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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 第47回

【後編】オレンジ代表 井野元英二氏インタビュー

『宝石の国』のヒットは幸運だが、それは技術と訓練と人の出会いの積み重ね

2018年06月03日 12時00分更新

文● 渡辺由美子 編集●村山剛史/アスキー編集部

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© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会

『宝石の国』は人に恵まれた作品
積み重ねた末に起こった奇跡だった

―― 今回、『宝石の国』で最も良かった点はどういったところにありましたか?

『宝石の国』のヒットは、これまで積み重ねてきた技術・訓練・人の出会いの賜物だと井野元氏は語る

井野元 人に恵まれました。京極監督もそうですし、プロデューサーの和氣(澄賢)が入ってくれて、和氣経由で武藤(健司)、松見(真一)という演出が入ったのも、本当に幸運でした。

 そして主演、フォスフォフィライト役の黒沢ともよさん。フォスは彼女以外に考えられない配役だと思います。音楽方面でも素晴らしい方が集まってくださって、通常のTVではやらないような劇場寄りの作り方をしてくれているんです。音楽もバラエティーに富み、オーケストラも使ってくれて、非常に高級感のあるものになりました。

―― なぜそうした頼もしい方々が集まったのだと思われますか?

井野元 奇跡のようなところがありますよね。そのあたりは制作管理の半澤から説明してもらいます。

オレンジ 制作管理 半澤優樹氏 オレンジ自体、社員が増えたのがここ数年なんですね。2012年に社員は15~6名だったのですが、その時期からCGを使うアニメ作品が増えて、2013~2014年には30~40名になり、『宝石の国』の制作に入った2016年には60~70名に上り、制作期間中、『宝石の国』に携わりたいということで入社した人も多く、その後も増え続けて、現在では約100名の大所帯になりました。

―― 半澤さんから見て、なぜ『宝石の国』に優れたスタッフの方が集まったのだと思いますか?

オレンジ 制作管理 半澤優樹氏 オレンジならではの特徴としては、井野元が会社の経営者であり、かつ現場のトップクリエイターであるという点があります。

 井野元はチーフディレクターという統括する役職ですが、いちクリエイターとしての技術もうちではトップです。クオリティーも作業スピードも、全クリエイタースタッフを引っ張っていっています。自分もそうですが、みんな井野元の仕事に惹かれてオレンジに来て、直接指導を受けてスキルも上がっていくのだと思います。

―― ありがとうございます。やはり、これまでの積み重ねが人を呼んだのですね。

井野元 「『宝石の国』だったらやりたい」というスタッフも集まってくれました。そう思ってくれる方がたくさんいて本当によかったです。

 そういう意味では、あらゆる人が努力して、あらゆる幸運に恵まれ、かつ、うまく走り抜くことができた。正直、私が今まで関わった作品を見回しても、こんなに幸運が積み重なった作品ってあっただろうか、ぐらいのことでして。

 一歩間違えたら綱渡りに近いんですけれども、パズルがすべてはまるがごとく終わることができた。初めての元請けでこんなに幸運に恵まれて、かつ、作品のセールスも良くて、こんな良いことがこれからあるのだろうかというぐらい、うまくいって……。今後作るものが、『宝石の国』を超えられるのかという側面が若干ありますけれども(笑)、本当にやってよかったなという作品になりました。

 幸運というのは、技術と訓練と人の出会いの積み重ねによって生まれるものなのかなと思います。

―― どうもありがとうございました。

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