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マッキンゼー流感情コントロール術、怒り・悲しみの「見える化」で能率アップ

2018年10月03日 06時00分更新

文● 大嶋祥誉(ダイヤモンド・オンライン

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感情をコントロールするには?
写真はイメージです Photo:PIXTA

いまもっともビジネスパーソンに求められる能力――感情コントロール術。怒り、不安、悲しみなどをうまく制御できれば、集中力が増し、常に高いパフォーマンスを発揮できるようになる。『マッキンゼーで学んだ感情コントロールの技術』(青春出版社)より、マッキンゼーの問題解決のスキルを応用した、効果抜群の心の整え方を紹介する。

マッキンゼーで出会った感情コントロールの達人たち

 一流のビジネスパーソンほど、エネルギーを一つのことに集中して使うことが、大きな成果につながることをよく知っています。限られたエネルギーを効率よく仕事に向けることがパフォーマンスを上げる一番の方法であることを熟知しているのです。そして、その妨げの最大の要因が感情であり、感情に流されて振り回されてしまうことだと理解しています。

 私が以前勤めていたコンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーでは、優秀なビジネスパーソンにたくさん出会うことができました。みな例外なく感情コントロールの達人だったといえます。どんなに多忙で仕事をたくさん抱えていても、焦ったりイライラすることなく、目標に向かって最短距離で結果を出していく。それを最優先にするので、日常で派生する些末な感情にこだわることはありません。その徹底ぶりは見事だったと思います。

 ただし、彼らは感情を抑圧するのではありません。むしろ喜怒哀楽を素直に表現します。とても自然体でバランスがいいのです。冷静でありながら人間味にも溢れている。つまり魅力的な人物なのです。周囲の人望も厚く、良好な人間関係を築くことができる。それによってさらに仕事がしやすい環境が生まれていく。これこそが成功へ向かう「正のスパイラル」です。

 逆に仕事のできない人物に限って、些末なことに心を奪われ、そのたびに感情を乱しがちです。その結果、仕事のパフォーマンスも人間関係も悪くなる。まさに「負のスパイラル」に落ち込んでいくのです。

頭の良さやスキル以上に感情コントロールが重要

 感情コントロールは自己コントロールとほぼ同義と考えられます。米国のある研究によると、大学生の成績と30を超える性格特性との関係を分析したところ、学生の成績に関連する特性は「自己コントロール能力」だけだということが分かりました。自己コントロール能力は、学生のその後の成績を予測する方法として、IQやSAT(米国の大学進学適性試験)のスコアよりも優れていたそうです。

 ビジネスパーソンを調べた別の研究では、自己コントロールのスコアが高い上司は部下からも同僚からも好意的に評価されていることが分かりました。そういう人物は感情も安定していて腹を立てることが少なく、他人に対して攻撃的になったりすることが少ないという結果も出ました。

 頭の良さや仕事の能力以上に、自己コントロール、すなわち感情コントロールができる人が社会的にも成功する。これらの研究からも、そのように言うことができます。良い人間関係をつくり、仕事で成果を上げ、幸せな人生を送るために一番に必要なこと。それは感情コントロールなのです。

問題解決力は感情コントロールに応用できる!

 感情コントロール力は、持って生まれた才能や性格によるものだと諦めていませんか? それは大いなる誤解です。感情コントロール力は誰もが身につけることができるテクニカルな「技」です。

 私自身、かつては感情に振り回されがちな人間でした。しかし感情コントロールの技法を身につけることで、大きく変わることができたと思っています。じつは、感情コントロールはマッキンゼーで学んだ問題解決のスキルとよく似ています。マッキンゼーの問題解決の手順は、そのまま感情コントロールに当てはまるのです。

 まず問題解決の手順は以下の通りです。

1.真の問題を見極める

     ↓
2.問題の構造を把握する
     ↓
3.仮説を立てて検証する
     ↓
4.解決策を導き出す

 この4つが問題解決の基本的なプロセスです。これを感情コントロールに当てはめると、

1.感情を意識化し、冷静に受け止める

     ↓
2.感情が湧き起こった構造を把握する
     ↓
3.どうしたらその問題が解決されるのかを仮説を立てて検証する
     ↓
4.解決策を導き出す

 となります。

 まず大事なことは、湧き起こっている感情をしっかり感じ、認識すること。たとえネガティブな感情であっても、受け止めることが大切です(1.意識化)。

 その後、その感情がなぜ起きたか、真の問題を検証します。たとえば上司に企画書の出来が悪くて注意され、フツフツと怒りが湧いてきたとしましょう。怒りが湧いた真の原因は何だったかを冷静に振り返ってみる。すると、上司からの評価が下がるのでは、という不安感や、上司に自分の努力を知ってほしいという承認欲求、自分の同僚ばかり評価されているという嫉妬の感情などが背景にあり、それらの存在をそのまま認めたくないがゆえに「怒り」という感情に転化したのかもしれない。そんな構造が浮かび上がってきます(2.構造の把握)。

 その上で、自分はもしかすると努力をもっと認めてほしいという承認欲求が強いのでは、と仮説を立ててみる。もし、上司が成果だけでなく過程を評価してくれたらどう感じるか? 自分なりにシミュレーションしてみましょう(3.仮説の検証)。

 上司が過程を評価し、努力を認めてもらうことが、自分にとって何より重要ということであれば、問題解決策は自分の怒りの感情を爆発させることではない、と分かるはずです。

 たとえば、自分の企画書作成の過程を紙に箇条書きにし、この作業のどこに問題があったのかを上司に相談してみる。すると、あなたのこれまでの仕事の流れを理解してもらえると同時に、積極的に改善しようとしているあなたの態度を評価してくれるかもしれません。それがあなたの承認欲求を、満足させることにもつながっていきます(4.解決策を導き出す)。

「感情」を“見える化”すると解決可能な「課題」に

 要は、感情を何かモヤモヤした捉えどころのないものとして扱うのではなく、解決可能なロジカルな「問題」、あるいは「課題」として「見える化」すること。つまり、問題化することができれば、それに対する解決策も自ずと生まれてくる、ということがポイントなのです。

 その際、イライラしている感情が、作業が物理的に進んでいない焦りから来ているのであれば、人に助けを頼む、あるいは作業工程を見直すことが課題として見えてきます。

 あるいはその感情が、上司の自分に対する評価が気になるということから来ていると分かれば、自分のこれまでの仕事の流れを上司に示してアピールしたり、どこに問題があるかを指摘してもらうことで印象をアップさせるなど、次に取るべき行動がロジカルに導き出されてきます。

 いずれにしても、ロジカルな分析と思考が基本になっていて、まさにマッキンゼーで学んだ問題解決のスキルの真髄がそのまま応用できるのです。感情にとらわれ、それに流されてしまう人たちは、逆に言えばロジカルに問題を捉えることができない人であり、感情を解決可能な課題にまで落とし込むことができない人だと言えると思います。そして、それはやり方、手法さえ知れば、誰でも実践することができるのです。

 次回、具体的な感情をうまくコントロールするための、5つのテクニックについて解説します。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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