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キャッシュレス決済に疎い「現金支払い派」が大損している理由

2018年07月25日 06時00分更新

文● 岩田昭男(ダイヤモンド・オンライン

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QRコード決済
簡単に使えて、店舗側にとっても負担が少なくてすむQRコード決済ににわかに注目が集まっている(写真はイメージです) Photo:PIXTA

世界ではあらゆる場面でキャッシュレス決済が常識となり、現金払いはむしろ時代遅れ。いまだに現金信仰が根強い日本でも、政府主導でのキャッシュレス化が急速に推し進められている。そんな中、現金払いを続けている人は大損しているかも…。『キャッシュレスで得する!お金の新常識』(青春出版社)の著者がお得な“最先端の支払い方”を解説する

現金支払いが主流なのは日本だけ!?

 皆さんは普段の買い物で、どれくらいキャッシュレス決済を利用しているだろう。キャッシュレス決済とは現金以外で決済する(代金を支払う)ことで、クレジットカード、電子マネー、スマホ決済など、さまざまな方法がある。そして、世界の中で、キャッシュレス決済の普及が進んでおらず、いまだに現金決済が主流の先進国は日本くらいだということをご存じだろうか。

 日本における現在のキャッシュレス決済比率は20%、金額にして60兆円程度(2016年)。キャッシュレス決済比率、金額ともに年々増えてはいるが、お隣の韓国は89.1%、中国は60%、アメリカは45%と、日本とは非常に大きな開きがある。世界の中で、日本は圧倒的にキャッシュレス後進国なのだ。

 日本には借金を嫌う国民性と根強い現金信仰があり、なかなかキャッシュレス決済の普及が進まないのが現状だ。しかし、キャッシュレス決済は利便性が高いうえに、様々なお得なサービスが付随するため、現金で支払う方が損をする傾向が強まっているのだ。

 じつは、日本政府も日本がキャッシュレス後進国であることに強い危機感を持っている。政府は、キャッシュレス化が国民生活の利便性向上や外国人観光客を増やすために必要であり、来るべき新社会に不可欠なものとして位置づけている。

日本は国を挙げてキャッシュレス化にまい進

 政府がキャッシュレス化を推し進める狙いは3つある。

1.インバウンド消費拡大による経済活発化
2.現金ハンドリングコスト減
3.お金の流れの捕捉

 第一はもちろん、インバウンド消費拡大による経済活発化だ。日本政府が打ち出している「日本再興戦略」の中では、観光立国の実現のためには「キャッシュレス環境の飛躍的改善」を図り、「2020年までに、外国人が訪れる主要な商業施設、宿泊施設及び観光スポットにおいて100%のクレジットカード決済対応及び100%の決済端末のIC対応を実現するため、クレジットカード決済・IC対応端末の普及を促進する」と、外国人観光客への対応を強く促している。東京オリンピックには外国人観光客が大挙して押し寄せてくる。彼らはキャッシュレス決済が普通なので、店舗のインフラ整備は急務である。

 第二は、現金のハンドリングコストの削減だ。紙幣にしても硬貨にしても、貨幣をつくって保管し流通させるには膨大なコストがかかる。国だけではなく企業にとってもそのためのコストはバカにならない。

 日本の貨幣(銀行券)の1年あたりの製造コストは日銀によると約517億円だという。われわれ国民は、稼いだお金をほとんど銀行のATMから引き出して使っている。その銀行のATMは、信用金庫やセブン銀行、イオン銀行などを含めると全国で約20万台ある。

 ボストン・コンサルティング・グループの推計によると、このATMの維持管理費に現金の運搬にかかる人件費などを加えると、年間2兆円にものぼるといわれる。キャッシュレス化によって、この官民にかかる負担を軽減したいというわけだ。

 第三は、お金の流れをきちんと捕捉して、徴税を徹底したいということ。言い方は悪いが、できるだけ税の取りっぱぐれがないようにしたいと考えるのは、国、お役所の立場からすれば当然のことではある。

メリットだらけのキャッシュレス決済

 国のメリットは上記のとおりだが、それでは消費者にとってキャッシュレスにするメリットは何だろう。

・レジで小銭を数える必要がなくなる。
・お金を落とす心配をしなくてすむ。
・財布がいらなくなる。
・お金の使い道がよくわかる。
・ポイントが貯まる。

 もちろんデメリットもある。

・カードを紛失したり盗まれたりする。
・クレジットカードのスキミング被害にあう。
・冠婚葬祭に使えなくなる。
・買い物などでお金を使いすぎてしまう。
・地方ではクレジットカードや電子マネーが使える店が少ない。
・資産やお金の使い方が企業や国に筒抜けになる。

 メリットとデメリットを比べ、便利さと予想されるリスクの双方を勘案してどちらをより重視するかによって、キャッシュレス派になる人もいれば、現金派になる人もいる。現金が使えるのだから別に問題ない、と思う人も少なくないだろう。しかし、すでにキャッシュレス決済のメリットが大きくなり、現金払いとの間に「サービス格差」が開きつつあるのが現状だ。

クレジットカードと電子マネーの違い

 ここで、キャッシュレス、つまり現金なしで決済する手段をまとめてみよう。

 まずクレジットカード。その中で、世界中どこでも利用できる仕組みをつくって運営するのが国際ブランドと呼ばれる大手クレジットカード会社だ。国際ブランドは現在、VISA、マスターカード、ダイナースクラブ、アメリカン・エキスプレス、ディスカバー(アメリカの新興ブランド)、中国銀聯(ぎんれん)カードに、日本のJCBを加えた7社。

 この国際ブランドと契約して、クレジットカードの発行を行っているのが一般カード会社。そこが発行するカードを「プロパーカード」という。さらに一般カード会社と提携した企業・団体が共同で発行する「提携カード」がある。カード払いでは0.5~2%のポイントが付くため、現金払いよりお得な面がある。

 次に電子マネー。主にJRや地下鉄とその周辺で使えるのが、鉄道会社が発行する交通系電子マネーのSuicaやPASMOなど。流通系電子マネーには、楽天Edy、イオンのWAON、セブン&アイのnanaco、NTTドコモのiD、JCBのクイックペイなどがある。これらはソニーが開発した非接触型ICカード技術フェリカを使った電子マネーで、ともかく決済スピードが速いのが特徴だ。Suicaなどを利用して鉄道に乗れば、切符を買うより運賃が安くなる。

 決済という視点で見ると、クレジットカードは後払い(ポストペイ)で、電子マネーは前払い(プリペイド)のものが多いが、クイックペイなどは後払い。この違いは重要で、カード選びやショッピングのときのひとつの基準になる。

 デビットカードは前払いでも後払いでもない。自分の銀行口座からすぐにお金が引き落とされる即時決済だ。クレジットカードと違って面倒な審査もなく、銀行口座があれば誰でも持てるカードで、買い物の際、読み取り機にカードを差し込み、暗証番号を押すだけなので使い方も簡単。さらに2018年4月からキャッシュアウト機能が加わった。キャッシュアウトとは、たとえば利用者が1万円の引き落とし請求をして、5000円の洋服を買ったとすると、お釣りの5000円を現金で出してくれるというもの。イオンの一部の店舗でスタートしている。

スマホ決済の注目度が急上昇!

 この1~2年の間に急速に台頭してきたのが、スマホ決済サービスだ。これまでも日本では、いわゆる「おサイフケータイ」機能がついた携帯やスマホを使って電子マネーやクレジットカード決済をすることができた。これにアップルとグーグルが開発した、Apple Pay(アップルペイ)とGoogle Pay(グーグルペイ)というスマホ決済サービスが加わった。

 これによってiPhoneならSuicaやiD、クイックペイといった電子マネーが使えるほかに、クレジットカードを登録しての決済もできる。アンドロイド系のスマホなら楽天Edy、nanaco、WAON、Suicaの電子マネーを使っての決済が可能になった。これらはいずれも前述の非接触型IC技術フェリカを使った電子決済サービスという点で共通している。

 ちなみに、インターネットを通じて商品を購入するEC(Eコマースのうちの物販・ネットショッピングなど)の市場規模(2016年)は8兆43億円。このうちスマートフォン経由が31.9%を占めている(経済産業省調べ)。前年に比べて5600億円以上増えており、スマホを使った決済が徐々に主流になっていく可能性がある。

今後は主流になる?QRコード決済とは

 スマホ決済サービスでにわかに注目されているのが、アリペイやウィーチャットペイ、それからLINEペイだ。これらはQRコードを読み取ることで決済ができ、銀行口座があれば決済が可能。つまり、アップルペイやグーグルペイがクレジットカード決済(後払い)なのに対して、銀行口座に入金したお金を引き落とすなどして使う即時決済なのだ。この2つの違いは大きい。

 QRコード決済は、より簡単に使えて、店舗側にとっても負担が少なくてすむ。決済だけではなく送金もできるし、“割り勘”機能がついていて、友だち同士で食事に行ったりしたときに、簡単に割り勘で支払いができるのもクレジットカードなどにはなかった機能だ。

 このように、いまキャッシュレス化の最前線に、スマホ決済サービスが躍り出ているといっていい。

現金とキャッシュレスで生まれる格差

 私たち消費者は、お得なポイント還元や、カード利用割引、決済にかかる時間の短縮など、大きなメリットがあるからこそキャッシュレス化を受け入れ、新しい仕組みを利用してきた。そうした社会の変化に敏感な人たちはどんどん先を走って多くのメリットを享受し、豊かになっていくだろう。逆に、この大きな流れに乗り遅れた人たちは取り残され、負の連鎖を背負い込み、損する局面が多くなってしまうだろう。両者の間にはいつの間にか大きな格差が生まれてしまうかもしれないのだ。

 いよいよ本格化したキャッシュレス社会に早めに積極的に参加し、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、スマホ決済を使ったスマートな買い物、消費を心がける。それこそが、小さなことのように思えるかもしれないが、これからの時代を生き抜く上で、大きなアドバンテージになるはずだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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