このページの本文へ

野球界がサッカーを見習って今すぐ改めるべき5つの問題点

2018年06月24日 06時00分更新

文● 西尾典文(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
国内で最もメジャーなスポーツである野球は根本的な部分では変わっていないことが多い

 6月14日に開幕したサッカーのワールドカップ。サッカー後進国であった日本でも代表チームの出場が重なるようになったこの20年で、オリンピックと並ぶ世界的なイベントであることはすっかり定着した印象を受ける。

 国内で最もメジャーなスポーツである野球もこの20年であらゆる出来事が起こったが、根本的な部分では変わっていないことが多い。そこで今回はサッカー界で導入されているものの中で、今すぐにでも野球界が取り入れるべき制度、慣習のポイントについて5点ほど提言してみたい。

指導者育成のシステム化が急務

 近年、育成年代の野球人口の減少が叫ばれることが多いが、そこで問題になっている指導者の育成がひとつめのポイントになる。

 サッカーの場合、指導する選手の年代、対象に合わせて細かくコーチのライセンスが分かれており、指導者をサポートする体制が構築されている。一方で野球に関してはそのような統一された仕組みは存在せず、極端なことを言えば知識がなくても突然指導者になれてしまう現状が続いているのだ。

 プロ野球の世界でも高橋由伸監督(巨人)、井口資仁監督(ロッテ)などは現役を引退してすぐに監督となったことがその典型例である。

 選手は、地域の少年野球やリトルリーグなどのチームに入団するところからスタートすることが多いが、指導者のレベル差は非常に大きな問題となっている。

 勉強熱心でさまざまな知識を持っている指導者がいることも確かだが、自身の経験だけを頼りに指導しているケースもまだまだ多い。野球をやろうという子ども達にとって、ある程度統一化された指導方法が普及していないことはマイナス面でしかない。一刻も早く、指導者育成の仕組みを整備する必要があるだろう。

星野仙一氏も推していた野球くじでの財源確保と「黒い霧事件」

 指導者育成や普及活動の話になると出てくるのがその財源の確保。これがふたつ目の課題だ。

 解決策として提案したいのが、「toto」のような野球くじの導入だ。この話題も過去からよく議題に上がっており、2015年にスポーツ議連からの要請を受けて検討したが、プロ野球のオーナー会議では否決。2018年2月には、早ければ2019年度からの導入を目指しNPBとプロ12球団が再度検討を開始したが、進展がなく当面は見送る方向だと報じられている。

 野球くじの導入で必ず話題となるのが1969年に野球賭博に関する八百長が発覚した「黒い霧事件」の影響だ。野球くじが導入されると、その利益を巡ってまた八百長が行われるのではないかという疑念が球界には根強く残っており、そのことが導入に踏み切れない一因となっていることは間違いない。しかし、これだけサッカーの世界で根付き、収益を生み出す仕組みを過去の八百長を原因に導入しないというのは大きな機会損失である。

 野球はサッカーとは異なり、ピッチャーによる勝敗の比重が大きいため、八百長が起こりやすいという意見もあるが、複数の試合を組み合わせるものにすればそれも防ぐことができるだろう。2018年1月に亡くなった星野仙一氏は野球の普及を支える、野球くじの導入を強く提言していたが、その遺志を継いで推し進める人物が出てくることを期待したい。

サッカー「天皇杯」の野球版

 エンターテインメントの部分で導入を検討してもらいたいのがサッカーで行われている「天皇杯」である。サッカー界も元々は実業団のJSLと大学選手権の上位チームによって行われていたが、イングランドで行われているFAカップをモデルに1972年度からオープン化され、J1とJ2に所属しているプロチームと、各都道府県の予選を勝ち抜いたアマチュアチームによって日本一が争われている。

 2015年からは過密日程の問題で高校生年代のチームは出場不可となったが、かつては市立船橋(千葉県代表)がJ1所属の横浜Fマリノスを相手に、PK戦にまでもつれ込む(PKの結果は1対4で敗戦)という接戦を見せている。また今年も関西学院大(兵庫県代表)がJ1のガンバ大阪を破る大番狂わせを演じて話題となった。

 野球でもプロとアマチュアが交流的な意味合いで対戦したり、プロが社会人野球の大会に出場していることはあるものの、プロ側は二軍か三軍のメンバーであり、ベストメンバー同士の試合は行われていない。アマチュア側にとってみれば交流戦でもレベルの違いなどを感じることはもちろんあるだろうが、真剣勝負で得られることの方が多く、プロ側も負けられないプライドを見せる良い機会になるはずだ。

 ちなみに2015年6月29日にはその年のユニバーシアードに出場する大学日本代表チームと若手選手で構成されたNPB選抜が壮行試合を行ったが、平日にもかかわらずスタンドには多くの観衆がつめかけた。そして田中正義(創価大→ソフトバンク)はプロから7者連続奪三振をマークし、吉田正尚(青学大→オリックス)も特大の一発を放つ活躍を見せ、一躍その名を全国の野球ファンに知らしめることとなった。

 甲子園のスター選手やアマチュアトップレベルの選手がプロを相手にどれだけのプレーを見せるかを見たいというファンは多いはずで、興行としても大きな効果を見込めることは間違いないだろう。

 なお野球の「天皇杯」は東京六大学のリーグ戦で優勝したチームに贈られている。日本の野球界の発展において東京六大学が果たした役割は確かに大きいが、これだけ広く野球が普及した現在も、一つの大学野球連盟の優勝チームに天皇杯が贈られているというのは時代遅れという感は否めない。そのことも含めて、野球版の真の天皇杯を改めて検討すべきだろう。

年代のカテゴリーを実力に応じて飛び級できる仕組み

 プロとアマチュアが戦う場と同様に不足しているのが年代のカテゴリーを超えた交流だ。2011年に野球の日本代表チームを常設化し、各年代の代表チームの名称も「侍ジャパン」で統一されたことにより、代表チームとしての機能は以前よりも改善してきている。しかしそのカテゴリーを超えて代表入りするようなケースはほとんど見られない。

 かつて北京五輪のアジア予選に、当時大学生だった長谷部康平(元楽天)がアマチュアから唯一選出された例はあるものの、必要なのはもっと下の年代での『飛び級』ではないだろうか。特に育成年代では成長に対する個人差が大きく、同じ年齢でチームを構成していてもプレーのレベルに差が出ることが多々ある。そして成長が早い選手はより上の年代とのプレーを経験することでさらにレベルアップする可能性もあるのだ。

 サッカーの場合で言うと、久保建英(FC東京)が中学3年生ながら一つ上のカテゴリーであるU-18のチームに飛び級で昇格し、今ではトップチームでもプレーしているが、野球ではそのようなことは認められていない。野球はサッカーのように高校年代にクラブチームがなく、学校という組織にどうしても縛られてしまうということはあるが、代表チームに限らずあらゆる場で違う年代とプレーすることはプラス面も多いはずである。

 2018年の選抜優勝校である大阪桐蔭は春の近畿大会の期間中に2017年秋の大学日本一である日本体育大と練習試合を行い話題となったが、大学と高校、高校と中学などでもっと交流できるような仕組みを検討すべきだろう。

日本サッカー協会のような統一組織が野球界にはない

 ここまでいくつかの例を挙げたが、どの案も導入するためにネックとなるのは野球界全体を一気通貫で束ねる組織がないことである。サッカーの場合日本サッカー協会が全てのカテゴリーを束ねる組織として存在しており、代表チームから育成年代のクラブユース、中学・高校サッカーまでを管轄できている。一方の野球はプロとアマチュアの間の隔たりが大きく、またアマチュアの中でもカテゴリーによってばらばらで、野球界全体で何かを決めるという時に機能する組織が存在していない。

 日本の野球が学生野球から発展したことと、プロがアマチュア選手を過剰に引き抜いたことでアマチュア側がプロ野球を敵視したことが、現在のような状況を生み出した原因である。が、いつまでも過去に縛られているのはナンセンスである。

 日本のサッカー界にも当然多くの問題があり、違うスポーツだから比較するべきではないという意見もあるが、この統一化された組織の有無というのは最も大きな違いであり、野球界がサッカー界を見習うべき点であると言える。

 現在のプロ野球界は近鉄球団の消滅による球界再編問題から、危機感を持ったパ・リーグが改革を推し進めたことで変化した部分が大きい。かつては「人気のセ、実力のパ」と言われていたが、リーグ全体でマーケティング活動を推し進めた結果、現在では人気の面でもセパの差は小さくなっている。それもリーグ存続の危機感が突き動かした結果である。

 そして野球界の現状を見ると育成年代の野球人口減少に現れているように、あらゆる面で大きな改革が求められる時期に来ていることは間違いない。今回提言した内容が一つでも実現し、野球界全体が新たな局面に向かうことを期待したい。

(ベースボールライター 西尾典文)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ