このページの本文へ

麻倉怜士が、RETISSA Displayを体験

夢の「網膜投影」にギークはもちろんAVマニアも注目すべき理由

2018年05月30日 11時00分更新

文● 麻倉怜士、ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

映像も背景も両方しっかりとらえられる

麻倉 民生機器は7月以降に販売開始とのことですが、医療用機器の出荷計画は?

手嶋 医療用機器としての認証を取れるのは2019年ごろになる見込みです。製品化はそのあとですから、2019年後半ごろになるのではないかと思っています。それまでは同じ技術を使った民生機を先行してローンチしていきます。民生機器ではARやスマートグラス的な活用方法に合ったフォーカスフリーの部分をアピールしていこうと考えています。

麻倉 (実際にメガネを掛けながら)確かにどこを見てもピントが合いますね! 映像に集中していたら、周囲の人物が見えなくて戸惑うといったことがありません。

手嶋 掛けて体験いただけば分かると思いますが、映像の後ろに透けて見える背景と映像の両方にピントが合うと思います。映像を見ながらでも、ハッキリご自身の手や周囲にいる人物の表情が見られます。民生用のRETISSA DisplayはHDMIで入力した映像を網膜に投影するというシンプルな機能のみで、いまはiPadから映像を出力していますが、例えば電子書籍を表示した場合、その文字が手のひらの上でも壁の上でもハッキリと見えるはずです。ここが既成のARグラスではなかなか難しいことだと思います。固定の光学的距離にピントを合わせてコンテンツを見ると、目の前に実視界が広がっているのに、実際にピントが合うのはコンテンツの位置のみになってしまうためです。網膜ディスプレーは映像が視界に自然と溶け込む技術と言えます。

麻倉 確かにARにはもってこいの技術です。

手嶋 ただし弱点もあり、目をそらすと映像が消えてしまいます。

麻倉 目をそらすと映像が切れるのにはいいところと悪い面があって「消せる」ともいえるし、「消えてしまう」とも言えますね。

手嶋 はい。仮想スクリーンは常にコンテンツが出ているため視界を奪ってしまいます。しかしRETISSA Displayでは目をそらせば情報を消すことができます。ここはフォーカスフリーを実現するためのトレードオフとなる部分で、瞳孔の中心に光を通す仕組みのメリットでもあり、デメリットでもありますね。将来的にはアイトラッキングを実装して、こういった問題を解決できるかもしれません。

麻倉 投影サイズを決めるにあたっての考え方は?

手嶋 バランスを重視しました。720p相当の解像度がありますが、画角を広げると、視野角あたりの解像度が下がってしまいます。あまり広げすぎると画面の端を意識して自然と眼球が動き、像が消えてしまいます。そのため画角は25度ぐらいにしています。

映像ではなく実体を目の当たりにしている感覚

麻倉 体験した感想としては、テレビやスクリーンを見に行くという感覚ではなく、自然に向こうから来て「空間に浮いている」感じがあります。不思議に人工的な感じがしません。

手嶋 RETISSA Displayは、実視界の中に見せたい映像を割り込ませ、上書きするデバイスなのです。ディスプレーなど二次的なスクリーンに映像を投影してそこに目のピントを合わせてもらう必要がない。今までの見え方とは全然違うのではないでしょうか?

麻倉 RGBの成分が立っているということは、色がきれいにみえるということでもあります。スペクトル上のサイドバンドが少ないから色がピュアです。これでぜひ映画を見たいですね。(視聴して)液晶や有機ELを使った他社のスマートグラスと比べて、見え方が直接的というか、はっきりしますね。パキっとしているというか、シャープで際立っている印象です。やっぱり3色発光しているせいかな、色もいいですね。

手嶋 色再現性は液晶より高いです。細かな情報についても、野球中継のスコアボードぐらいなら、なんとかみられると思います。レーザープロジェクターはスクリーンに投影するため、反射光の干渉によるチラツキの問題(スペックル)が出てきますが、レーザーを直視するためその問題もありません。ここも特徴ですね。

麻倉 確かにつぶつぶはなかったですね。自然な画です。

光は室内の照明より弱く、危険は少ない

麻倉 素晴らしい技術ですが、やはり気になるのは健康面ですね。レーザーと聞くだけで、網膜が焼かれてしまうのではないかと不安になってしまいます。

手嶋 世の中にあるレーザーというと、どれも高効率・高出力を目指していますが、ここでは目に対する安全性を考慮した弱くて効率のいいレーザーを開発しています。光の強さとしては、会議室の照明で目の中に飛び込んでくる光の強さとほぼ同じか弱いぐらいです。これは実際に実験した結果に基づいたものです。小さな点で面を描くため、レーザーの照射位置は常に動いていますから、単位時間当たりのエネルギーとしてはさらに弱くなります。

麻倉 なるほど。安全性は担保されているわけですね。少し周囲がにじむ部分印象もありましたが……。

手嶋 ここはモジュールの調整次第で改善できる部分となります。

麻倉 あとは、視界の中にすこしもやもやしたものが入ることがあります。これは何ですか?

手嶋 飛蚊症ですね。誰しも目の中には粒子状の物質などが浮かんでいるのですが、網膜投影するとこの影が映りやすくなります。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン