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農水省新次官人事は「異例中の異例」、自民党農林族の抵抗必至

2018年07月24日 18時15分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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農水省新次官に経産省に出向中の末松広行氏
Photo:PIXTA

 政府は24日、農水省の奥原正明次官(62歳)の後任に、局長級の人事交流で経産省に出向中の末松広行産業技術環境局長(59歳)を充てる人事を決めた。来年には農協改革の重大局面を迎えるが、末松氏が手腕を発揮できるかが焦点だ。

 農水省の次官は、次期次官の指定席である水産庁や林野庁の長官から昇格するのが通例だ。末松氏は奥原氏に続いて指定席を経ずに次官に就任することになる。その上、経産省局長からの抜擢となる今回の人事は、異例中の異例と言える。

末松氏は経産省で人口知能の研究を統括した。農業のIT化の推進も期待される役割の一つだ

 イレギュラーな人事が続くのは、補助金や関税で農家を保護してきた戦後農政が行き詰まっており、抜本的な制度の見直しを行える人材が求められているからだ。

 奥原氏は、菅義偉官房長官との太いパイプを生かして、コメの減反廃止や、JAグループを束ねるJA全中の解体といった自民党農林族が強く抵抗する改革を実現してきた。

 一方、後任の末松氏は、小泉内閣で官邸に出向し、内閣参事官を務めるなど重要ポストを歴任してきた農水省のホープだ。

 自由な働き方も末松氏の特徴だ。役所勤めを続けながら大学の客員教授として教鞭を執ったり、グロービス経営大学院のシンポジウムで農業の産業化を論じたりするなど慣習にとらわれない行動派の一面を持つ。

 ある農水省幹部は「案件ごとに方向性を示し、細かいところまで指示を出した奥原氏の時代より、個人の裁量に任せられることが増える」と自由な時代の到来を歓迎する。

昔に逆戻りの懸念も

 しかし、“ゲシュタポ”と呼ばれるほど厳しい姿勢で部下を統率し、働きぶりが期待値に達しない幹部は容赦なく排除した奥原氏が退任すれば、省内の改革の機運は萎むことが懸念される。

 第2次安倍内閣発足後、弱体化していた自民党農林族が復活しているのも農政改革には逆風だ。

 奥原氏とソリが合わないとされた農林族の代表格、森山裕元農相が自民党の国対委員長として存在感を増しているほか、改革の旗手として活躍した小泉進次郎氏は自民党農林部会長を退任した。同部会幹部ポストには、地域農協の上部団体出身の国会議員が複数、就任している。

 こうした状況で、末松氏は農協改革の第二ラウンドと言える重大局面を迎える。来年5月には改革の集中推進期間が終わり、それまでの進捗を評価して、不十分ならば追加的な改革を求める法整備などを検討することになるのだ。

 JAグループは金融サービスの主要顧客である非農家(准組合員)による事業利用の制限や、銀行業務である信用事業の地域農協からの分離が法整備に盛り込まれるのではと身構えている。

 全国のJAグループでは、農家の所得向上のために事業を見直す地域農協が出てくる一方で、改革に消極的な農協があるなど、進捗に濃淡が生じている。

 かねて「頑張らない農協は淘汰されるのが大切だ。競争で生き残る農協が充実することで農業がよくなる」と公言してきた末松氏が、厳しい姿勢を維持して改革を進められるか――。安倍政権の改革推進力を図る指標になるだろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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