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「新日鐵住金」が「日本製鉄」になる意味、進藤孝生社長が語る 進藤孝生(新日鐵住金社長)特別インタビュー

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新日鐵住金社長 進藤孝生
「『しんにってつじゅうきん』の『しんどうたかお社長』」とダブルで言い間違えられることもあり、「もう訂正しなくていいや」と悟りの境地に達することがあるという Photo by Kazutoshi Sumitomo

新日鐵住金が、じわり変化し始めている。方針転換して海外の高炉メーカーの買収に動きだしたかと思うと、突如、商号変更まで発表。「鉄を極める」方針を掲げながらも、グループ一丸となってマルチマテリアル化に臨む構えも見せている。進藤孝生社長に胸の内を聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)

──5月16日に、来年4月から「日本製鉄(にっぽんせいてつ)」に商号変更すると発表しました。新日鐵住金は2012年に新日本製鐵と住友金属工業が合併してできた会社ですが、新商号は住友のにおいがしなくなる。住友金属出身者の士気が下がるのでは?

「住金」には住友の名残があるので、住友金属のOBの方を中心に……友野さん(友野宏・新日鐵住金前社長。住友金属出身)は言わなかったですけれども、「『住金』って言葉がなくなるのは寂しいなぁ」とおっしゃる方はいました。

 そういう方には、「日本製鉄っていうのは新日本製鐵の『日本』じゃないんです。住金だけでなく、新日鐵もなくなります。だから、もう少し上の概念としてぜひ理解してください」とお願いしました。

──「上の概念」とは?

 われわれは来年、連携強化のために日新製鋼を完全子会社化します。今年6月にはオバコというスウェーデンの特殊鋼メーカーも買収し、それに伴い、山陽特殊製鋼への出資比率の引き上げも検討しています。いろいろな会社の組織的DNAが新たに加わるとなると、もう少しインクルーシブ(包摂的)な商号が必要です。

 また、今後伸びるのはやはり中国、東南アジア、インドなどの海外市場。これらの国は自国の成長のために自国産化(自国内での鉄鋼生産)を求めてくる。米国のような保護主義化の動きもあります。こういう、世界各国の生産体制をより深化させていくべき大きな流れの中では、日本発の製鉄会社だということがクリアに伝わらなくてはなりません。

 具体的に考えていったら、「日本」だと。瑞穂でも大和でもよかったんだけど、まぁニッポンでしょうね、となったわけです。

──「しんにってつじゅうきん」と間違えられちゃうこともありましたしね(笑)。

 結構多かった(笑)。合併から5年たち、うまく融合も進んだので、変更するにはいい時期かなと。

 12年に合併した後は、中国の過剰能力・安値輸出が極大化して市況が落ち込んだ上に、石炭、鉄鉱石という主原料が高騰しましてね。逆に原油価格は暴落して、エネルギー関係の需要が相当落ちた。14~15年の環境を考えると、この合併がなければ大変な時期を迎えていました。

 一方で、そういう環境だったからこそ、両社の業務システムや営業戦略の統一を早く進めなきゃ生き延びられないという共通認識が生まれた。それが融合を加速したという面もあると思います。

──6月下旬に、8人の代表取締役が全員、新日鐵出身者になる予定です。「対等の精神」という合併時の建前がある中、どうマネジメントしてきたのですか?

 何においても、機械的な数のバランスを保とうとか、妥協して足して2で割ろうとか、そういうことは絶対にやらない、“仕事最優先”を心掛けてきたつもりです。

──先ほどオバコ買収の話が出ましたが、世界最大の鉄鋼メーカーであるアルセロール ミッタルと共同で、破産したインドのエッサール スチールの買収にも動いています。どちらも上工程(半製品である粗鋼を造る)を持つ鉄鋼メーカーです。従来は、海外には下工程(粗鋼から鋼材を造る)しか持たない主義だったのでは?

 それはその通りでしてね。というのも、上工程はどこで造ってもコスト構造は変わらない。主原料は限られた調達先からドルベースで買ってくるわけですから。しかも、上工程は世界的に過剰な能力を抱えていました。

 ところがここにきて自国産化と保護主義化が進んだ。だからこその戦略変更です。すでに設備を持って生産し、キャッシュを創出している企業に資本参加するなら、投資の回収期間も短くて済みます。

 エッサールについては製鉄所を見に行きましたけど、本当に立派な設備でしたよ。だから、ちょっと考え方を変えれば十分稼げるようになると思います。

しんどう・こうせい/1949年9月14日、秋田県生まれ。一橋大学経済学部卒業、米ハーバード大学経営大学院修了。新日本製鐵出身。経営企画、総務畑が長い。社長就任5年目。温厚な人柄で知られる。 Photo by Kazutoshi Sumitomo

──軽量化を志向する自動車業界では、マルチマテリアル化が進んでいます。新日鐵住金は「鉄を極める」と鉄鋼に固執していると対応に遅れるのでは?

 われわれの強みは、いろいろなものを鉄中心で造ってきた経験があるからこそ、素材の利用技術や、各種部品に必要な特性に関する知識をたくさん蓄積している点です。それらを使えば鉄プラスアルファを提案できる。これがわれわれのマルチマテリアル化への対応です。

 4月には、自動車各社の窓口である薄板事業部に自動車材料企画室もつくりましたしね。グループ会社も巻き込みながら、炭素繊維やアルミ、その他の素材を含む材料の利用を検討していきます。

──今秋に新日鉄住金化学と新日鉄住金マテリアルズを統合します。

 両社とも先端技術を極める方向にあり、共通のお客さまも非常に多いんです。だから研究開発や営業のメリットを考えると統合した方がいい。本体の自動車鋼材部隊とマルチマテリアル化で連携する場合も、効率的に動けるのかなと。

──品質不正問題で揺れる神戸製鋼所へのさらなる資本参加は検討していますか? 同社は自動車向けのアルミに強く、溶接技術も魅力的です。

 それはちょっとまぁ、何とも言えないわね。でも、神戸製鋼は独立独歩でいくでしょう、たぶん。

──20年度までの中期経営計画では事業投資資金を6000億円も用意しています。鉄以外の素材メーカーを買収する可能性は?

 もし化学とマテリアルズの統合会社などが必要だというなら、提携などは十分にあると思います。新日鐵住金本体は、あくまでも鉄を極める方針です。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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