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エネオスで元売りからの配送料値上げ、特約店が憤懣やる方ない訳

2018年04月03日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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「エネオス」を展開するJXTGエネルギーの配送体制は、今冬、大幅な配送遅延が頻発し、大混乱に陥った Photo by Yasuo Katatae

石油元売り最大手、JXTGエネルギーの特約店の間で、怒りと困惑が広がっている。同社が特約店に対して、配送料を値上げする通達を出したからだ。関係者は年末から供給体制が不安定だったこともあり、腹に据えかねる思いで、その要請を受け入れている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)

 石油元売り最大手のJXTGエネルギーが、石油製品を卸供給する系列の特約店に対して、ガソリンや軽油、灯油などの石油製品の配送料を、6月から値上げするという通達を出していることが、本誌の調べで分かった。関係者によれば、特約店の取り扱う石油製品の量や種類によるが、1リットル当たり10~50銭の値上げだという。

 石油元売り業界では、ここ数年続いた大型再編でプレーヤーが減って競争が緩み、常態化していた安売り競争が収束。市況が好転し、石油元売りのみならず、特約店も十分な利益が取れる環境になっていた。

 そのため、「値上げ要請は受け入れざるを得ない。小売価格には転嫁せず、われわれの方でかぶる」と、あるJXTG系特約店の幹部は話す。

 しかし、心中は決して穏やかではない。それは、せっかく手にした再編の恩恵が、少なからず削られるということの他に、年末から元売りの配送体制の不備が原因で、大混乱が続いていたからだった。

「人殺し──」

 前出の特約店幹部は2月、暖房用燃料として重油を納品していた病院の関係者に、こう浴びせ掛けられたという。

 今冬は1月下旬の首都圏に続き、2月初旬には北陸が大雪に見舞われ、さらに強力な寒波が相次いで襲来した。そのため、暖房用の燃料需要が急増し、需給が逼迫。雪の影響がなくなった後も供給が追い付かず、北関東や北陸各地で、配送の大幅遅延が続出していた。

 この病院もその影響をもろに受けて、燃料が底を突く事態となってしまった。重篤な患者もいる病院では、ライフラインである燃料供給の不手際は命に関わる。それが分かっていただけに、特約店幹部はただただ、謝ることしかできなかったという。

 なぜこのような事態が起きたのか。単なる天候による不可抗力だったと片付けることはできない。根っこには、JXTGエネルギーが放置してきた配送体制の構造的問題があるからだ。

 JXTGエネルギーの石油製品の配送は、主にグループ内のエネックスやニヤクコーポレーションといった運送会社が担い、特約店やその販売先である大口顧客へタンクローリーで配送している。

 タンクローリーは1日4回転、つまり1台が1日当たり4回、配送ルートを巡る体制だった。ところが、この配送体制はタンクローリー運転手の長時間残業を前提としたものだった。

「働き方改革」に注力する労働基準監督署は、秋口から運送会社の営業所を相次いで指導。現在は「どこも残業時間を厳しく制限している」(運送会社担当者)状況だ。

 そのため、JXTGエネルギーの配送体制は1日2回転と半減。さらに悪いことに、「運転手の離職が相次いだ」(運送業界関係者)。多くの運転手が、残業をして稼ぐことを目的にしていたからだ。

 慢性的な運転手不足に陥った配送体制は、この時点ですでに綱渡り状態に陥っていた。そこで運送会社は、万が一ガソリンの配送遅延が起こり、ガソリンスタンドの店頭で品切れなどが発生すれば社会的影響が大きいとみて、ガソリンの供給体制整備を優先。重油などの産業用燃料の配送には手が回っていなかった。

 そんな中で大雪と寒波による需要急増が重なって、一気に供給網にほころびが現れたというわけだ。

 気温上昇で混乱は収拾するも、特約店の怒りは収まらず

「特約店は、顧客へ確実に供給するという前提で、元売りと卸供給契約を結んでいる。値上げの前に、しっかりと配送体制を整えてほしい。雪や寒波は今回の事態の理由にはならない」

 気温が上昇し始めた3月中旬から、暖房需要は縮小。現在は混乱が収まってはいるものの、間髪を入れずに配送料の値上げを要請してきたJXTGエネルギーに対して、前出の特約店幹部の怒りは収まらない。

 一方のJXTGエネルギーは、混乱の原因や対応策、配送料値上げの背景について、「回答は控える」と沈黙している。

 ただ、同社は「安定供給は石油元売りとして当社が果たすべき重要な責務の一つ」に据えている。実際、同社幹部は事有るごとに安定供給の重要性と石油元売り業界の公共性を口にしてきた。それにもかかわらず、タンクローリー運転手の長時間残業に頼った、不安定で脆弱な配送体制を放置していたのだ。

 運送業界の働き方改革は今後も進む。労働時間の上限規制や慢性的な人手不足への対応が必要なのは、JXTGエネルギーだけではない。早晩、同業他社も配送体制の再構築と配送料の値上げを迫られるだろう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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