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乗車券だけで乗れる!特急車両とその区間は?【私鉄編】

2018年08月13日 06時00分更新

文● 渡部史絵(ダイヤモンド・オンライン

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東武鉄道鬼怒川線の特急「リバティきぬ」
東武鉄道鬼怒川線を走行中の特急「リバティ」 Photo by Shie Watanabe

読者の皆さんは、乗車券だけで利用できる特急車両が存在することや、特急が途中の区間から各駅停車になったり、また、快速や普通列車として使用されていたりするのをご存じだろうか。女性で唯一の鉄道ジャーナリスト・渡部史絵氏が今回は私鉄にスポットを当て、知ったら一度は利用したくなる特急車両事情を解説する。

私鉄の特急は
2つのタイプがある

 私鉄の特急といえば、大別して2つのタイプが存在する。

 まず、をご覧いただきたい。

 1つは、普通乗車券だけで利用できるもの。これは通常の通勤車か、せいぜいシートが進行方向に向いた少しだけ気の利いた車両を使うもの。停車駅が少なく、座席を指定せずに立席でも当然利用できるもので、速達性重視の特急である。

 もう1つは、リクライニングシートや洗面施設、車内販売など豪華装備の専用車で運行されるもので、速達性に快適性を加味した特急である。後者の場合、JRで設定されている自由席はほとんどない。全員着席列車の場合が多い。そもそも特急列車における自由席や立席とは、高度経済成長期にビジネス客の取り込みを考慮して当時の国鉄が設定したものだ。

 本来特急は、「全車指定席」という特別な急行であった。そのため「自由席」という概念は、私鉄の特急の後者のタイプにはほとんどなく、座席指定・全員着席が基本である。

 それでは、前者の乗車券だけで乗ることができる特急にはどのようなものがあるのだろうか?

大手私鉄の中で
筆者がオススメする鉄道は?

 大手私鉄に絞ると、東京メトロを除く15社の中では、京王電鉄・京成電鉄・京浜急行電鉄・東京急行電鉄・相模鉄道・名古屋鉄道・阪神電気鉄道・阪急電鉄・京阪電気鉄道・南海電気鉄道・西日本鉄道の11社がある。この中で特にオススメなのは阪急電鉄の電車だ。

 その理由は、関西の中でも俊足なこと、そして特急列車に限ったことではないが、阪急の電車は、清掃と整備が抜群に良くて非常に綺麗なことにある。車両は、鉄道会社がお客様に提供する非常に大きな商品だ。国内各所でも立派で綺麗な車両は多いが、阪急の場合、普通列車から特急列車まで全ての車両が美しく輝いている。他の鉄道社局もぜひ見習ってほしい。

 さて、そんな阪急の特急列車で、土・日・祝日限定で京都本線の梅田~河原町間に、快速特急「京とれいん」(*)という列車が運転されている(特急券不要)。この「京とれいん」に使用される車両は、阪急唯一の2扉車で製造後40年ほど経つベテラン車両の6300系である。

 6300系は、嵐山線(桂~嵐山間)の普通列車でも乗車することができるが、「京とれいん」専用の6354編成は、2011年に徹底した更新工事と、特別列車らしい内装を施し、長い車齢を感じさせないほどの特別な車両に仕上がっている。車体内外随所に古都京都をイメージさせる装飾が施され、気品あるマルーンの電車が、特別な京の旅へと誘うに違いない。まさに、速達性とプラスアルファを兼ね備えた特急車両といえる。機会があればぜひご利用いただきたい。

 速達性・快適性を備えた特急は、大手私鉄では東武鉄道・西武鉄道・小田急電鉄・京成電鉄・名古屋鉄道・南海電気鉄道・近畿日本鉄道の7社がある。これら各社の特急は、先述の通り乗車券のほかに特急券等の特別料金が必要(東武鉄道、京成電鉄[列車の種類によって異なる]、名古屋鉄道、南海電気鉄道など、列車により一部の区間は特急券不要)だが、その代わりに車両設備などが他の車両に比べて群を抜いている。また各社のフラッグシップなので、愛称や名称が付くことも多い。

例えば、東武鉄道では最新のリバティやスペーシア、西武鉄道はニューレッドアロー、小田急電鉄のロマンスカー、京成電鉄のスカイライナー、名古屋鉄道ではミュースカイ、南海電気鉄道ではラピート、近畿日本鉄道はアーバンライナーnextなど多数ある。

*なお、「京とれいん」は車両の名前であり種別ではない。快速特急として運転されているため、表に名前は載せていない。

豪華装備の特急車両の中で
乗車券だけで乗れる区間は?

 それでは、これらの車両に乗車券だけで乗れるのだろうか?

 一例として、最新の車両リバティを有する東武鉄道が挙げられる。リバティに使われる500系特急は、2017年に浅草・日光鬼怒川方面の特急車両としてデビューしたブランニューだ。そんなブランニューの500系特急、実は下今市~会津田島間、下今市~東武日光間などでは普通乗車券だけで乗れる。

 同区間は、沿線人口が著しく少ない上、各駅停車の需要があまり見込めない。そのため、各駅停車の列車間隔が2時間以上空く時間帯もあり、各駅利用者の救済処置のため普通乗車券だけでの乗車が可能だ。ただし、座席の指定は行わないので、空いている席に座るかデッキ等に立って乗車することになる。東武鉄道の場合、アーバンパークライナーなどの末端区間でも、普通乗車券だけでの乗車が可能だ。

とうきょうスカイツリー~浅草間が全ての上りの特急に
普通乗車券だけで乗れるのはなぜ?

 さらに、とうきょうスカイツリー~浅草間の上りは全ての特急列車に普通乗車券だけで乗ることが可能だ。たった一駅間だけではあるが、リバティのみならず、スペーシアや200系・250系などにも乗れるのは、鉄道好きならずとも嬉しいものだ。

 なぜこのようなサービスを行っているのかというと、上りの特急は北千住やとうきょうスカイツリーで下車する乗客が多いため、終点の浅草まで空席で走るぐらいなら一駅だけでも乗車してもらい、特急の乗り心地を体感してもらうためだと、東武鉄道の関係者から聞いたことがある。つまり、特急のお試し区間ともいえ、今後日光・鬼怒川方面への利用客促進にも繋がることを期待しているようだ。

 ところで、ここまで2つのタイプに各社の特急を分けてみたが、実は前者でもあり後者でもある特急がある。つまり、普通乗車券だけで利用できる特急列車ではあるが、追加の料金を支払えば指定席車に乗れるというものだ。同じ列車でありながら、一般車両と特別車両を併結している混結列車である。

 名古屋鉄道では名称がないが、特別車両の指定席券を「ミューチケット」(1乗車360円)として発売しており、南海では特急サザンなどが混結特急列車となっている。

 そして最近のニュースでご存じかもしれないが、京阪特急の一部では、プレミアムカー(400円か500円:乗車区間によって料金が異なる)という特別車を連結して運行している。首都圏でいうと、JRの東海道線や常磐線などにあるグリーン車付きの普通列車に近いポジションだ。しかし、上記特別車両のグレードは首都圏のグリーン車よりも高いのでオススメだ。

伊豆箱根鉄道・駿豆線の普通列車は
西武鉄道の車両も使われている

 ここまで大手私鉄について述べてきたが、最後に中小私鉄の例を挙げておこう。

 三島~修善寺間を走る伊豆箱根鉄道・駿豆線は、全線19.8kmの単線鉄道である。東海道新幹線を利用して来た湯治客を三島駅から奥伊豆の伊豆長岡や修善寺まで運ぶ観光要素もあるが、沿線人口もソコソコあり、高校なども多く、通勤通学客が多い。普通列車は自社発注、もしくは西武鉄道の譲渡車で賄われており、いずれも1両20m車の3両編成の立派な車両ばかりである。

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 首都圏からは先述の通り東海道新幹線で三島まで来て、当線に乗り換えて修善寺方面に行くこともできるが、東京駅から乗り換えなしで特急「踊り子」号を利用することもできる。

 乗り入れて来る「踊り子」号は、5両の附属編成ではあるが、国鉄時代の風格が漂う185系である。当然、駿豆線内も特急列車として運転されるので、三島田町・大場・伊豆長岡・大仁・修善寺と停車駅が少ない。そして一番の売りは、三島~修善寺間は特急券が必要ないことだ。

 なぜ特急券が必要ないかというと、ここは以前から東京と修善寺を結ぶ急行列車が走っており、その時代から急行券が不要で、後に特急に格上げされてもその制度が残り、現在に至っているわけだ。誰でも乗車可能とはいえ、そこはさすがに特急列車だけあって、「通学客の利用は遠慮してほしい」旨の告知はされている。

 このほか、富士急行線の河口湖~富士山間なども無料で特急に乗れる区間となっている。また、有料特急の走る富山地方鉄道は、車両を特急車両というカテゴリーではなく、一般車両や観光用車両と分類しており、運用によっては各駅停車でも使用されるため、本記事では除外した。

 このように大手中小問わずに、私鉄特急は多種多彩に展開されており、普通乗車券だけで利用できる特急車両も非常に多い。東武鉄道や伊豆箱根鉄道、富士急行線の無料区間や特急料金の設定のない私鉄などは表にまとめているので、旅の参考にしていただければ幸いである。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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