Globalfoundriesが7nmプロセスの開発に失敗
2017年末にAMDは7nmの開発をTSMCに鞍替え
以上の前提を元にGlobalfoundriesのリリースに戻ると、今回の決断は今年CEOに就任したTom Caulfield博士が打ち立てた、新しい戦略方針に基づくものだとしている。
同社はリリースの中で「半導体に対する需要は決して高くなっておらず、我々の顧客はむしろ将来のテクノロジーを早く可能にすることを求めている」としており、「半導体のノード(28nm/20nm/14nm/12nm/etc...)を従来よりより長く利用している」として、7nmの需要が決して高くないと説明した。
そのうえで、7nmプロセスの開発を無期限に延期し、7nmの開発に向けられていた投資を「より顧客に対して付加価値の高いポートフォリオを充実させる」ことに充てるとしている。
また7nmプロセスの開発に携わっていたエンジニアを、14/12nmプロセスのポートフォリオの充実のための開発に配置転換するとしている。なおFD-SOIプロセスについては引き続き開発と提供を続けていくとしており、大きく言えば7nmやその先を放棄したということになる。
次いでAMDの側のリリースについて。AMDに限らずそうであるが、最先端プロセスを利用することは、金額的に非常に大きな投資となることもあり、7nmへの移行は大きな賭けであるとしたうえで、Zen 2コア、それと次世代のNavi GPUはTSMCで製造すると明らかにした。
AMDはすでにTSMCの7nmプロセスに向けて複数の製品のテープアウト(設計の最終段階)を完了しており、製造は順調に推移、初期の評価シリコンは非常に良い結果を出しているとする。
そして7nmに関しては、TSMCがAMDのファンダリーパートナーとなると明言したうえで、12/14nmに関しては引き続きGlobalfoundriesがファウンダリーパートナーであり、Ryzen/Radeon/EPYCプロセッサーを製造するニューヨークのFab 8について追加の投資も予定していると補足している。
では実際のところどうなのかといえば、単純にGlobalfoundriesが7nmプロセスの開発に失敗した、とみなすのが順当だろう。連載470回の冒頭でも説明したが、今年7月のAMDの投資家向けカンファレンスコールの中で、AMDのCEOであるLisa Su博士が「現在サンプリング中の7nm EPYCはTSMCで製造されている」と述べている。
以前ならチップの製造期間(ウェハーをFabに納入し、それがチップとなって出てくるまでの時間)は1四半期、つまり3ヵ月程度だったのが、最近はこれが2四半期近く(5~6ヵ月)を要するようになっている。特に7nmの場合、トランジスタとその真上の配線層(M0/M1)はマルチパターニングが必須であり、おそろしく時間がかかる。したがって7月にサンプリング中ということは、製造開始は今年1月か、どんなに遅くても2月の頭。下手をすると昨年末あたりということが考えられる。
ここから逆算すると、7nmの製造をGlobalfoundriesではなくTSMCで行なうという決断は2016年末か、2017年の初頭に行なわれていたことになる。連載338回で触れたが、BroadcomがCortex-A72コアの物理実装をPOP IPなどを使わずに自身で行なった結果、4回作り直すのにおよそ8ヵ月かかっている。
この時は最適化1回あたり2ヵ月ほど要しているから4回で8か月というわけだが、7nmではさらに作り直しに時間がかかる。おおむね12ヵ月程度はかかるだろう、というのが業界での一般的な認識である。つまり製造開始1年前だから、2016年末~2017年頭という計算だ。ということは、この時点ですでにGlobalfoundriesの7nmは、現状量産に適さないという判断が下されていたということになる。
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