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いま聴きたいオーディオ! 最新ポータブル&ハイエンド事情を知る 第14回

選ぶ楽しみ、そして使いこなす楽しみ、双子のDITAを体験 (4/4)

2018年09月03日 17時00分更新

文● 小林 久 編集●ASCII

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再現か表現か、どちらも真実ではある

 では、FidelityとFealtyの違いはどうか。

 同一傾向ではあるが、もちろんしっかりとした差がある。メーカーが言うようなモニター寄り、リスニング寄りという表現が適切かどうかは分からないのだが、FidelityはDreamほどではないがワイドレンジで癖のないサウンド、Fealtyに関してはよりブライトでダイナミックに曲のニュアンスを伝えてくれる印象があった。空間や残響の表現などではFidelityに分がある感じがするが、ビートなどに躍動感があり、曲の持ち味をより楽しく引き出してくれるのはFealtyだ。

FidelityとFealty。デザインは一緒だが、Awesmeプラグのネジのカラーは異なる

 冒頭でDITAは真面目なメーカーだと書いたが、忠実と言う意味のFidelityも、誠実と言う意味のFealtyも、どちらも言葉としては正直系の意味合いを持つ。ただ「忠実に」の後によく来る単語は“再現”であり、近い意味合いで「誠実に」を使うならその次に来るのは“表現”だろう。この再現と表現の違いが2モデルの個性の差だと思う。

 写真と絵画の違いと言ってもいいかもしれないが、難しいのは、描き手の手心が少し加わった絵画のほうが、真実をそのまま写した写真よりも真実味を感じられることがあるという点だ。音楽再生でも多少低域を盛った方が、躍動感が出たりする。

 言い方を変えると、再生の際にベクトルが録音そのものに向いているのか、聞き手に向いているのかという方向感の違いともいえる。入力した信号と出力した音の特性をそろえてフラットに再生するほうが真実に近づけるのか、低域や高域の出方を調整してニュアンスが伝わりやすくしたほうがいいのか。

 DITAはどちらが正解かを考えた。そして結論が出なかった(どちらも正解だと思った)。結果ユーザーの耳に委ねた。冒頭で、DITAは真面目なブランドだと書いたが、その結果、あまり数が出そうもないハイエンド機を2機種同時に出してしまうところも馬鹿正直な態度に思える。

惜しむらくはその形状、密閉感をどう得るかは工夫したい

 最後に音質とは異なる面で残念に感じたのは、イヤフォンの形状が耳に合いにくかったことだ。個人差もあるところだとは思うが、筆者の場合、日本人としてはよくある耳の形というか、海外の大きすぎる製品を除き、たいていのイヤフォンではMサイズのイヤピースでピッタリと収まる。しかし、FidelityとFealtyに関しては、耳に収めることが難しく、そのままでは密閉感のない「低域が抜けた再生音」になってしまった。

 主な理由は45度ほど角度が付いたノズルの形状だ。割合長めでもあり、耳に対して垂直に入れようと思うと、イヤフォンをかなり傾けないといけない。シュア掛けのようなスタイルで装着するのが難しかった。ここはDreamよりも本体が大きくなったことが関係しているようだ。

 結果としてイヤーピースの選択や装着方法には苦労することにはなりそうだ。

 ちなみに付属するEタイプのチップは軸が硬めなぶん、音に芯があってパキっとした聞こえ方になる。音質面では特にFidelityとのマッチ感がいい。たまたま手元にあったコンプライのUltraSoftのフォームチップに変えたところ、密閉感は改善されたのだが、軸が柔らかいぶん、音がなじみすぎて、明瞭感が幾分か下がる感じがあった。Fealtyでは悪くない気がしたが、Fidelityとはちょっとあわない気がした。

 FidelityやFealtyを選ぶ人は、ドライバーの真価を発揮できる、自分にあったイヤーチップを探す旅が始まる可能性が高い点は覚悟しておきたい。最近は様々なメーカーがイヤーチップを販売していて、それぞれに特徴があるので、いろいろ試せばベストなマッチングに出会えるかもしれないし、新たな発見があるかもしれない。

 そんな使いこなしもまた、楽しみと言えば楽しみだろう。

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