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「神戸製鋼所や三菱アルミニウムなど、競合が品質不正で混乱している。本当は勢力拡大のチャンスなのに」。2013年に古河スカイと住友軽金属工業の統合で誕生したアルミメーカー国内首位のUACJの関係者は、こうため息をつく。
UACJが、ライバルとは別の事情で揺れている。2月27日、6月以降の役員人事を発表したところ、筆頭株主の古河電気工業が猛反発。同日に反対表明のリリースまで出されたことで、人事案を見直す羽目に陥っている。
古河電工が問題視しているのは、副会長に就く岡田満社長(古河スカイ出身)と山内 重德会長(住軽金出身)が代表権を持ち続けること。そして古河電工からの社外監査役を“排除”したことだ。石原美幸取締役(住軽金出身)が代表権のある社長に就くことについては異存はないとするものの、古河スカイ関係者からは住軽金の影響力拡大を懸念する声も聞こえる。
積極的過ぎる投資を懸念
「UACJは上場企業。自主性は尊重しなければならない」(天野望・古河電工取締役)としつつも、古河電工の懸念は消えない。
中期経営計画で掲げた17年度の売上高、利益目標は未達に終わる見込み。積極的な投資戦略にも不安が募る。UACJの売上高は6000億円規模だが14年以降、国内外の設備投資等に合計約1400億円の資金投入を決めている。
「財務基盤がさほど盤石でない」(天野氏)中での矢継ぎ早の投資決定に、「ある程度成果が出るのを待つべき」と、古河電工や、同じく大株主である新日鐵住金の社外監査役はたびたび進言してきた。
今回の人事には、新日鐵住金からの社外監査役も入っていない。最後のブレーキ役を担う社外役員に信頼の置ける人物がいなくなるばかりか、会長、社長の両トップが代表取締役として残る──。古河電工にしてみれば、到底受け入れられる人事ではなかった。
むろん、古河電工はUACJから人事について事前に提示されていた。その時点でUACJには反対の意向を伝えており、2月末の発表前日には古河電工から申し出てUACJと面談の機会も持っている。しかし翌日、独立性の確立にこだわるUACJは、“原案”のまま人事を発表した。
「もっときちんとコミュニケーションを取っておくべきだった」と、UACJ社内にもさすがに反省の色が見えるという。
本件には古河電工のみならず、新日鐵住金もが顔をしかめている。その上ここにきて、「物言う株主」として知られる旧村上ファンド出身者が設立したファンドがUACJ株式を買い増し、第2位株主についた。経営の混乱が長引けば厳しい追及は避けられそうにない。
早期の事態収束には、現会長、現社長の代表権返上や社外役員の変更など、人事の大幅修正が不可避な情勢だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)
※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら
