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旧旭硝子・AGCがSASUKEスタッフの協力で目指す「大企業病の払拭」

2018年10月03日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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TBSの人気スポーツ・エンタテインメント番組「SASUKE」スタッフが製作に関与した「板ガラスの製法(フロート法)を模した子ども向けアスレチック設備」。全長36メートル。左側の滑り台から始まり、さまざまな障害を乗り越えて右側のトラックの荷台を目指す。ゴールでは、出荷スタンプが押されるという趣向 Photo by Hitoshi Iketomi

 9月2日の日曜日――。埼玉スーパーアリーナに併設されたコミュニティアリーナ(多目的スペース)に、TBSテレビの人気スポーツ・エンタテインメント番組「SASUKE」のスタッフ協力による巨大なアスレチックが出現した。

 実はこれ、世界一のガラス・メーカー、AGC(旧旭硝子)が開催した社内イベント「Aフェス」の会場内の光景である(AGCフェスティバルを短くして、こう呼称した)。

 社員の親睦イベントであるかのように思われるが、そうではない。れっきとした「社内改革活動」の一環なのである。

 昨年から今年にかけて、AGCは、社内改革活動に邁進している。

 2017年9月から、約1億円をかけて社内インターネットテレビ局(1年間の時限プロジェクト)を立ち上げ、社員参加型の番組を配信し続けた。加えて、10月中旬には東京・京橋にあるAGC studioを全面的に刷新し、過去には建築用板ガラスだけを置いていた空間に、最新の自動車用ガラスや化学関係の製品なども並べるようにした。

 さらに、18年4月には社内イントラネット上で、イラスト入りで社員のアバター(分身)を作れるサイトを公開し、「自分の夢」を宣言し始めた。代表権を持つ3人の最高経営幹部も、簡単な自己紹介を含めたアバターを作成した。

 例えば、シマパラ(作業服姿でポーズを決めるカピパラに扮した島村琢哉社長)、ヒラフクロウ(作業服姿で何かを思案するフクロウに扮した平井良典専務)、ミヤキネコ(左手で大きな小判を押えて右手で金運を引き寄せようとする招き猫に扮した宮地伸二専務)と3人そろって、“お堅い”イメージの払拭に乗り出している。

 18年7月1日からは、創業110周年で社名を変更したタイミングに合わせて、過去最大となる規模でテレビ・コマーシャル(人気俳優の高橋一生を起用)を始めた。

会場の中央には、AGCグループの社員が「私の挑戦」を書き込んだ大型の掲示板が置かれた。世界各国から集まった挑戦の数は3200枚以上。「顧客の夢を実現するために、私はどのような挑戦をするのか」というテーマで個人の問題意識を書いた点がポイントで、まず口に出して行動に結び付けることを狙っている Photo by Hitoshi Iketomi

 その上で、一連の社内改革活動の集大成として開催されたのが、冒頭のイベントである。天候が雨となったにもかかわらず、約1800人の社員や家族が集まった。中核となったのは、自発的に集まった100人の社内ボランティアだった。

 3人の最高経営幹部は、開会宣言を済ませたら控室に引っ込むのかと思いきや、最後まで会場に留まり続けて社員やその家族たちとの交流に勤しんでいた。A、G、Cの3チームで総合得点を競うイベントになっており、それぞれの幹部が各チームを率いていたからだ。

 他にも、子ども向けのアスレチック設備から、大人と子どもが一緒に遊べる実験ブース、全国のB級グルメを集めた屋台、部署対抗によるフットサル大会、AGCの歴史紹介コーナーなど、盛りだくさんの内容で、外国人の姿もちらほらしていた。会場の大型モニターでは、計158チームが参加した職場単位での「大縄跳びNo.1決定線」の映像などが流された。

 連結売上高1兆4635億円(17年度)、世界30ヵ国以上の国と地域に約5万3200人の従業員を抱える世界一のガラス・メーカーAGCは、なぜ約8000万円もかけてこのようなイベントを開催したのか。

「働きがい改革」とは何か

 背景には、社内の意識調査などで必ず指摘される「部署間の壁」(隣の部署やチームがどのような仕事をしているのか知らないし、知ろうともしない)や、「挑戦することを躊躇してしまう企業風土」(失敗したくないという意識が強く、最初から“できない理由”を考えたり、評論したりするばかりで自らは行動しようとしない)という積年の閉塞感があった。

 だからこそ、今回のAフェスでは、総じて「チームで一緒に何かをやる」ことにこだわったのだ。

 今回の社内横断プロジェクトで、現場責任者を務めた高橋葵サブ・リーダーは、「1日だけのイベントで終わらせてはいけない。今後も、AGCという“大きな1つのチームで事に当たる風土”が、グループ全体に伝播するような活動を続ける必要がある」と振り返る。

 現在、産業界では“働き方改革”がブームであるが、過去の改革ではさしたる成果を上げられなかったAGCは、因果関係を意識した新概念として“働きがい改革”に主眼を置く。これは、政府の意向に沿って、人事部を中心に制度設計自体を目的化して取り組むのではなく、あくまで一人ひとりが働きがいを実感できることを通して、自分の意思で挑戦する風土に変わることを目指す。その帰結として、働き方を変える――。

 日本の産業界で、AGCは1981年に欧州の老舗有力メーカー(グラバーベル)を買収したことから、グローバル企業の代表選手のようにいわれてきたし、実際に会社としても先進性を強調してきた。

 だが、いつの間にか、典型的な大企業病に罹り、にっちもさっちもいかずに行き詰まっていた。将来的に、これまで以上にグローバル化と向き合わねばならなくなった日本企業にとって、AGCの事例は “他山の石”とすべきであろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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