インテルが5Gに力を入れる理由の本音は
機器の買い替え需要と安定した半導体の売上
このあたりまでが建前の話。では本音は? というと、買い替え需要が生まれることを企業が期待しているからだ。
まず端末メーカー。新しいサービスが立ち上がるというのは、ユーザーには新しい端末(スマートフォン)を買い換えてもらうという意味でもある。
そうでなくても最近はスマートフォンの性能競争が一段落して、カメラ性能などで競うという頭打ち感の強い状況になっている。5Gに対応するというのはスマートフォンの基幹に関わる更新であり、これによって既存のユーザーが買い換えてくれるのは大きなビジネスチャンスになるわけで大歓迎である。
通信事業者にとっては、5Gによってユーザーの通信量がより増えてくれれば、それだけ設備に投資ができるし、なにより売上が増える。
ついでに当初は金額にプレミアを付けても許容される風潮があるから、ますます売上増に期待ができる。もっと言えば「5Gに向けての設備投資です」は株主や投資家に対しても説明しやすいし受け入れられやすい。
そして通信事業者に設備(ウン千万~ウン十億円のルーターなどだ)を納入している通信機器メーカーも大きな商機である。
5Gのサービスではバックボーンから基地局・アンテナまでほぼすべての設備が入れ替えになる。また4G/4.5Gでも部分的に導入されていたCloud RAN(Radio Area Network)という方式が5Gではほぼ必須になるため、基地局とアンテナのつなぎ方や物理的な位置まですべてが新しくなる。
またアンテナにしても5Gでは従来の周波数に加え、ミリ波と呼ばれる数十GHzの周波数が新たに利用されるようになる。このため従来とはまったく異なる半導体素子やアンテナ技術が必要になり、ここを得意とするメーカーが参入の機会を狙っている。
となると、こうした通信機器メーカーに部品を納入している半導体メーカーや測定装置メーカーなどにとっても、5Gは今後やってくる非常に大きなビジネスの機会となる。これを狙わないのはどうかしている。
最後にインテルの思惑は? というと、基本的には「通信機器メーカーに部品を納入している半導体メーカー」という位置づけになるのだが、それにしても力をいれまくっているのは、5Gに結構な投資をしていたからだ。
まずインテルは4G世代向けにスマートフォン向けチップセットを開発していたものの、このビジネスそのものからは撤退した。ただ5G向けモデムのビジネスはあきらめずに続けており、Qualcommと大喧嘩中のアップルが5G向けのiPhone用モデムをインテル製に置き換える予定とされている。
ということは、これだけで毎年1億台近い需要が発生することになる。ということでインテルからすれば5Gが早く立ち上がれば、それだけ早期に5Gモデムの売上がどっちゃりと発生することになる。
ちなみにこの5G向けモデムはアップル専用というわけではないようで、ということはアップルだけでなくインテルベースのノートPCやタブレットにも搭載することはありえる話で、より売上が増えるわけだ。
また従来から携帯電話の基地局やアンテナ部にはAlteraのハイエンドFPGAが大量に使われており、5Gでもこれは変わらないと思われる。ということは、基地局向けに大量のハイエンドFPGAのニーズが生まれることになる。
さらに言えば、通信事業者のバックボーン、それこそCloud RANを含む社内のネットワークにはXeonが、これまた大量に使われることになるわけで、こちらの需要もバカにならない。
ではどうしたら5Gがはやく立ち上がるか? もちろん5Gのサービスに必要な技術を早期に確立させ、対応する機器を作るという手間はあるにせよ、基本となるのは「エンドユーザーからのニーズ」である。
通信事業者の顧客(つまりわれわれ一般ユーザーだ)が「早く5Gを寄越せ」といえば、通信事業者は早期のサービスインを狙わざるを得ない。そのためには、5Gが素晴らしいということを我々ユーザーに認知させる必要がある。
インテルが韓国で開催された冬季オリンピックで5Gのトライアルを実施したというのも、まさしくこうした「エンドユーザーに5Gの素晴らしさを認知させる」ための方策である。
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