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氷だけ残ったコンビニのカウンターコーヒーに、一緒に買っておいたボトル型アルミ缶コーヒーをつぎ足すという飲み方も進み、アルミ缶需要は伸びていたが…… Photo by Ryosuke Shimizu |
「ペットボトルのコーヒーに缶がやられちゃって、今、アルミ業界は大変なんですよ」。あるアルミニウムメーカー関係者はため息をつく。
アルミ缶は、1971年にアサヒビールが缶ビールをスチール缶から総アルミ缶に切り替えて以降、軽さという特性からくる物流コストの削減メリットや商品棚への陳列のしやすさなどから、着々と飲料業界を席巻してきたアルミメーカーの“孝行息子”だ。
アルミといえば、軽量化を進める自動車への採用が注目されるが、実はアルミ缶向けの出荷量はばかにならないほど多い。日本アルミニウム協会によれば、缶材として板の形で出荷されるアルミは約43万トンと、自動車向けの2.5倍にも上るのだ(国内、2017年)。
ここ数年はアルミ缶がさらに増加した。きっかけは、14年に飲料最大手の日本コカ・コーラが缶コーヒーの容器をスチール缶からアルミ缶へ切り替えたこと。それまでは、菌の発生を防ぐための検査がしやすいといった理由で日本ではスチール缶が使われていた。
さらにこのころからキャップのできるボトル型アルミ缶コーヒーも爆発的に増えていった。事実、「昨年のボトル型アルミ缶の数量は、少子高齢化による需要減の懸念がある中、30億缶と、3年ほど前と比べ約1.5倍も増えた」(アルミメーカー国内最大手、UACJの東弘幸板事業本部営業第一部長)という。
「安心感」に敗北
ところが、今年に入ってその孝行息子の調子がおかしい。2~5月の缶材の出荷量が、前年同月の実績を4カ月連続で下回っているのだ。消費者の缶ビール離れもさることながら、ペットボトルコーヒーブームによるボトル型アルミ缶の停滞・減少が一因になっていると、アルミメーカー関係者は口々に語る。
ブームの火付け役は、缶コーヒーを飲まない若者や女性を狙って昨年4月にサントリー食品インターナショナルが発売し、わずか1年で3億6000万本を売り上げた「クラフトボス」だ。この大ヒットの要因の一つが、スタイリッシュかつ、中身が見える安心感を演出したペットボトル容器にあったことで、他の飲料メーカーがこぞって追随している。
おまけに今年6月にはサントリービールからペットボトルのノンアルコールビールが登場。アルミ缶の独壇場だったビールにまでペットボトル化が押し寄せる。
ペットボトルブームが続くようならアルミメーカーにとっては由々しき事態だ。アルミ缶の良さを訴える提案型の営業をするにも、「従来は製缶メーカーとのコミュニケーションが主だったが、場合によっては飲料メーカーにも食い込んでいく必要がある」と、東部長の危機感は強い。今年の夏は、アルミメーカー各社にとって試練の夏になりそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)
※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら
