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睡眠不足で脳に恐ろしい影響が?子どもの最適な勉強・読書時間とは

2018年09月26日 06時00分更新

文● 川島隆太,松崎 泰,榊 浩平(ダイヤモンド・オンライン

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読書する小学生
写真はイメージです Photo:PIXTA

「本を読む子は頭がいい」を小中学生4万人のデータを使って科学的に検証。しかし、本を読むだけで勉強をしないと成績は上がらない。睡眠時間を削って本を読むと成績は落ちる…。東北大学加齢医学研究所のデータを用いて、読書・睡眠・勉強の最適なバランスを探り出す!同研究所の川島隆太教授監修の『最新脳科学でついに出た結論「本の読み方」で学力は決まる』(青春出版社刊)から抜粋してお知らせする。

1日24時間、何に使う?

 前回の記事では、読書習慣と学力に密接な関係があることを仙台市の調査結果を実際に示しながら科学的に証明してきました。今回は、読書の効果を最大限に発揮するために必要な生活習慣に着目します。

 どんな人間にも与えられる時間はみな平等で一日は24時間と決まっています。さらに、小学生ならおおよそ9時~16時の7時間、中学生なら放課後の部活動も含めると9時~18時の9時間を毎日学校で過ごすことになります。つまり、小学生は残りの17時間、中学生は15時間という自由に使える限られた貴重な時間を、いかにして有効に活用していくのかを各々考えていかなくてはいけません。

 まずは、人間の活動に必要不可欠な生活習慣である睡眠と学力の関係について考えてみましょう。皆さんも寝不足や徹夜明けで勉強や仕事が捗らないと感じたご経験をお持ちではないかと思います。なぜ、私たちには睡眠が必要なのでしょうか? 生物学的に見ると、睡眠中に分泌される成長ホルモンが重要な役割を担っていると言えます。

「寝る子は育つ」という言葉がある通り、睡眠中に分泌された成長ホルモンによって骨や肉体が形成され、子ども達の健康な成長が実現します。成長ホルモンと聞いて、「私はもう成長期は過ぎたから関係ないや」と思った方、実はそれは間違いです。成人の場合は身長こそ伸びませんが、成長ホルモンは細胞の新陳代謝を促進し、傷を治癒したり免疫力を高めたりするなど健康な体を保つための機能も持っており、大人になってもやはり睡眠は必要不可欠であると言えます。

眠らないと勉強がムダになる!

 さらに、脳科学的にも睡眠は非常に重要な機能を果たしていることが分かっています。ご存じの方も多いかと思いますが、睡眠には「浅い眠り(レム睡眠)」と「深い眠り(ノンレム睡眠)」を周期的に繰り返すリズムがあります。おおよそ90分周期で訪れるレム睡眠の間に、脳は日中の記憶を整理して定着させていると言われています。

 例えば9時間睡眠の人は一度の睡眠の間にレム睡眠が6回訪れるのに対し、6時間睡眠の人は4回しかレム睡眠を経験することができないという計算になります。つまり、睡眠時間が短ければ短いほど、レム睡眠の回数も減少し、記憶が定着するチャンスを逃してしまうということになります。

 皆さんも学生の時分に一夜漬けで試験を乗り切ったご経験を一度はお持ちではないでしょうか。確かに翌日の試験は徹夜の勉強で何とか合格したとしても、数日後には覚えた内容が頭からきれいさっぱり消えてなくなってしまいませんでしたか? これはまさに、徹夜によってレム睡眠による記憶定着の段階を踏まなかったことが原因であると言えます。

睡眠時間が短いと脳の“海馬”が小さくなる

 睡眠不足が持つ恐ろしい悪影響はそれだけではありません。私たち東北大学のチームの研究によって、睡眠不足は脳の機能の低下のみならず、脳の発達自体にも悪影響があるという恐ろしい事実が判明しました。

 5~18歳の健康な子ども達290名に「平日の睡眠時間」を尋ね、その子ども達の脳の発達を調べるためにMRIという装置を使って脳の「写真」を撮影しました。解析の結果、睡眠時間の短い子どもほど、脳の「海馬」という場所の体積が小さかったのです。

「海馬」は記憶を司る脳領域として知られており、睡眠不足は単純に脳の働きを低下させてしまっているだけではなく、その機能を担っている脳自体を破壊してしまっている、もしくは脳の発達を遅らせてしまっている恐れがあるという深刻な事実が判明しました。

読書と勉強、するとしないでこんなに差が出る

 限りある自由時間を使って、勉強を頑張って、適度な睡眠を取って、さらには読書までしなくてはいけません。そうなると、勉強・睡眠・読書にそれぞれかける時間の最適な組み合わせが知りたくなってきますよね。

 平成29年度の小学5年生~中学3年生を平日の読書「1時間以上」「1時間未満」「全くしない」という3群に分割し、それぞれ勉強時間、睡眠時間別の偏差値を算出しました。

 まずは読書「1時間以上」の子ども達は「成績上位層」が半分以上を占めていました。しかし、どれだけ読書をしていても、勉強を全くしない子たちは、どれだけしっかりとした睡眠を取っていようが、成績下位層に沈んでいました。

 同様に、5時間未満の睡眠の子ども達も、読書や勉強時間に関わらず、成績下位層に沈んでいます。特に、読書を「1時間以上」、勉強も「3時間以上」、一生懸命頑張っている子ども達でさえも、平均偏差値はたった44.1にしかならないという驚きの結果になりました。

 また、睡眠時間が6~7時間以上、勉強をたった30分未満しかしていなくても、「成績上位層」に食い込んできていました。しっかりとした睡眠を取りつつ、最低限与えられた宿題をこなしていれば、あとは読書の効果だけで学力を平均以上に上げることができたということです。

2時間の勉強より1時間の読書がよい?

 続いて、読書「1時間未満」群の最大偏差値は、読書「1時間以上」群と変わらず、勉強「3時間以上」かつ、睡眠「7~8時間」群の組み合わせで、55.1となりました。

 最後に、読書を「全くしない」群の最大偏差値は、勉強「3時間以上」かつ、睡眠「6~7時間」群の組み合わせで、53.4となりました。読書を全くしない子ども達は、勉強を「3時間以上」必死に頑張って、睡眠時間も「6~7時間」とギリギリまで削って、ようやく「成績上位層」に食い込むことができているといった印象です。

 ちなみに、読書「1時間以上」かつ勉強「1~2時間」かつ睡眠「8~9時間」群の偏差値が53.2と、ほぼ同じ値となっています。勉強にあてている3時間のうち1時間を読書に回してあげれば、同程度の成績をキープしつつ、1時間長く眠れるようになるという計算になります。必死に3時間勉強するのと、1時間楽しみながら読書を取り入れつつ、さらに1時間長く眠れるオマケ付き。皆さんならどちらを選びますか?

読書と勉強、最適な時間とは?

 これまでのデータから、小学生と中学生での「勉強・睡眠・読書時間の最適な組み合わせ」を求めてみました。しかし、単純に小学生と中学生で分割してしまうと、極端に人数の少ない群ができ、統計的な信頼性が失われてしまいます。そこで、勉強時間を「30分未満」「30分~2時間」「2時間以上」の3群に、睡眠時間を「6時間未満」「6~8時間」「8時間以上」の3群に組み替えて分析を試みました。

 平成29年度の小学5、6年生において、「勉強・睡眠・読書時間」の最適な組み合わせは、勉強「30分~1時間」かつ、睡眠「8時間以上」かつ、読書「1時間以上」で、平均偏差値は53.2となりました。

 トップは勉強「2時間以上」ではありません。小学生のうちは読書もそうですし、勉強以外のそれぞれ子どもの興味、関心に合わせた活動が結果的に高い学力に結びついていると言えるのではないでしょうか。そのため、小学生のうちはたくさん勉強させるよりも、たくさん読書をして幅広い知識や視野を身につけたり、豊かな感受性を養ったりしたほうが学力に結びつくと言えます。

 続いて中学生では、勉強「2時間以上」かつ、睡眠「6~8時間」かつ、読書「1時間未満」が最適な組み合わせとなり、平均偏差値は54.0となりました。小学生と比べると、中学生は学習内容が高度になりますし、宿題の量も増えてきます。そのため、成績トップ層を狙うためには堅実に「2時間以上」勉強を頑張る必要があると言えます。

 これまで述べたとおり、学力アップのためには読書習慣はあったほうがいいようです。無理に忙しい時間を割いてたくさん読むよりは、すきま時間を見つけて、毎日少しずつでも読書するように指導してはいかがでしょうか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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