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「9割引き」アパレル販売サイトにメーカーから出品が殺到する理由

2018年07月25日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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ファッション業界で存在感高まる
フラッシュセールサイト

GLADDのホームページ画面
GLADDのHPより

 ユナイテッドアローズ、ビームスなどのセレクトショップから、オンワードなど大手アパレル、三越伊勢丹や阪急など大手百貨店の商品が、3割から5割、時には9割引きで売られているECサイトがある。「フラッシュセールサイト」だ。

 フラッシュセールとは数日など期間限定で行われるセールのこと。この数年で衣類やファッション雑貨などのセール中心の専門サイトが規模を拡大し、ファッション業界では存在感が高まっている。

 フラッシュセールサイトの運営会社は、メーカーからの仕入れ(買い取り)も一部あるが、基本的には在庫を持たない。アパレル各社の商品をサイト上で掲載し、セールを締め切った段階で各社に発注して在庫を取り寄せ、顧客に発送する仕組みだ。

 日本のフラッシュセールサイト最大手の「GLADD(グラッド)」は、今年6月、2番手だった「GILT(ギルト)」を買収。2社合計の売上高は年間200億円ほどだ。「会員数は500万人で、うち2割がアクティブユーザー。1人当たり平均3点、1万円の売り上げだ」とグラッドの香取純一CEOは話す。セール商品の販売でありながら、販売額の30%が手数料という利益率の高さが際立つ。

 なぜそれほど高い手数料を払ってまで、アパレル各社はこぞって連日バーゲンセールを行っているのか。

 アパレル大手であるTSIホールディングスの上田谷真一社長は、第1四半期決算の席上で、同社の主力ブランドを販売するグループ会社で「アプワイザーリッシェ」などのブランドを持つアルページュについてこう述べた。

「方針として、今年は完全に店頭でのセールをゼロにする。売れ残ったものは即刻フラッシュセールのサイトとアウトレットのリアル店舗ですべてさばく。セールや福袋で売り上げを作ってもブランドを傷めるだけ」。多様なブランドがフラッシュセールに出店する背景には、セールへの販売依存から脱却し、店舗では定価で売りたいと考えるアパレルメーカーの思惑が働いている。

アパレルメーカーに
大きく三つのメリット

 実際、アパレルメーカーにとっては大きく三つのメリットがある。

 一つ目はもちろん、不良在庫を処分できることだ。フラッシュセールサイト側も基本的に在庫リスクを負う必要がなく、両者にとってメリットがある。また、同サイト側が在庫を買い取る場合は、定価の10%前後と二束三文だが、その分思い切った価格設定ができるため、より在庫ははけやすくなる。

 二つ目は、ECに出遅れているメーカーにとっては新規顧客開拓というメリットがある。サイトのアクティブユーザーが多ければ、認知度向上はある程度見込めるだろう。

 三つ目は、これが最も重要なのだが、ログ(履歴)を残さずセールができること。通販評論家の村山らむね氏は、「ブランドイメージの向上に、価格競争はそぐわない。検索しても『セールをした』というログが残らないフラッシュセールは都合がいい」と話す。

 ただし、「アルページュはプロパーで売るという戦略で売り上げて成功している」とTSIの上田谷社長が言うように、フラッシュセールサイトは、アパレルメーカーが定価販売に切り替えていく過程における一過性のチャネルに終わる可能性もある。

 グローバルで見ると、フラッシュセールサイトは浮き沈みが激しい。米国の場合、一時期流行したもののブームが下火になり、最大手・ギルトグループがディスカウントショップ・ルーララに買収された。一方、中国のフラッシュセール専門サイト「Vipshop」は、売上高1兆円を超える巨大サイトになっている。

 グラッドの香取CEOは「2020年の株式上場を目指し、アパレルだけでなく、キッチンウェア、化粧品、食品、サービスなどにも力を入れ、7000ブランド、売上高250億円を目標にする」と意気込む。

 今後フラッシュセールサイトが成長していくには、単なる在庫処分の場ではなく、顧客開拓の場として認識されていくことが不可欠だ。

 一方、アパレルメーカーが今後生き残っていくには、業界の構造問題でもあるセール依存体質からの脱却が喫緊の課題だ。もしもフラッシュセールサイトの存在によって、セール依存体質をさらに強めてしまうようなら、アパレルメーカーはさらなる苦境に陥るだろう。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相馬留美)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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