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仕事で使える戦略思考最強の武器「ゲーム理論」は何が凄いのか

2018年07月30日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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『週刊ダイヤモンド』8月4日号の第一特集は「仕事で使える!ゲーム理論入門」です。ゲーム理論は、数学から生まれた経済学分野です。やや取っつきにくいかしれませんが、他にない強みがあります。戦略思考の道具としの応用範囲の広さです。先進企業はすでにこれに目を付け、活用し始めました。大注目の理論、思考法であり、仕事で使える心強い武器なのです。

米中貿易戦争からW杯サッカーまで
戦略思考の技術「ゲーム理論」の力

サッカー日本代表のポーランド戦でのパス回しという選択を「ゲーム理論」で判断すると……?
サッカー日本代表のポーランド戦でのパス回しという選択を「ゲーム理論」で判断すると……? Photo:REUTERS/AFLO

 トランプ米大統領vs習近平中国国家主席、サッカーW杯ロシア大会、米グーグル……ジャンルも事の大小も全く異なるこれらを分析するツールとして、スパッと横串を刺せる“最強”の理論があるのをご存じだろうか。その名こそは「ゲーム理論」という武器に他ならない。

 これは遊戯としてのゲームを直接扱うのではなく複数の主体をプレーヤーとし、それらの意思決定の在り方をゲームに見立てて研究したミクロ経済学の一分野。といっても主役を張ることが多く、ノーベル経済学賞受賞の常連である。

ジョン・ナッシュ
ジョン・ナッシュ Photo:REUTERS/AFLO

 そうした見立てゲームの中で、参加プレーヤーが互いに最適な戦略を取り合う状況を探し当てるのがゲーム理論だ。この状況を「ナッシュ均衡」と呼ぶが、これは1994年にノーベル経済学賞を受賞した、最大の功労者ジョン・ナッシュの名にちなんでいる。

 ゲーム理論は駆け引きが生じるあらゆる分野に通じる。その応用範囲の広さがこの武器の強みだ。足早に見ていこう。

 マーケットを揺さぶる米中の貿易戦争──。激しいプレーヤー同士のせめぎ合い、丁々発止の駆け引きは、まさにゲーム理論の得意とするところだ。

「囚人のジレンマ」というキーワードを耳にしたことがあるだろう。この代表的ゲームは次のようなエッセンスを教える。

「それぞれのプレーヤーが最適な行動を取っても、全体として最適にはならない」「プレーヤーにとっては、相手に協力するよりも、出し抜く(協力しない)方に魅力がある」

習近平とトランプ
Photo:REUTERS/AFLO

 米中の「関税引き上げ合戦」は、まさにこの構図といえるだろう。関税引き上げは明らかに景気の足を引っ張る。全体として見れば、関税を据え置くのが望ましいに決まっている。

 相手が据え置くときに、米国だけが引き上げると、大きなメリットをもたらす。自国だけなら“おいしい”のである。しかし、そうなると相手も黙ってはいない。中国も引き上げないとデメリットが大き過ぎる。かくして関税引き上げ競争に突入する。

「自らの支持層にアピールしたい」と強硬な保護主義に走るトランプ大統領、「弱腰との批判も出かねず、報復に走らざるを得ない」という習主席。こうした構図は、ゲーム理論の「チキンゲーム」「コミットメント」などの概念ですっきりと整理整頓が可能だ。

先進企業が着目
グーグルを支える価格決定の技法

 そんなゲーム理論は、経済学の枠を超え、現実への応用により目を向ける。政治・外交分野では、例えば核などの軍拡や軍縮をめぐる問題だ。ゲーム理論で政治・外交問題を研究する早稲田大学の栗崎周平准教授は、「平和問題は数値分析に基づき考えるべきで、もはや不可欠なツールだ」と説く。軍事力の在り方などをめぐっては、他国との安全保障などとの関係性を考えながら戦略を構築する必要があるからだ。

 ゲーム理論はむろん、ビジネスマン個人にも強い味方となる。東京大学大学院の柳川範之教授は、ゲーム理論を学ぶ大きなメリットとして、「自らの生き方やキャリアを戦略的に決めるツールとして知っておきたい」と言う。さらに「企業戦略でライバルと戦う際、基本的な思考の型を知っていないと戦略を誤りかねない」とし、これからの時代に勝ち残るためには不可欠なツールとの見方を示す。

 あまり知られていないが、実はあのグーグルにおいては、ゲーム理論の一分野である「オークション」理論の知見が収益の大黒柱となっている。

 この広告モデルの設計者は、ミクロ経済学を専門に米スタンフォード大学や英オックスフォード大学などで教壇に立った後、グーグルのチーフエコノミストとなったハル・ヴァリアン氏。まさに学問的な知見が、世界的企業の最前線のビジネスで生かされているのだ。

 ゲーム理論の応用範囲は硬派なテーマにとどまらない。激闘が続いたサッカーW杯ロシア大会中、物議を醸した日本代表のポーランド戦終盤のパス回しについても、ゲーム理論では数式を使って最適な戦略を導き出せる。結論から言えば、日本が1次リーグ突破のために取った“苦肉の策”である10分以上にわたるパス回しは、論理的に考えて正解だったのだ。

 ここでは数式を省くが、日本がポーランド戦の終盤で攻撃した方がよいのは「得点する確率が失点する確率の2倍以上となる場合」のみと導き出され、突破可能性を高める戦略だったことが明らかとなった。

 政治経済から仕事、暮らしまで幅広く役立つ、ゲーム理論の基本的な思考パターンを学んでいこう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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