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公取委はアップルのキャリア支配の実態に初めてメスを入れた Photo:S3studio/gettyimages、Reiji Murai |
圧倒的な強さで、大手携帯電話会社に不利な契約を押し付けているのではないか──。かねてうわさされてきた米アップルによるiPhoneの販売手法に初めて「市場の番人」のメスが入った。
7月11日は日本にiPhoneが上陸してからちょうど10年の記念日。まさにこの日、公正取引委員会は、アップルが国内携帯大手と結ぶiPhone契約に独占禁止法違反の疑いがあると指摘していたことを明らかにした。
2016年10月から入ったアップルに対する審査で、公取委がチェックしたのは、(1)過大な販売ノルマ、(2)決められた料金プラン、(3)中古端末の流通制限、(4)端末購入補助金の提供義務──の4項目。
その結果、(1)~(3)は独禁法上で問題になる事実を確認できなかったが、(4)については契約書に補助金の提供義務が記載されていることを突き止め、iPhoneを値引いて販売するよう求めていた実態を暴いた。
公取委はこの点が独禁法上問題になるとアップルに指摘。アップルはこれを受け入れてすでに契約書を修正したため、問題は解消されたとして審査は終了した。
この結果、大手キャリアは端末値引き以外のiPhone販売プランを自由に提供できることになった。今年秋の新型iPhoneが発売されるタイミングに合わせ、各社が新しい通信料金プランの導入を検討することになりそうだ。
今後は寡占問題が焦点
もっともユーザーにとっては、1台10万円前後もするiPhoneが値引きなしで売られることにメリットはなく、求められるのは通信料金の引き下げだ。
公取委幹部も「大手3社には端末の値引き競争だけではなく、割安でバラエティーに富んだ通信料金の競争を期待したい」との見解を示す。
だが、大手キャリアが簡単に応じるとは考えにくい。むしろ端末だけが高くなって通信料金はそれほど下がらないという、いびつなプランが生まれる可能性もある。
今回の公取委の公表については、「うわさされたほどアップルの縛りは厳しくなかった」(業界関係者)との見方も出ており、キャリアに通信料金引き下げを促す実質的な効果は薄いかもしれない。
それでも、過去10年にわたってキャリアの競争を阻害しているとされたアップル問題に一応の決着をつけたことは、市場の番人の本気度を印象付けた点で意義深い。
公取委がアップル問題を片付けたことで、今後は再び大手3社の寡占問題がターゲットとなる。総務省は6月、3社に対して「2年縛り」を19年3月末までに見直すよう行政指導を行ったが、通信料金の引き下げを促す競争環境の整備は道半ばだ。当局とキャリアの攻防は、これからさらに激しさを増していくことになるだろう。
(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)
※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら
