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「移住してでも子どもを入れたい」長野に開校予定の欧州流異色小学校

文● 藤崎雅子(ダイヤモンド・オンライン

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2019年春、欧州で発展したユニークな教育システム「イエナプラン教育」の小学校が長野県に開校する予定だ。事前見学会や説明会は盛況で、中には首都圏から移住まで検討する家庭も。一体、どんな教育方針なのだろうか?

首都圏から移住を検討する家庭も!
長野県に開校予定の小学校

教育熱心な親たちが注目する「イエナプラン」の小学校とは?
オランダのイエナプランスクールの教室の様子。このようにサークルになって対話をする時間が大切にされている(日本イエナプラン教育協会のホームページより)

「リビングルーム」として設計された教室で、遊びや対話も学びのサイクルの1つに組み込み、異年齢グループでの学習活動を行う――。

 そんな異色の学校が長野県佐久穂町に2019年春、開校する予定だ(学校法人設立と小学校設置の認可申請中)。私立小学校、学校法人茂来学園「大日向小学校」である。同校が採用するのは、欧州の「イエナプラン教育」。イエナプラン教育とは、ドイツで生まれ、オランダで発展した教育コンセプトで、オルタナティブ(刷新的・革新的)教育の1つに位置づけられている。

 日本でオルタナティブ教育といえばモンテッソーリ教育やシュタイナー教育が知られている、既にそれらに基づく学校や保育園・幼稚園などが幾つも存在し、いずれも「自由」を重視した独特の教育実践が行われている。大日向小学校が認可されれば、日本で初のイエナプランスクールの誕生となる。その注目度は高く、現地および首都圏で定期的に開催している見学会・説明会は毎回盛況で、同校入学のための移住まで検討している家庭もあるという。

 では、イエナプラン教育とはいったいどのようなものなのだろうか? 大日向小学校の計画内容を例に見てみよう。

多様性、強化横断的学習…
イエナプランの斬新さはどこにある?

イエナプラン教育に基づく大日向小学校(設置認可申請中)の教室完成イメージ図。サークル対話を行う場所、グループ作業する場所、1人で学ぶ場所などがある

 同校の建学の精神は、「誰もが、豊かに、そして幸せに生きることのできる世界をつくる」というもの。その実現のため、イエナプラン教育のコンセプトを取り入れ、「個を尊重する」ことから始まる教育が計画されている。

 その特徴の1つは、異年齢での学習活動だ。3つの学年の子どもたちとグループリーダー(教師)で1つの活動グループ(クラス)を構成。このグループをベースに、4つの基本活動「対話・遊び・仕事(学習)・催し」を循環させる時間割で学ぶ。

「学校は、社会に出る前の練習の場、いわば『小さな社会』です。現実の社会を反映し、異なる年齢、異なる成長過程、異なる性別などの多様性を受け入れる共同体でなければならないと考えています。その中で、私たち人間が多様な存在であること、そして多様な人たちが共に生きるにはどうしたらいいのかを学んでいきます」(佐久穂町イエナプランスクール設立準備財団 宅明健太さん、以下同)

 同校の学習には、教科学習中心のブロックアワー(自立学習・基礎学習)と、教科横断的に学ぶワールドオリエンテーション(協働学習・総合学習)の2種類がある。

 ブロックアワーでは国語や算数などの各教科について学ぶが、教師が全員を対象に一方的に講義して進める授業ではなく、必要な子どもを集めて小さなインストラクション(教師からの説明)を随時行い、そこから子どもが自ら発展的問題に取り組むなど、自分の学習進度に応じて自立的に学ぶ。異年齢集団なので、例えば「かけ算」のインストラクションには2年生のほか3年生が参加するなど、理解不足だった部分を補うこともできる。

 一方のワールドオリエンテーションは、「イエナプランのハート」と呼ばれ、イエナプランスクールで非常に重視されている授業だ。実際に世界で起こっていることについて、「不思議に思うこと、好奇心を抱くこと、学び方(プロセス)を学ぶこと、そして、批判的に考えること」などに主眼を置いて学習するという。例えば、教室にニワトリを連れてきて、「ホンモノの情報源」を通して子どもたちの不思議に思う気持ちや好奇心を刺激し、「ニワトリは1週間に平均何個の卵を産むのだろう?」など、たくさんの問いを引き出す。それらの問いに取り組むことで、思考力や創造力を育んでいく。

「正面」のない教室で柔軟に学ぶ
新学習指導要綱とも親和性は高い

「2つの学習活動は、互いに無関係ではありません。ブロックアワーで学んだ知識を活かしてワールドオリエンテーションの課題に取り組んだり、逆に、ワールドオリエンテーションの中で生まれた問いを深めるためにブロックアワーで知識を得たりという具合に、相互の行き来の中で学びを深めていきます」

 こうした学習活動を展開する場として、教室のつくりも特徴的だ。一斉講義型の授業を想定していないため、「正面」は存在しない。サークルになって話すことのできる場所や、グループで作業する場所、1人で静かに学習する場所などがあり、周囲にはさまざまな教材やプリント類を配置。席に固定させるのではなく、個人、グループ、全体とフレキシブルに動きながら学べるよう工夫されている。

「教室は子どもたちにとって安心で居心地の良い『リビングルーム』として設計しています。ここで子どもたちが安心して過ごせ、言いたいことが言い合える、安心安全の場でなることを大切にしています」

 同校での生活は、「全員が正面を向いて教師の話を聞いている」という、多くの人が抱く学校のイメージとはだいぶ異なりそうだ。

「イエナプラン教育は、従来型の教育とは異なる特徴があることは確かです。しかし、そんな日本の教育も変わろうとしているなか、その方向性とイエナプラン教育は親和性が高いと感じています。平成29年告示の新学習指導要領では、知識の習得だけでなく思考力、判断力、表現力等を含めてバランスよく育成することを目指し、授業改善や課題探究型学習などの推進を求めており、その傾向はいっそう強まったのではないでしょうか。本校の実践イエナプラン教育の特徴を効果的に出しつつ、あくまで日本の小学校としてのカリキュラムを作成して取り組んでいきます」

 新学習指導要領と親和性があるイエナプラン教育のコンセプトは、既存の学校の中に取り入れることもできるのではないだろうか。日本初のイエナプランスクールの実践が、今後どう広がっていくか注目していきたい。

(藤崎雅子/5時から作家塾(R))


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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