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欧州の航空会社が日本路線を相次ぎ増便、好調の理由は

2018年07月19日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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Photo:AP/AFLO

エールフランスを始めとする欧州の航空会社は、今夏の日欧路線において増便を相次いで発表。背景には、訪日外国人需要の伸びがある。好調な日欧路線市場をめぐり、国内航空会社も巻き込んで、各航空会社の提携など新しい動きが進む。(『週刊ダイヤモンド』委嘱記者 森川幹人)

週40便まで増やすと
強気のエールフランス

「日本は依然として重要なマーケットだ。2018年度夏季のスケジュールでも、現在週35便運航している便数を、週40便まで増やす」

 エールフランスKLMグループのジャン・マルク・ジャナイヤック元CEOの答えは明確だった。最近になって、米国系航空会社による“ジャパンパッシング”が目立つが、そんなことは意に介することなく、日本市場の重要性を強調する回答だった。

 日本路線を増便する欧州系のエアラインは、エールフランスKLMグループに限らない。ルフトハンザグループもエアバスの新型機A350を導入したり、同グループであるオーストリア航空の成田─ウィーン路線を18年5月に再就航(16年9月に運休)させたりするなど、日本路線を強化。その他、フィンエアーやイベリア航空も、18年中の増便を予定している。

ジャン・マルク・ジャナイヤック元CEO
17年12月のインタビューに答えるエールフランスKLMグループのジャン・マルク・ジャナイヤックCEO。エールフランス労働組合との賃上げ交渉の結果、18年5月に辞任 Photo by Masahiro Muramatsu

 その構造的な要因を、首都大学東京の戸崎肇特任教授は、10年に起きたJAL破綻の影響にまで遡って分析する。

「JAL破綻後、国内のエアラインは拡大路線ではなく、路線を絞り込んで搭乗率を上げる方向に舵を切った」という。その結果、欧州路線における搭乗率は上がったものの、座席が取りにくくなった。そこに目をつけた欧州系航空会社が、新たに参入したり、増便したりしているというのだ。

 また、欧州の航空業界における構造変化も一因として挙げる。LCC(格安航空会社)の台頭によって競争の厳しさが増し、欧州系航空会社は収益面の業績を悪化させている。そうした中、「収益性を回復させるために、軸足を本来の長距離路線に戻そうとしている」というのだ。

 さらに、2015年に起きたパリにおけるテロの影響が弱まってきて、日本から欧州へのアウトバウンド客が増加傾向にあることや、国内観光産業の伸びを受けて欧州から日本へのインバウンド客が増えていること、そして日欧双方の経済が好調でビジネス、観光ともに利用客が増えているという追い風も吹く。

JAL、ANAは
欧州系とのアライアンスで

 それでは、国内航空会社はどう動いているのか。急激に欧州での拠点を増やすのは、リスクが高い。そんな状況で鍵を握るのは、欧州系エアラインとのアライアンスだ。

 ANAはルフトハンザドイツ航空と組んでいるため、毎日運航している欧州行き10便のうちの6便を、フランクフルトやミュンヘンなどドイツの空港が占める(その他は、ロンドン、パリ、ブリュッセル、チューリッヒで、各国1空港ずつ)。乗客は両空港をハブとして、ルフトハンザドイツ航空の接続便に乗り継いで欧州各都市へ飛んでいくことができる。

 もちろん、好調な日欧路線市場の状況を見て、同社が欧州の拠点を拡大していくことも検討しているようだ。18年10月末からは、アリタリア航空とコードシェアを開始する。

ジャン・マルク・ジャナイヤック元CEO
Photo by M.M.

 一方のJALは、16年10月から日本と欧州間の路線において、ブリティッシュ・エアウェイズ、フィンエアー、イベリア航空と共同事業を開始した。3社との共同事業によって、国内から欧州各都市への乗継便の選択肢が増える。

 同社が17年10月から、成田―パリ便を運休し、17年10月から羽田―ロンドン便を増便したのは、ブリティッシュ・エアウェイズの便と接続できることが大きい。羽田―ロンドン便は、羽田空港を深夜に発着し、ロンドンへ早朝に到着するため、ブリティッシュ・エアウェイズとの乗り継ぎの利便性が向上する。 

 さらに、同社は先月になって、20年に新LCCを設立することを発表。新会社は成田空港を拠点に、欧州、米国、アジアの中長距離線を中心とする予定だ。

19年開催のラグビーW杯
東京五輪も追い風に

 今後、日欧路線市場にとって鍵を握りそうなのが、19年に日本で開催されるラグビーW杯だ。ラグビーは欧州においては上流階級のスポーツなので、ラグビーW杯の観戦客は富裕層中心となる。彼らは旅行態度もよく、ビジネスクラスの利用など高単価も期待できるのだ。

 前出の戸崎特任教授によれば、「19年W杯の開催時に空港での枠を確保するため、それまでに便数を増やして実績を積んでおきたい各エアラインの思惑もある」。当然ながら、20年には東京五輪も控えている。日欧路線においては、しばらく追い風が吹きそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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