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悪徳NPOの闇、社会貢献の美名で若者を月給18万で酷使しポイ捨て

2018年09月11日 06時00分更新

文● 黒沢一樹(ダイヤモンド・オンライン

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近年、急増する“ブラックNPO”。仕事に“やりがい”を求めたり、自己肯定感の低い若者たちが食い物にされているのだ。ボランティア精神や社会貢献意識という言葉を隠れみのにした、悪徳NPOの実態に迫った。(取材・文/黒沢一樹、構成/清談社)

“やりがい”の名のもとに
無償・過重労働も

若者をやりがい搾取するブラックNPOはたくさんあります
「月給18万円」「交通費ゼロ」「タダ働き」...ブラックNPOは劣悪な待遇を「あなたが日本を救う」というような美辞麗句でごまかす(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 NPOと聞いて、ボランティアを思い浮かべる人は多いだろう。NPOとは、「Non-Profit Organization」の頭文字を取ったものであり、「非営利組織」という意味だ。

 NPOの存在意義は、社会貢献にあるといっても過言ではない。東日本大震災以降に流行した「ボランティア休暇」や「二枚目の名刺」などの言葉に代表されるように、社会貢献をしたいという人は少なくない。また、社会貢献はするべきだという風潮もある。

 しかし、それを逆手に取った悪徳NPOも存在する。やりがいという名のもとに、無償で重労働を強いる。若者を使い捨て電池のごとく、目減りすれば新しいものへと交換。「インターン」といった言葉で、社会貢献を求める若者を集めて従事させるのだ。

 そもそも、「非営利=お金もうけはダメ」ではない。誤解を恐れずに言えば、非営利とは「仲間内や出資者の中で利益を分配してはいけない」という意味である。売り上げから費用を除いたものが利益であるが、そもそも組織として、利益を出さなければ継続して活動などできない。つまり、NPOがお金をもうけること自体は合法なのだ。

 しかし実際には、「非営利だからタダ働きしろ」と若者に強いるNPOが後を絶たない。

 NPOに自ら進んで就職したがる若者はどんな動機を持っているのか、もう少し詳しく見てみよう。

「やりたいことができるならば、お金なんて関係ない。社会貢献って素晴らしいし、人のためになる仕事っていいですよね」(都内在住の大学3年生)

「地元にいても認めてもらえないし、新しい自分を見つけたい。必要とされる自分でありたい。『やりたいことがある』とか『社会貢献がしたい』といった言葉を使えば、自分の失敗人生の言い訳になるし…」(他県NPOに就職した20代女性)

 今や社会貢献という言葉は、ファッションのような感覚で使われているのかもしれない。全てが許される免罪符的な役割もあるように感じる。

「あなたが日本を救う」
理想論と現実の激しい落差

 現代の若者は目立つことをためらい、何かにつけて空気を敏感に読み取って行動しようとする。自己肯定感が低く、自分への物足りなさと自己承認欲求との折り合い地点をNPOに求めているのだ。

「不登校支援のNPOにインターンで入ったんですが、交通費も出ない状況の中、週4日勤務でした。タダ働きだったし、今思えば最悪ですが、当時はやりがいを感じていました。『あなたの働きが日本を救うのよ』といった女性代表の言葉にだまされていたんでしょうね…」(都内出版社勤務の女性)

 日本に約5万あるNPO法人だが、職員の多くは生活に窮している。もちろん、生活水準を満たすNPOもあり、たとえば世界の子どもの人身売買問題に取り組む「認定NPO法人かものはしプロジェクト」は、職員の平均年収を450万円と公表している。しかし、こうした一部のホワイトNPOが存在する一方で、業界の平均年収は300万円には程遠いといわれている。

「28歳での結婚を機にNPOを辞めました。当時は月額で18万円ほど。『あなたがいなければ、この活動は継続できない』という言葉を信じて仕事をしていたんですが、さすがに生活が厳しくて営業職に転職しました」(民間学童保育NPOに勤務していた男性)

 だが、転職先でうまくいかずにNPOへ出戻る人もいる。

「転職先で、利益や結果ばかりを求める民間会社に嫌気がさしました。NPOで働く方が怒られることが少ないし、自分を求めてくれるので居心地がいいんですよね。もちろん、金銭や労働時間的な問題はありますけど…」(教育系NPOに勤務する男性)

 そもそも、NPOは経営資源が乏しいという事情がある。情熱だけで活動し、日々の活動に追われる中、資金・人材不足に陥ることはよくある話だ。気持ちや言葉で人をつなぎとめることが、結果的に新興宗教に近い空気感を生み出し、やりがい詐取が生まれるキッカケとなるのだ。

ボランティア=無償
という認識を改めるべき

 ボランティアとは、本来「自主性」を意味するものであり、イコール「無償」ではない。各分野の専門家が職業上の知識やスキルを生かして社会貢献する「プロボノ」といった活動も、れっきとしたボランティアである。

 筆者の関わるNPOでは、資格取得者の実務経験を積む場としてボランティアを募集している。例えば、キャリアコンサルタントは、5年間ごとに更新が必要となるのだが、その間に実務経験を積む場があれば、自身の更新ポイントとして加算することができるのだ。結果、それは、資格更新費用の削減となり、個人におけるインセンティブとなるのである。

 何かのジャンルのプロフェッショナルたちが、本業とは別にボランティア活動をしたり、自身のキャリアアップのためにボランティアの場を活用したりするケースと、何も知らない若者が、「あなたが頼りだ」「あなたが日本を救っている」などという美辞麗句に惑わされて無償での貢献を強いられたり、安月給でこき使われるケースは、本質的にまったく別だ。

 社会貢献のためという美しい言い訳に終始するのではなく、NPO経営者側も努力が必要である。そして、それらを求める若者側も多様な視点でNPOを見極めなければならない。価値あるものをお互いが共有できるシステムづくりが重要であって、「ボランティアなんだから無償で当然」と開き直り、一方的な善意の搾取をしないようにすることが大切だ。

 NPOの世界がこれからも発展し、もっと世の中に必要とされるためには、まだまだ改善の余地がある。筆者も含めNPOに関わる人間は、無償の愛や犠牲の精神だけでは組織が成り立たないことを肝に銘じなければならない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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