このページの本文へ

古民家を全国の“村民”が再生・共有する「シェアビレッジ」とは

2018年07月26日 06時00分更新

文● 吉田由紀子(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

40年以上も放置された
古民家が蘇った

香川県三豊市仁尾町の古民家「松賀屋」
築100年を超す「松賀屋」。昔の姿を残しつつ、現代的な宿泊施設になっている。「村民」になれば1泊4000円で泊まることができる

 香川県三豊市仁尾町。瀬戸内海の中でも波が穏やかなことで知られる燧灘(ひうちなだ)に面した、人口6000人の静かな町である。江戸時代から漁業や製塩業、醸造業で栄えた歴史を持っている。この町にやって来る人の多くは、「松賀屋」という築100年を超す古民家の訪問を目的にしている。来訪者はここに泊まって自然を満喫したり、行事に参加して町の人と交流をしたりと、思い思いの休暇を楽しんでいる。

 実はこの松賀屋は「シェアビレッジ」と呼ばれる活動の拠点になっている。地方活性化の新しい手法として期待されているシェアビレッジ。文字どおり、村や町を大勢の人が共有し、盛り上げていく試みである。

 制度はシンプルだ。年会費(3000円)を納めれば、誰でも「村民」になることができる。好きな時に「村」を訪れ、宿泊をしながら田舎生活を体験したり、地元の人と触れ合ったりと楽しんでいる。

「仁尾町は、古くから瀬戸内海の海水を利用した製塩業が盛んな土地でした。松賀屋は、塩の売買で財を築いた地元の有力者、塩田忠左衛門が明治時代に建てた旧宅です。敷地には2階建ての母屋をはじめ、離れ、蔵などが建ち並ぶ古民家です。しかし、製塩業の衰退とともに空き家となり、40年以上も放置された状態でした」(シェアビレッジ仁尾を運営する一般社団法人『誇』のメンバー、以下同)

 当初は旅館としての活用を考えていたが、諸事情により叶わなかった。しかし、仁尾町にとっては、町のシンボルとも言える重要な建物。それを残すにはどうすればよいかと考えた結果、シェアビレッジプロジェクトに参画しクラウドファンディングを利用して、改装費用を調達。2015年に二村目の村「シェアビレッジ仁尾」として開村をすることになった。

「開村祭には、県内だけでなく県外在住で村民になってくださった方々をはじめ、大勢の方が駆けつけてくださいました。長年閉鎖されていた松賀屋が開いていると聞き、地元の方もお祝いに駆けつけてくれました。去年開催した夏祭りでは敷地内に櫓を組み、地元の方にもたくさん来ていただきました」

都市部に住む「村民」のための
交流会も開催

シェアビレッジ仁尾では、夏祭りや農業体験など地元の行事に参加する機会が数多くあり、町の人と気軽に交流ができる

 宿泊施設へと改装された松賀屋には風呂があるものの、宿泊者は自ら町の銭湯へ出向いたり、食堂や居酒屋に立ち寄ったりしている人が多い。町の人と交流することで、ガイドブックには載らないような観光地を教えてもらうこともある。

「今では高松空港から直接、仁尾に来る方もいるほどです。徒歩圏内にきれいな海水浴場がありますし、船で行ける無人島もあります。カヤックやSUP(スタンドアップパドル)といったレジャーも楽しめますから、のんびりと休暇を過ごすには、最適な場所です」

 町内にある父母ヶ浜(ちちぶがはま)は、「日本のウユニ塩湖」と言われており、美しい海景色が見られることから、いま評判が広まっている。ここを訪れる人も多い。

 シェアビレッジは、秋田県の五城目町がそもそもの原点である。五城目町は人口9000人の山間の町。かつては農業、林業が盛んだったが、徐々に住民が減り、いまでは高齢化率が40%という過疎地である。古い家が次々と壊されていっていく中、町に残された築135年の茅葺きの古民家を保存しようと立ち上がったのが、最初のシェアビレッジ活動である。

「村があるから村民がいるのではなく、村民がいるから村ができる」というビジョンのもとに、消滅の危機に瀕した古民家を、誰もが集まれる「村」へと再生させていった。こちらも、町の人と一緒に郷土料理を作ったり、自転車でツーリングを楽しんだり、多彩な体験ができる。

 このシェアビレッジ、いまでは仁尾町と五城目町を合わせ、全国に2000人の「村民」を抱えるまでに拡大している。

 ユニークなのは、都会にも拠点を作っているところだ。頻繁に仁尾町や五城目町に行けない人のために、都市部では「村民」が集まる交流会を定期的に開催している。年齢や職業を超えて、村民であることで誰もが仲良くなれるという。

 またシェアビレッジの村民が、気軽に集まれる村役場的な場所として、おむすびスタンド「ANDON」を東京の日本橋で開いている。ここではシェアビレッジの最新情報も入手できる。

 人口減少とともに衰退していく地方の町や村。しかし、そこには土地の歴史を育んできた建物が残っている。歴史的な価値があっても、維持費用がかかるために、取り壊される建物も少なくない。それを大勢の人の力で支えるのが、シェアビレッジの発想である。増える空き家、地方の過疎化など山積する問題を解決する糸口になるかもしれない。現在、次なる「村」の計画も進んでいるという。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R))


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ