このページの本文へ

トランプ大統領がかき回すOPEC「減産緩和」合意の舞台裏

2018年07月04日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
原油価格にトランプ大統領が影響を与えている
OPECと非OPEC加盟国は、7月1日からの減産緩和で合意した。しかし、しばらく原油価格は高値圏で推移しそうだ

 オーストリア・ウィーンで6月22日に開かれた石油輸出国機構(OPEC)の総会で、加盟国を中心とした産油国は7月1日から、昨年11月に合意した2018年末までの減産を緩和することに合意した。

 産油国が原油価格上昇の抑制を図ったのだが、増産幅が市場の予想より下回ったこともあり、OPEC総会明けの6月25日の国際原油価格(WTI:ウエスト・テキサス・インターメディエート)は、70ドル台(1バレル当たり。以下同)に突入した。

 実はOPEC総会前から、加盟国で産油国盟主のサウジアラビアを中心にイラン、ベネズエラ、非加盟国のロシアで、減産緩和を巡る目まぐるしい駆け引きが繰り広げられていた。

 その引き金を引いたのは、“あの人”。そう、トランプ米大統領にほかならない。

 今年に入って国際原油価格は60ドル前後で推移していた。しかしトランプ米大統領が5月、イランの核合意から離脱し、経済制裁を復活させると発表。原油生産量が減少しているベネズエラに加え、イランの原油輸出量が落ち込むとの観測から需給がひっ迫し、14年11月以来の高水準となる70ドルを突破した。

 原油価格を吊り上げた原因を作ったともいえるトランプ大統領。ただ、ちゃっかりやることはやっていた。サウジをはじめとするOPEC内の親米諸国に、供給不足になった場合に増産するよう求めていたのだ。

 それでもトランプ大統領は「原油価格は高すぎる。OPECがまた関与している」と総会前の6月13日にツイッターで言及し、さらにプレッシャーをかけた。

 その背景には、夏のドライブシーズンを前に米国では、消費者心理に影響を与える1ガロンあたり3ドルを超えたため、トランプ大統領が国民から批判を浴びないために予防線を張ったとの見方が強い。

 どこまでも自分優先のトランプ大統領の期待に応えようと、サウジは減産緩和に反対するイラン、ベネズエラを納得させるために、ロシアを引き入れた。

 サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子とロシアのプーチン大統領が並んでサッカーW杯の開幕戦を観戦する場面は象徴的だっただろう。中東情勢に詳しいインスペックス特別顧問の畑中美樹氏は「ロシアを前面に立たせて、減産緩和をリードする狙いがあった」と解説する。

 サウジはイラン、ベネズエラが納得できるよう、総会のコミュニケには具体的な増産量を盛り込まない玉虫色の合意を取り付けた。

あと1年は高値圏で推移

 しかし、市場の鎮静化を図ったOPECによる減産緩和合意は、効果が上がっていない。7月2日時点で73ドル台での取引が続いている。

 原油価格上昇の流れを作っているのは、またもやトランプ大統領だ。日本をはじめ世界各国にイラン産原油の輸入量を「ゼロ」にするよう求めたことが大きい。トランプ大統領は、サウジにさらに増産するよう圧力をかけている。

 ただ困ったことに、サウジがさらに増産すれば、世界的な原油の余剰生産能力、つまり天災や紛争などが起きた場合にすぐに対応できる生産能力が低下し、市場に石油が出回らなくなる恐れが出てきてしまうのだ。

 石油天然ガス・金属鉱物資源構(JOGMEC)によると、中期的にはイランの制裁とベネズエラの生産量減少を補う増産が行われた場合、世界石油需要に占める余剰生産能力の割合は2.2~2.4%程度。これは、150ドル近くまで上昇した08年前半の時期を下回る水準だ。

 頼みの米国産シェールオイルは、輸出インフラが整っていないため、市場の安定化に資する量が出回るのは19年後半との見方が多い。

 JOGMECの野神隆之主席エコノミストは、原油価格の見通しについて「55~75ドルで推移する。石油供給途絶の懸念は根強く、短期的に下がることはあっても、上振れしやすい」と分析する。

 翻って、日本の産業界でも大きな恩恵を受けそうなのは石油元売り業界だ。

 17年度は大規模な業界再編で石油製品の流通構造改革が進み、市況も改善。原油価格も高値で推移し、各社とも軒並み過去最高益をたたき出した。関係者の見立て通りならば、今年度も我が世の春を謳歌できそうだ。

 しかし、のんびりしている場合ではない。国内は人口減とEVシフトなどにより、ガソリン需要は減少していく見込みだ。

 堅調な需要が見込めるアジア・太平洋で競争を勝ち抜くために、製油所の再編など体制を強化しておくに越したことはない。

(週刊ダイヤモンド編集部 堀内 亮)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ