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助成金詐欺で社長逮捕のスパコン、連続世界一にも疑惑の目

2018年07月31日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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ヤフーが運用するペジーが開発に関わったスパコン
ヤフーが運用するペジーが開発に関わったスパコン。企業が独自にスパコンを持つのはまれだ 写真提供:ヤフー

 スーパーコンピューターの開発をめぐり、助成金6億5300万円をだまし取ったとして社長が逮捕、起訴されたペジーコンピューティングのスパコンが6月、昨年に続きスパコン省エネランキング「Green500」で世界一となった。

 ペジーの技術が社長逮捕後も世界水準にあることを証明したわけだが、今後も技術力を保てるかどうかは不透明だ。国の支援に頼れなくなる中で、研究開発費を確保するのは容易ではないからだ。

 世界レベルのスパコンを短期間で開発したペジーの齊藤元章前社長は「天才」などと持ち上げられていたが、逮捕後は一転、公金の詐取だけでなく、同社の技術の信ぴょう性すら疑われている。

 一部報道などが疑義を呈しているのは、サーバーを特殊な液に浸して冷やす液浸冷却の省エネ性能で、ペジーの“強み”そのもの。実はGreen500は冷却用の消費電力量を評価対象外にしている。そのため、ペジーのスパコンを、現在、非公開になっている冷却を含む消費電力量で評価すると、省エネ性能に劣ることが明らかになるのではと疑われているのだ。

 ペジー関連会社で冷却システムを開発するエクサスケーラーは本誌の取材に対し、この疑惑をきっぱりと否定した。

 白いものまで黒と疑われても無理からぬ事情はあるが、ペジーの技術の価値は冷静に評価するべきだろう。

 ペジー関連のスパコンを自社で運用するヤフーのデータ部門技術トップの角田直行氏は「一般的な空冷式のスパコンに比べ、消費電力量を約3割減らせている」と語り、省エネ性能を評価した。

 ヤフーはスパコンで人工知能の処理を行い、自社コンテンツ「Yahoo!知恵袋」のウェブページの中で、優れた情報を含むものをユーザーの目に触れやすくするといったサービスの改善を行っている。角田氏は「トラブル時の対応を含め、エクサスケーラーの仕事には満足している」として、立て直しを期待する。

研究開発費は増資で調達か

 ペジーはグループとして今後もスパコンの研究開発を続ける意向だ。エクサスケーラーの鳥居淳CTOは、「スパコンの開発は数十人の技術陣が担ってきた。齊藤氏が抜けても十分な開発体制がある」と自信を見せる。だが、資金調達については守秘義務を理由にコメントしなかった。

 同社は文科省所管の研究機関から受けた融資52億円を返還。ペジーも、詐欺罪に問われた経産省所管の研究機関の助成金の関連で9億4000万円を返納した。

 ペジーは増資による資金調達もしてきたが、以前のように資金を集めるのは困難だ。米中との技術開発競争が激化する中、ペジーのつまずきが日本のスパコンの出遅れにつながらないようにするべきだろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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