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トランプの鉄鋼関税、日本は直接の影響小でも楽観できない理由

2018年04月09日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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トランプ米大統領(中)はアルミニウム製品にも10%の高関税を課した。同製品でも鉄鋼製品同様、景気減速による中国製アルミの海外流出が懸念されている Photo:REUTERS/アフロ

 トランプ米大統領の強烈な米国第一主義の政策を前に、鉄鋼業界にそこはかとない不安が広がっている。

 3月、トランプ大統領は、米国が輸入する日中などの鉄鋼製品に対する25%への関税引き上げを決行。さらに知的財産権の侵害を理由として、中国製品に対し幅広く高関税を課すことも決定した。

 日本の鉄鋼メーカー関係者は、これら米国の輸入制限によって受ける直接的な影響は限定的だと口をそろえる。日本で生産する鋼材の輸出量のうち、米国向けは2%程度しかないからだ。

 また、その2%の製品は、油田などに使われるパイプといった超高品質の製品だ。顧客が調達先を変えるのは難しく、課税分は価格に転嫁できるとみているのだ。

 しかし、米国によるこの強行措置は、それほど楽観視できるものではない。というのも、見過ごせないレベルの間接的な影響が降り掛かってくる恐れがある。

「つらい『鉄冷え』が再来するのではないか」(鉄鋼業界関係者)。実は鉄鋼業界は過去数年にわたり、中国による大量の安値輸出を“諸悪の根源”とする市況の下落に苦しめられていた。

 国際社会の冷たい視線によって中国が減産し、供給過剰が解消の方向に動きだしたのがつい1~2年前のこと。にもかかわらず、米国が敷いた広範囲にわたる輸入制限のせいで中国の景気が減速すればどうなるか。国内で消費し切れなくなった中国の鉄鋼製品が、アジアを中心とする海外市場へまた流出してしまう。

 日本の鉄鋼製品は高品質のものばかりで中国製品とはバッティングしないことも多いが、それでも市況全体が下落すれば、やはり日本の鉄鋼メーカーのマージンも削られざるを得ない。

値上げ交渉にも影響

 問題は中国だけではない。韓国の鉄鋼製品の海外流出についても懸念が深まっている。

 韓国は今回、鉄鋼製品の25%への関税引き上げの対象から除外されたが、その代わりに米国向けの鉄鋼の輸出量を3割減らすという数量枠を受け入れている。締め出された鉄鋼製品が海外にあふれれば、それによってもまた市況が下落してしまう。

「だからこそ2017年度中に、(自動車メーカーなどの)顧客に値上げ条件をもっとのんでもらうべきだった」(新日鐵住金幹部)

 設備に再投資する原資を得るべく、1トン当たり5000円の値上げに動いていた新日鐵住金にとっては踏んだり蹴ったりだ。顧客によって値上げ交渉は道半ばだというのに、韓国の鉄鋼製品が日本に流れてきたら、交渉が難航を極めることになる。

 日本の鉄鋼メーカー各社の17年度の業績は、経常利益率が5%前後の見込みと芳しくない。再びやってきた鉄冷えの恐怖に苛まれている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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