドラムス、ベース、ギター)が支える。色気がたっぷりと感じられる、ビロードボイスの音的な表現が深く、その質感の魅力が、ハイレゾによってストレートに聴く者に伝わってくる。2018年春、ロサンゼルスのキャピタルスタジオで録音。

FLAC:44.1kHz/24bit
Blue Note Records、e-onkyo music

『BTTB -20th Anniversary Edition-』
坂本龍一

推薦

 1998年に発表したピアノ・アルバム「BTTB」の20周年記念盤のハイレゾリマスター。エジプト生まれ女性エンジニア、ヘバ・カドリー氏がマスタリングした。しっとりした旋律と和声のピアノが音場センターに位置する。坂本らしい、ミニマルな旋律の繰り返しが、陶酔感を呼ぶ。1998年というともちろんデジタル録音に違いないが、音調はデジタリーではなく、懐かしさを抱くようなアナログトーン。誇張感や人工感をほとんど感じさせないナチュラルな響きが、耳に心地よい。

FLAC:96kHz/24bit、MQA:96kHz/24bit
ワーナーミュージック・ジャパン、e-onkyo music

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