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ウォルマートが西友売却か、買い手に楽天・アリババ・ドンキ浮上

2018年07月18日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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米国の小売り大手・ウォルマートが傘下の西友を売却する方針
西友には老朽化を隠せない店舗も多い Photo by Satoru Okada

米国の小売り大手・ウォルマートが傘下の西友を売却する方針だと報じられた。国内外のIT企業の名前が買い手に浮上するが、コトはすんなりと進むだろうか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)

 果たして買い手はつくのだろうか――。

 日本経済新聞電子版が7月12日に報じた総合スーパー(GMS)西友の売却報道。親会社の米流大手・ウォルマートが複数の流通王手や投資ファンドに打診しているという。

 旧西武百貨店の下で誕生し、関東を中心にGMSの雄として成長したが、ウォルマート傘下に入ってからは、「EDLP」(Every Day Low Price、セールをしない恒常的な低価格販売)を掲げた。ウォルマート流の商品調達や流通の効率化でコストを抑え、低価格販売を進めてきた。

 非上場のため詳細は不明だが、年間売上高は約7000億円とされ、日経新聞は「最終損益はトントン」と表現した。

 西友のネットスーパーのページを開けば、人気のアイスキャンデー「ガリガリ君ソーダ」が55円(7月16日現在)と、いくら“客寄せ”商品とはいえ確かに安く、利幅が大きいビジネスでないのは明らかだ。しかも、イオンが傘下のダイエーやイオンリテールの立て直しに四苦八苦しているように、GMSで今後の大きな成長が見込めるとの声は少ない。

 売却報道の背景には、ウォルマート本体の大胆な事業戦略の見直しがある。同社は低価格帯では00年代からEC事業を手掛けてきたが、16年に米国のECベンチャーであるジェット・ドット・コムを約3300億円で買収し、中~高価格帯をカバー。今年に入ってからは、インドのネットEC最大手であるフリップカートの約8割の株を1兆7600億円で取得すると発表した。成否はともかく、アマゾンへの対抗策を着々と練っている途上である。

 その反面、リアル店舗ではドイツ、英国といった先進国から事実上撤退。三井物産戦略研究所の高島勝秀氏は「ウォッチャーの間では、日本の西友売却の可能性は当然想定されていたことだ」と話す。

 問題は、買い手がつくかどうかである。西友は、関東を中心に鉄道駅のそばなど好立地の店舗を持つ。その反面、店舗の老朽化は否めない。イオンなど既存の小売大手が、現在の西友の事業をそのまま引き継ぐ余裕はないだろう。

 そうした事情から、買い手をめぐる憶測では、楽天や中国のIT巨人、阿里巴巴集団(アリババ・グループ)、ドンキホーテホールディングス(HD)など、様々なプレイヤーの名前が飛び交う。

 まず、今年1月にウォルマートと「戦略的提携」を発表した楽天。ウォルマートのダク・マミロンCEOが直々に来日して三木谷浩二社長と握手して見せたことから「すぐに終わるような軽い提携ではなさそうだ」(小売業界関係者)。

 そうなれば、楽天による西友買収の可能性も浮上するが、同社は現在、第4の携帯電話会社に名乗りを上げており、今後の基地局建設に多額の投資を要する。そのうえ、楽天は過去にECモール向けに独自の物流事業を展開しようとしたが、失敗した。そのため「楽天にリアル店舗の運営ができるわけがない」(別の小売業界関係者)との見方もある。

 もっとも、IT企業にとってリアル店舗はある種の“実験場”だ。例えばアマゾンは、米国の高級スーパー、ホールフーズ・マーケットを買収し、直後に値下げキャンペーンを打って「ホールフーズのブランドイメージを棄損させた」と批判を浴びながらも、試行錯誤を続けている。アリババ・グループも、従来のEC通販から脱却した「新小売」を掲げる。中国国内では、ネットとリアルを融合し、消費者の体験を重視した食品スーパーを展開するなど、やはりリアル店舗を欲している。

 成長著しくキャシュリッチなアリババが、品質やサービスに求める水準が世界で最も厳しいとされる日本の消費市場に橋頭保を築く可能性も捨てきれない。そうした場合、ユニー・ファミリーマートHDを狙っていたとされるアリババの大株主、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長の判断にも注目が集まる。

 一方で、リアル店舗を擁する小売業で最も勢いがあるのがドンキホーテHDだ。17年にユニー・ファミリーマートHDと提携し、その子会社のGMSであるユニーに出資した。不振だったユニーの店舗を実質的にドン・キホーテに切り替えて収益を大幅改善させている。

 もっとも西友がドンキの手中に落ちれば、過去の長崎屋と同様、好立地の店舗のみが残されることになりそうだ。

 ただ、まもなくユニー・ファミリマートHDの親会社となる伊藤忠商事の岡藤正弘会長の本音は、低収益のユニーをHDから切り離し、ドンキに引き取らせることだとされる。ファミリーマートからGMSの切り離しを狙う伊藤忠が、さらに西友というGMS大手を傘下に入れることが現実的といえるだろうか。

 そう考えると、買い手探しは難航が予想されるし、少なくとも、現行の西友のビジネスモデルが今後も継続されるとは考えにくい。苦境の小売業がネット通販に浸食されている今、西友という名の大規模・低収益GMSは、誰の出資を受けて、どのような道を歩むのだろうか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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