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乗車券だけで乗れる!特急車両とその区間は?【JR編】

2018年07月27日 06時00分更新

文● 渡部史絵(ダイヤモンド・オンライン

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わかしお号
外房線走行中の特急「わかしお」 Photo by Shie Watanabe

読者の皆さんは、乗車券だけで利用できる特急車両が存在することや、特急が途中の区間から各駅停車になったり、また、快速や普通列車として使用されていたりするのをご存じだろうか。女性で唯一の鉄道ジャーナリスト・渡部史絵氏が今回はJRにスポットをあて、知ったら一度は利用したくなる特急車両事情を解説する。

JRでは急行が存在しないのに
なぜ今でも生きているのか

 日頃出張や家族旅行などのように、鉄道で遠距離移動する時、新幹線や特急列車を利用することは多いだろう。通常、JRの新幹線や特急列車を利用するには乗車券(切符ともいう、以下乗車券)の他に、特急券などが必要となるが、こうした車両はクロスシートとリクライニング機能を持ち、日頃通勤などで使う車両とは違う、グレードの高いものである。

 出発地のA駅から目的地のZ駅までの物理的移動だけを考えれば、普通列車でも特急列車でも目的地に到達することができるが、特急列車を利用すれば、到達時間の短縮と客室設備の充実を手に入れられるわけだ。その対価が、特急料金を払うという行為にあたる。

 ちなみに、特急の格下にあたる急行という列車も制度上はあるが、現在JRで定期的に走っている急行列車は残念ながらない。

 ところが鉄道の現場では、急行列車が今でも生きている。というのも、特急とは特別急行の略であり、急行の中に含まれるものであるからだ。

 東日本旅客鉄道(JR東日本)の乗車券類のルール本である旅客営業規則によると、「特急料金」などの見出しは一切存在しない。見出しで存在するのは急行料金など「急行」という表記だけである。そしてこの「急行」の条文の中に「特急」という表記がなされている。これはまさに「急行」の中に「特急」が含まれるということを明文化しているものだ。

 現に旅客営業規則第三条(4)には「急行列車とは、特別急行列車及び普通急行列車をいう」と記されている。運転面でも、複々線の専ら特急などの通過列車だけに使われる線路のことを「急行線」と呼び、ここでも「特急」という表現はなされない。先述のように、「特急」はあくまでも急行の一部であり、英語表現のLimited Expressの通り、速さと装備を特別に与えられた急行列車なのだ。

観光列車として運転される
最も遅い特急列車は?

 だが、特急列車のウリの1つである速さについては、必ずしも速いとは限らないものがある。確かに東北新幹線の時速320kmを筆頭に、特急列車は速い。しかし、観光列車というエッセンスを加えられてしまうと、逆に「遅い」特急列車が出てくるのはおもしろい。

 一例として、昨年4月に誕生した四国(徳島の大歩危~香川の多度津)を走る観光列車「四国まんなか千年ものがたり」(*)の「しあわせの郷紀行」号は、僅か65.5kmを何と2時間55分もかけて走っている。途中で景色を楽しむための運転停車(駅で停車するが、乗降の扱いはしない)があるとはいえ、特急料金を徴収する列車の中では一、二を争う遅さである。

 ちなみに出発地を都内として例を挙げるなら、始発の池袋駅から「特急スーパービュー踊り子」号に乗り、終点の伊豆急下田までが、大体2時間55分の所要時間である。しかしながら、走行距離は178.7kmと四国の2.7倍近くの距離を駆ける。

 こうしてみると、速いことが特急列車の要件ではなく、車内設備の充実が第一なのかもしれない。現在、国内では多くの観光列車が走っているが、ほとんどが決して速くはない。けれども、こと内装に関してはゴージャスであり、非日常的な空間が提供されている。

 もっとも、通常の特急列車においても、現在ではかなりモダンな内装設備となり、寛ぎのひとときを過ごせるような車両がとても多くなった。

 私たちは「決して安くない特急料金を支払うわけだから当然」と考えがちだが、これら特急列車で使用される車両に、乗車券だけで乗車できるとしたら、非常にトクした気分になるのではないだろうか。

*乗車券のほかに特急券とグリーン券が必要の列車。上りと下りで特急の呼び名が異なり、上りは「しあわせの郷紀行」、下りは「そらの郷紀行」という。所要時間は、上りが2時間55分、下りが2時間30分。

乗車券だけで特急車両に乗れる
3つの理由

 実は、普通列車のように乗車券だけで、この寛ぎのひとときを体験できるチャンスが意外にも多く存在する。その理由は3つに大別でき、各路線の特徴を表しているといえよう。

 1つ目は、運転区間の特質によるものだ。北海道の石勝線の新夕張~新得間(定期列車は廃止となった楓までの区間列車を除く)は、路線開業以来、特急列車以外設定されなかった。これは、石勝線が道央と道東を結ぶバイパス線として建設されたからであり、普通列車の運転は考慮していなかった。そのため、この区間は救済処置を含めて特急自由席に乗車券だけでの乗車が認められた。

 奥羽本線は東北新幹線の新青森へのアクセス、宮崎空港線(宮崎~宮崎空港)[**]は航空機利用者へのアクセスをそれぞれ向上させるためであり、両線とも本数の少ない普通列車を補完し、都市部への輸送を担っている。

 佐世保線(早岐~佐世保)は、本年3月からの処置で、この区間の普通列車が大幅に削減されたため、特急列車を代役としている。

 2つ目は、特急列車が末端区間で普通列車に代わる処置だ。郊外の末端区間では列車本数が少なくなる傾向が多く、各駅利用客への救済処置として、普通列車として運転している。いわば、サービス列車であるが、JRにとっても普通列車を増発せずに済むメリットがある。室蘭本線(室蘭~東室蘭)外房線(勝浦~安房鴨川)牟岐線(牟岐~海部)の各区間に見られる特急列車が、その典型例といえよう。

 ただし、鹿児島本線のかもめ104号は、車両を吉塚の留置線(一時的に車両を停めておく線路)に移動させる際に、朝ラッシュ時の乗客輸送を補完する意味がある。

**本文中のJR線の( )の太字表記は乗車券だけで乗れる区間をさす。

 肥薩線(吉松~人吉)は普通列車の役目を担っており、観光列車的な要素も多く、運転のない特急列車の代役でもある。

 特急車両を使用した東海道本線の通勤ライナーも、大船以遠(小田原方面)は快速列車に変更し、沿線の通勤輸送を補完している。

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 3つ目は、車両の「間合い運用」が関係している場合だ。間合い運用とは、本来の目的である運用の合間を利用し、副業的な運用を行うことで、本来使用する列車以外にも同じ車両を充当する列車を指す。

 では、どのような事例があるかといえば、車両基地や車両を留置する場所から特急の始発・終着駅が遠い場合などで、回送列車にせず営業列車として効率を上げるわけだ。その際、特急列車として運転しても利用者が見込めない場合は普通列車として運転する。室蘭本線や白新・羽越本線(村上~新潟)などがその一例だ。

 また、朝夕に多い事例だが、特急列車で営業する前に普通列車に充当する運用が見られる。朝夕は列車本数が多く、普通列車用車両も不足気味のため、特急車両に助けてもらうわけだ。飯田線(天竜峡~駒ヶ根)の普通列車は、留置線回送と朝のお助け列車の組み合わせで、車両のアルバイトともいえる。

 このように、乗車券だけで利用できる特急車両は、路線ごとの事情が垣間見られ、とても興味深い。特急車両の普通列車に出合ったら、次はどの特急に運用されるのかを時刻表で推理するのも楽しいだろう。

 ぜひ、図表をご覧いただき、ご利用や推理の一助になれれば幸いである。

**本文中のJR線の( )の太字表記は乗車券だけで乗れる区間をさす。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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