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トルコリラ「底なし」下落の恐怖、大統領が通貨防衛全否定

2018年08月20日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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エルドアン大統領
エルドアン大統領 写真:AP/アフロ

 トルコリラ下落に歯止めがかかりそうにない。それは通貨防衛策が講じられる可能性が極めて低いからだ。

 トランプ米大統領が、トルコに対してアルミニウムと鉄鋼の関税率を2倍に引き上げると発表した10日、トルコリラは一時、前日比で3割弱値を下げ、1ドル=7リラを割り込んだ。

 2017年のトルコの経常収支赤字471億ドル、18年3月末の短期対外債務残高1222億ドルに対して、「6月末の流動性のある外貨準備高は740億ドル」(西濱徹・第一生命経済研究所首席研究員)と心もとない水準にある。

 通貨防衛のためにはまず利上げをするのが定石だ。しかし、エルドアン・トルコ大統領は利上げを否定し、それどころかトルコ中央銀行に利上げをしないよう圧力をかけているとみられる。現に通貨安基調が続く中、7月にトルコ中銀は利上げを見送った。中銀の独立性が担保されていないこともリラ売りの要因だ。

 トランプ政権は、トルコが16年のクーデター未遂事件に関連して自宅軟禁状態にしているブランソン牧師の解放を求めてきた。エルドアン大統領が応じなかったことが関税率引き上げの直接の原因となったのだが、エルドアン大統領は米国に対して今後も妥協するつもりはない。

下落止まらずインフレ加速

 通貨安が続けば、輸入品の価格上昇を通じて現在15%台の物価上昇率がさらに高くなるのは確実である。また、外貨建て債務の負担が重くなり、外貨準備高の乏しさからして資金繰りに窮する企業も出てくるだろう。IMF(国際通貨基金)に支援を求めることも通常なら選択肢だ。しかし、これもエルドアン大統領は否定する。

 通貨防衛に必要な手段をことごとく否定しているだけに、目先で大幅下落の揺り戻しはあるだろうが、下落基調に歯止めはかからず、リラの底値は見えてこない。

 トルコの苦境は続きそうだが、今回のトルコリラ急落が他の通貨に伝播していくだろうか。

 10日の市場ではリラ安によるトルコ経済混乱懸念から、ユーロが売られた。これは、スペイン、イタリア、フランスがトルコ向けの多額の融資を抱えているためだ。トルコへの融資額が多い欧州銀行株も売られた。ただ、当該国や当該銀行から見て屋台骨を揺るがす規模ではないため、一時的な動きにとどまる公算が大きい。

 FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げは19年にかけて継続される。超低金利、量的緩和時にリスクを取って新興国に流れた資金は逆流するだろう。今回もトルコリラ急落に歩調を合わせるように、南アフリカランドやインドルピーなどが売られた。通貨防衛をする意思のないトルコリラほど下落しないだろうが、今後も資金流出圧力にさらされるだろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田孝洋)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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