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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第214回

見逃すことを恐れるFOMOとそれを楽しむJOMO、SNS時代にどう生きる

2018年05月23日 16時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

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JOMOを掲げるGoogle

 どこかの石油会社のようですが、先だって開催されたGoogle I/O 18の基調講演でサンダー・ピチャイCEOが紹介したキーワードです。お察しの通り、FOMOが「Fear~」でしたので、JOMOは「Joy of missing out」の略。つまり見逃してしまうことを楽しもうというわけです。

 Googleは最新のOSのAndroid Pに、FOMOを防ぐ機能を提供しようとしています。

 スマートフォンそのものや個別のアプリを1日の中でどのように利用しているのかという統計情報をユーザーに提供したり、1日の使用時間制限を知らせるタイマーを設定したり、就寝時間になると画面が白黒になる機能を提供する予定です。

 たとえば、就寝時間を22時に設定すれば、夜ベッドに入ってからSNSを見ていて時間を忘れて睡眠時間を削るということもなくなります。あるいはFacebookの1日の使用時間を1時間に設定すれば、用もないのにだらだらとタイムラインを見たり、「いいね」を押して回ることもなくなるでしょう。

 FOMOを防ぐことが、どのようにして「JOMO」につながるのかについてはさほど腑に落ちてはいないのですが、考えてみてもいいのではないでしょうか。

 前述のように、SNSで自分だけ見逃すことが損失だと感じるから恐れにつながり、飲み会でもスマホを見続けてしまうわけですよね。自分がいない場所で起きていることを見逃すのではないかと必死になって、自分がいる場所のことを見逃していることに気づけていないのです。

 その点で言えば、JOMOは筆者にとっては非常に納得がいく言葉と言えます。

 人と違う経験の中から物事を考えよう、というテーマを持っている筆者にとっては、みんながいる場所の話はみんながフォローしてくれるから、目の前のことに集中しようというアイディアに行き着くのです。

 そう考えると、JOMOの考え方においては、自分の経験を十分に楽しもうとするし、他人の経験やその人の話に対して信頼を置いたり、自分が得られない経験をした人をより尊重しようとするでしょう。

 ウェブを流れてくるものが単なる情報ではなく、誰かの経験だと思えるようになれば、メディアですらたびたび横行する記事や写真の盗用もはばかられるのではないかと思うのですが。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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