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ゴレンジャーが元祖!スーパー戦隊が世界で長年愛される理由

2018年09月06日 06時00分更新

文● 岡田光雄(ダイヤモンド・オンライン

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1975年に「秘密戦隊ゴレンジャー」が放送されてから実に43年もの間、日本で愛され続けている東映の特撮ドラマ「スーパー戦隊」シリーズ。その人気は海外にも及び、各国でローカライズ作品も数多く生まれ、世界の人々がこれまで持っていたヒーロー像を根底から覆してきた。何故、スーパー戦隊はロングセラーとして世界に愛されるのか、特撮研究家の氷川竜介氏に聞いた。(清談社 岡田光雄)

ローカライズ版として
米国から世界に普及

「ゴレンジャー」が米国でローカライズされた「パワーレンジャー」
昨年、アメリカで映画化された『パワーレンジャー』。フランスでは、『超電子バイオマン』の吹き替え版が社会現象になるほど人気を呼んだ Photo:Everett Collection/AFLO

 1993年、日本のスーパー戦隊シリーズを英語版にローカライズした『パワーレンジャー』が誕生した。独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)による市場調査では、2012年時点でのパワーレンジャー関連の米市場規模は367億円にも上ると報告されている。北米で最も成功した日本発コンテンツの一つだ。

 パワーレンジャーのローカライズの特色は、ドラマ部分はアメリカ人の俳優を使って撮り直し、特撮や戦闘シーンは日本版のシーンをそのまま使う(一部は撮り足している)という点だ。アメリカらしいドタバタ要素を盛り込み、ドラマ部分はハイスクールものにアレンジされている。

「米映画プロデューサーのハイム・サバンという人物が日本を訪れた際、スーパー戦隊シリーズを視聴して興味を持ち、1985年に東映と交渉して国際放映権(アジア地域を除く)を入手しました。その後、アメリカ仕様にローカライズしてヒットさせ、『パワーレンジャー』として世界に浸透させていったのです」(氷川竜介氏、以下同)

 昨年、アメリカではパワーレンジャーが映画化され、日本や中国でも上映されている。興行成績はイマイチだった印象だが、いまだにアメリカのテレビでは、日本版のシリーズをもとにした新作が作られ続けているのだ。

フランス、韓国、タイや
ブラジルでも流行

 ローカライズの事例は他にもある。昨年、韓国オリジナルの特撮ヒーロー『パワーレンジャーダイノフォースブレイブ』が誕生。タイにも『スポーツレンジャー』といったご当地ヒーローが存在する。

 ローカライズされていない、日本版のスーパー戦隊が海外で人気になった事例もある。

 トリスタン・ブルネ著『水曜日のアニメが待ち遠しい:フランス人から見た日本サブカルチャーの魅力を解き明かす』(誠文堂新光社)によれば、1985年にはフランスで『超電子バイオマン』(日本では1984年放送)が放送された。日本の元の映像のままフランス語吹き替え版として放送され、社会現象となるほどの人気を誇ったという。1988年にはブラジルで『電撃戦隊チェンジマン』なども流行した。

 商業的にスーパー戦隊が海外で成功を収めることができたかどうかについては、賛否両論がある。

 これまで世界で積極的にビジネスを展開してきたのは、日本純正のスーパー戦隊よりも、米国でローカライズしたパワーレンジャーの方であり、その知的財産権は米サバン・プロパティーズが有してきた(2019年4月以降は、米玩具大手のハズブロに移行)。

 東映、バンダイもパワーレンジャーでは一定の利益を享受してきたが、俳優や音楽などの権利はサバン側が持っているため、それほどの恩恵を受けていない。

 だが、スーパー戦隊という日本の新しいヒーロー像を世界に普及させられたという、文化面での成功は大きい。そのヒーロー像の特色の一つに“チームプレー” がある。

「スーパー戦隊が登場するより前だと、例えばアメリカではスーパーマンやスパイダーマン、日本ではウルトラマンや仮面ライダーなど、ヒーローといえば孤高の存在でした。しかし、スーパー戦隊はチーム一丸となって戦います。そういった団体スポーツ的なヒーロー像は新鮮だったのでしょう」

 西洋ではキリスト教など一神教の価値観が多数派なのに対し、日本では八百万の神のような多神教の宗教観があるからこそ、主人公を1人に限定しなかったのかもしれない。

日本人らしいこだわりが
世界でもウケた!

 また、作中に登場するロボット(スーパー戦隊ロボ)も、シリーズを構成するうえで欠かすことのできない要素だ。

「1回の放送の中で、1戦目で等身大サイズのヒーローが戦い、2戦目でロボットに乗り込んで戦うというのは、日本人ならではの発想です。かつて日本で東映版『スパイダーマン』(1978年)を放送した時期に、本家アメリカ版とは違い、巨大ロボットを操縦して戦う設定を付け加えました。それを知ったスパイダーマンの原作者のスタン・リー(元マーベル・コミック編集委員)は、設定のアレンジに怒るどころか、いたく感動したと聞きます。そうした流れで、戦隊シリーズにも巨大ロボットが出るようになりました」

 フォーカスすべきはヒーローだけではない。ヒーローと敵対する悪役(怪人)にも、日本人らしいこだわりが垣間見える。

「毎回、違う怪人が出てくるのも日本のヒーロー作品の特徴だと思います。そのバリエーションで、シリーズの“歴史の厚み”が増すんです。キャラクターデザインもユニークで、歌舞伎の見立てのような味わいがあります。例えば、食卓の怪人が手にフォークを握っていたり、机や椅子をモチーフにした怪人など生活用品もネタになるのです」

 さらに氷川氏によれば、スーパー戦隊が最も優れている点は、作品のフォーマット(ルール)が確立されていることだという。フォーマットは、戦隊への変身やロボの登場といったお決まりのシーンに限った話ではなく、シナリオ全体の構成を作るうえでも不可欠なものだ。

民族の壁を越えた
「鉄板フォーマット」

「フォーマットの例として、まず第1話で基本設定を説明します。第2話では主役たちの周辺の情報(家庭や職場など)を詳細化し、その後はフォーマットで回します。ただしワンパターンの予定調和だけだと子どもは飽きてしまうため、フォーマットを崩しそうな絶妙なラインの刺激を加えてくるんです」

 このフォーマットさえ守っていれば、たとえ登場人物を日本人からアメリカ人に差し替え、ハイスクール物にローカライズされたとしても、スーパー戦隊像の根本が崩れることはないという寸法だ。

「東映がこのフォーマットを作り上げるには、長い年月をかけてきました。時代劇、スパイダーマンなどのアメコミ、戦隊が登場するより以前に放送されていた特撮、アニメなど、良いところを分解して研究し、その一つひとつをリスペクトしながら吸収してきたんです。日本人ならではのきめ細かさですね」

 そして今年、そのフォーマットが新たなステージへと登った。2月から放送中の『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(テレビ朝日)では、初のダブル戦隊方式を採用している。

「今回、2隊分のシナリオを入れたことで、シリーズの可能性が広がりましたね。これまで東映が培ってきたフォーマット力が、“守る”だけじゃなく“攻め”の武器にもなるということを証明した形だと思います」

 進化を続けるスーパー戦隊が、今後も世界へ羽ばたくところを見たいものだ。

氷川竜介/アニメ・特撮研究家。日本SF作家クラブ会員。文化庁メディア芸術祭審査委員、毎日映画コンクール審査委員などを歴任。テレビ、ラジオ番組にレギュラー出演多数の他、東京国際映画祭の作品選定や海外講演など活動は多岐にわたる。今年4月から明治大学大学院特任教授として特撮の授業をスタート。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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