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三菱自動車の次期CEO?ゴーン流の「伝道者」がメディア初激白 ギョーム・カルティエ(三菱自動車専務執行役員(グローバルマーケティング&セールス担当))特別インタビュー

2018年07月24日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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今年4月、三菱自動車の海外販売の最高責任者に、専務執行役員のギョーム・カルティエ氏(49歳)が就いた。日産自動車から送り込まれたこのフランス人が、日本のメディアで初めて本誌の取材に応じ、三菱自変革の狙いと展望を明かした。(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)

三菱自動車専務執行役員(グローバルマーケティング&セールス担当)ギョーム・カルティエ氏
Guillaume Cartier/1969年生まれ。95年仏エセック・ビジネススクール(ESSEC)卒業後、日産自動車に入社。欧州日産の販売担当副社長などを歴任し、2017年三菱自動車常務執行役員。18年4月より現職。 Photo by Masato Kato

「三菱自動車で働くということは、私にとって面白い挑戦だ。三菱自の社内は今『変わりたい』という欲求が非常に強い。私のミッション? それはこの会社を成長させること。非常にシンプルだ」

 そう語るカルティエ氏は、三菱自を傘下に収めた日産自動車のカルロス・ゴーン会長らの招聘で昨年4月に来日。わずか1年で海外販売のトップに就任したことは、関係者に衝撃を与えた。同ポストは伝統的に、最高経営責任者(CEO)の益子修氏ら三菱商事の出身者が独占してきた“牙城”だったからだ。

 カルティエ氏は早速変革の大ナタを振るう。今年6月、フィリピンの生産・販売会社に出資する双日から全株式(発行済み株式の49%)を買い取り、100%子会社としたのだ。この提案に当初抵抗した双日側に、いわば“引導”を渡すよう主導したのがカルティエ氏とされる。

「私はこれまでとは違う視点でビジネスを見ることができる。今ある三菱流のやり方からベストのものを選択し、さらに私の方から新しい仕事のやり方を紹介できる」

「三菱自はフィリピンで生産している。それをビジネスフルに把握し、生産から販売まで自分たちでコントロールできるようにしたことが株式買い取りの目的だ」

「コントロール」の対象は、三菱商事との合併事業も決して例外ではない。

「われわれが挑むのはパフォーマンス(の向上)だ。相手が子会社であろうと合併会社であろうと、パフォーマンスが良ければそれでいい」

「私が担当する15の主要市場のうち、12はしっかり成長できている。今の勢いは決して悪くはない。しかし、ある地域のパフォーマンスが期待通りでなければ、何かしらの計画を立てる必要がある。今の販売会社を続けるか、あるいは新しい方策を見つけるか、さまざまな選択肢を検討しなければならない」

 海外販売で商社に依存してきた商習慣を壊し、パフォーマンス次第で聖域を設けず見直す──。それこそが、カルティエ氏が言う三菱自の「新しいスタイル」なのだ。

 一方、三菱自の足元の業績は好調だ。2017年度の新車販売台数は110万台で、燃費偽装が発覚した16年度から19%増加。当期純損益も赤字から1076億円の黒字に回復した。その要因をカルティエ氏は2点挙げる。

「一つは『エクスパンダー』と『エクリプスクロス』という新車を投入できたこと。もう一つは、ASEAN(東南アジア諸国連合)とオセアニアを三菱自の屋台骨となる市場に位置付け、ここに注力する戦略を取ったことだ。インドネシア・ジャカルタで生産するエクスパンダーは好調で、タイやベトナムへも投入する。そのための投資を行い、そこでビジネスを拡大することがわれわれの戦略だ」

 さらに18年度4~6月期も前年度同期比で20%超の販売増を達成。この“V字回復”軌道に乗る中で、カルティエ氏が重視するのが、これまで三菱自の社員に足りなかった「自信」を取り戻させることだという。

「米国と中国の巨大市場でわれわれはまだ十分な足場を築けていないが、販売会社を拡充させてパフォーマンスを上げていく。大切なのは『やれる』という自信を持つことだ。決して傲慢であってはならないが、人は自信を持つことで良いスパイラルに入る。だから私はいつも社員に『やろう』『成長しよう』と言っている」

「マインドセットを変えなければならない。それは、人としてリスクを受け入れるということだ。三菱自は新たなブランドメッセージに“Drive your Ambition”を掲げたが、これは社員に向けてのメッセージでもある。社員自身がドライブ(前進)するために意思決定をしてほしい、成長を恐れるな、というメッセージだ」

 そして今後の成長の鍵を握るのが、日産・ルノー連合とのアライアンスの活用だ。

ギョーム・カルティエ氏
燃費偽装発覚に揺れた三菱自動車の社員に対し、カルティエ氏は「自信」を取り戻すよう鼓舞する Photo by Masato Kato

「私の日々の業務の大部分が、アライアンスのことで占められている。例えば部品を共同調達できないか、あるいは物流やマーケティング、販売金融を一緒にしてコストを下げることはできないか。お互いが違うブランドでありながら、規模の恩恵をいかに享受するかを常に考えている」

 カルティエ氏からすれば、三菱自は年間販売台数100万台規模の小メーカーでありながら、電気自動車やプラグインハイブリッド車を先駆けて世に送り出した「アブノーマル」な会社だ。

 その会社が1000万台規模のアライアンスの一員になったことで、開発以外でもさまざまなビジネスの選択肢が広がる。例えば米国の自動車関税が引き上げられれば、米国販売車の全てを日本から輸出する三菱自への打撃は甚大だが、アライアンス企業の米国工場で三菱車を生産することも選択肢になり得る、と明かす。

 最後にカルティエ氏をめぐって取り沙汰される、ある観測について聞いた。それは、益子CEOの後継者としての野望だ。15年以上かけて日産を立て直したゴーン氏と同様、日本に経営者として長く在住する覚悟はあるのか、との問いにカルティエ氏はこう答えた。

「実は家族を呼び寄せている。日本に住んで1年以上になるが、私も家族もハッピーだ。質問に対する答えは、イエスだ」


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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