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コネクテッドカー、カーシェア、自動運転は働き方にどんな変化をもたらすのか?

クルマで仕事する3人の放談から見る「モビリティ×働き方」の可能性

2018年07月27日 10時00分更新

文● 重森大 写真●曽根田元

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モビリティを活かした働き方から生まれる多様な価値に企業は気づくべき

貝瀬:かつてカリフォルニアでは、Google社員の多くがプリウスで通勤していました。環境負荷が少ないということで優先レーンを走れたからです。しかしハイブリッド車が当たり前になり、プリウスが優先レーンを走れなくなった。そうしたら、プリウスに乗っていたGoogleの社員たちがこぞってバス通勤に変えたんです。今までは、通勤時間をショートカットして、早く着いて仕事の時間を取れるからプリウスに乗っていた。逆にどうせ渋滞に巻き込まれるのであれば、運転するよりも渋滞中の時間を活かす方向に転換したわけです。

作業の自由度はあるけれどパーソナライズされていない電車などの公共交通機関。自由度はあるけれど運転しなければならないので作業はできないクルマ。自動運転はその両方のいいとこ取りになる可能性を持っている。作業の自由度とパーソナライズが両立する。Mobility as a Service、Mobility as an Officeみたいな考え方が成り立ちます。

大谷:今までの人類から考えると未知の領域。物理時間自体は増やせないので、可処分時間をいかに捻出するかということだと思うんですよ。そのひとつの手段としてクルマは、進化をとげるかもしれない。でもクルマのそういった側面を知らない人から見たら、単純に自動で運転してくれる車って便利そうだなあくらいじゃないですか。全然違う考え方になりますよね。

沢渡:アウディは自動運転車のキャッチコピーで「あなたに25時間目をさしあげます」と言っています。自動運転は往復1時間の通勤の運転からあなたを開放します、あなたはその時間を使って何をしますか?と、時間の価値を問いかけている。そんな風にクルマを従来の移動手段と見ずに、働き方改革と言われている文脈の中で、いかに可処分時間を捻出するか、あらたな価値を創出しているかという考え方にフィットしていける企業なり人が、勝てると思う。

「クルマを従来の移動手段として見ず、あたらしい価値を創出するという考えにフィットできる企業や人が勝てる」(沢渡)

大谷:あとは会社ですよね。会社がそれに合わせていかに制度を変えていくか。クルマで働く、クルマで移動することで価値を出すというのが、今は働き方のフィールドの中に入っていない。

沢渡:実はセキュアですとか、実は最近増えている鉄道トラブルにも影響されないとか、メリットを提言していかなければなりませんね。

大谷:先日フジテックのCIOである友岡さんが「社員にカフェで仕事してほしくない」と言っていた。セキュリティの観点からも生産性の話からも。こういう頭のやわらかい人がクルマっていうものの利用価値に気がついてくると、働き方も変わってくるのかな。

沢渡:ひとつは、企業がモビリティの可能性を見つけて許容していくこと。そして働く個人も、モビリティの高い働き方をしていかないといけない。個人のモビリティを高めることと、環境のモビリティを高めること。この相乗効果で勝ち負けが決まってくるんじゃないかな。

大谷:いま、働き方改革の取材をしていると、多くの会社で在宅勤務を試している。VPNを構築したり制度を作ったり。でも子供を抱えて在宅で働けないよって話になってきて、シェアリングオフィスに進む。大宮とか横浜とか千葉にあるサテライトオフィスで、本社に行かなくても仕事ができるというのを数時間やってみている。その次のステップとしてどうするのか?というところに、ヤマハやシスコが取り組んでいる駅でのプライベートオフィスはどうだろうとか、もしかしたら次の選択肢としてクルマっていうのもあるのかもしれないと感じ始めました。

貝瀬:今までは移動しないことを前提に効率化をがんばってきた。その次にあるのは、移動の最中をどううまく使っていくのか。さらには移動した先での人のつながりによって生み出し得るものがもっと広がって行く。移動している最中を含めてトータルでの価値を高めるというコンセプトがあり得るんじゃないかな。単なる時間効率の圧縮だけではなく、対話や議論が自由闊達にできる。そこに、時間や空間の制約がなくなることが効果的なんだと思います。

制約要件の中で働いている人にとって、生み出すことにかける時間を最小化するベネフィットはあるものの、日本の企業のチャレンジになっている、作り出す価値の拡大という点には、こういった考え方や取り組みが効いてくると思います。そういった視点は強く発信したいですね。

大谷:そんな中で、最先端の働き方をしていることがわかった重森からはなにかある?

重森:最後に聞きたいのは、これだけのメリットがあるとわかったのに、なぜ大谷さんはクルマで移動しないのか?ということですね(笑)。

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