マイクロソフトがGitHub買収、VSTSとの技術統合を進める
「MSはマイクラもLinkedInも大事にしている。だから買収に合意した」GitHubのCEO
2018年06月05日 15時00分更新
既報の通り、米国時間2018年6月4日、マイクロソフトがGitHubの買収を正式に発表した。買収金額は75億ドル、2018年中に買収を完了するとしている。
6月4日、GitHubのCEO/共同創業者のChris Wanstrath氏も買収合意を発表する公式ブログを投稿。「10年前、GitHubをローンチしたときには、(“マイクロソフトがGitHub買収”の)ヘッドラインを想像することができなかった。Gitは強力ながらニッチなツールであり、“クラウド”は空にあるもので、そしてマイクロソフトはまったく異なる企業だった」と振り返った。
しかし今は状況が変わり、「Gitは最もポピュラーなバージョン管理ツールになり、クラウドといえばだいたいコンピューターを意味するようになった」とWanstrath氏。そしてマイクロソフトはGitHub上でオープンソースに最も貢献している企業になった。「マイクロソフトが開発してオープンソース化したVisual Studio Codeプロジェクトだけでも数百万人の開発者に親しまれており、またVisual Studio CodeはGitHubのElectronプラットフォームを使って構築されている」(Wanstrath氏)。
今回、買収に合意した理由についてWanstrath氏は、「Git LFS、Electronのプロジェクトでの協業を通じてマイクロソフトのチームを知ることができたこと」「MinecraftとLinkedInの買収に成功し、買収したビジネスの成長に対して真剣であること」「Azureの成長」を挙げている。「何よりも、ソフトウェア開発の次の10年を見据えたとき、GitHubとマイクロソフトの将来ビジョンが一致していたことが大きい。両社とも、ソフトウェア開発はより簡単に、よりオープンになる必要があると信じている」(Wanstrath氏)。
GitHubとマイクロソフト開発ツールの技術統合が進む
Wanstrath氏が言及したGit LFS、Electronのプロジェクト以外にも、libgit2、GVFSなどのオープンソースプロジェクトでマイクロソフトとGitHubは長年にわたって技術協力してきた経緯がある。
先月の「Microsoft Build 2018」でも、Visual Studio App CenterとGitHubとの統合が発表された。Visual Studio App Centerは、iOS/Android/Windows/macOSアプリケーションのビルド、テスト、配布、監視を行うサービス。GitHubとの統合により、GitHubレポジトリ上のモバイルアプリケーションのソースコードに対して、Visual Studio Codeによるビルド、テスト、配布のCI/CDが可能になった。
マイクロソフトによるGitHub買収完了後は、このようなGitHubとマイクロソフト製開発ツールとの技術統合が加速すると予想される。例えば、VSTS(Visual Studio Team Services)やTFS(Team Foundation Server)といった開発ツールはすでにGitHubと連携して使うことができるが、6月4日にMicrosoftのVisual Studio Team Services(VSTS)チームが投稿した公式ブログによれば、買収完了後、「VSTSとTFSですでにホストされているGit、TFVCバージョン管理ソリューションと同等のコードトレーサビリティ機能を、GitHubで使うVSTSとTFSでも提供していく」という。
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GitHubのWanstrath CEOは、マイクロソフトがMinecraftとLinkedInの買収に成功し、買収したビジネスの成長に対して真剣であることを買収合意の理由の1つに挙げた。買収後、Minecraftは教育機関向けOffice 365の主要コンテンツとして大事に扱われており、LinkdInもDynamics 365と統合して新しい営業/人事分野のソリューションを生み出している。
Minecraftの買収額は25憶ドル、LinkedInの買収額は262憶ドル、また、2011年に買収したSkypeは85憶ドル。これを鑑みると、これまでマイクロソフトがリーチできていなかったOSS開発者への強力なリーチを得る今回のGitHub買収は、決して高い買い物ではないだろう。