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鼻セレブやカレーメシも、「改名後」にヒットした商品たち

2018年03月08日 06時00分更新

文● 真島加代(ダイヤモンド・オンライン

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商品の顔ともいうべき「商品名」。キャッチーでありつつ、購買意欲をそそる商品名が決まるまで、メーカーは試行錯誤を重ねている。しかし、中には世に出た後で“改名”し、バカ売れした商品も少なくない。(清談社 真島加代)

“改名”でヒット街道へ
「鼻セレブ」が日の目を見るまで

「ネピア モイスチャーティシュ」から「鼻セレブ」へ。改名とともに、うさぎやゴマフアザラシなどふわふわ系の動物パッケージに変更し、売り上げはなんと10倍に伸びた

 メーカーの汗と努力の結晶として、店頭に並ぶさまざまな商品。魅力的な商品名をつけることは重要なポイントとなる。その一方で、すでに販売されている商品の名前やコンセプトを丸ごと変えて売り上げがアップした商品も存在する。

 今回は名前を変えてバカ売れした3つの商品と、改名の経緯について各社の担当者に聞いた。

 まずひとつめは、王子ネピアのボックスティシュ「鼻セレブ」。しっとりとした肌触りが人気の「鼻セレブ」、もとは「ネピア モイスチャーティシュ」という名前だった。

「『鼻セレブ』の前身である『ネピア モイスチャーティシュ』が発売された1996年は、今のように“保湿ティシュ”というカテゴリーが確立されていませんでした。パッケージも目立ちにくいデザインだったため、なかなか店頭で手にとっていただく機会に恵まれなかったんです」(王子ネピア コンシューマーマーケティング部・酒井亜紀氏)

 今でこそ市場が確立されている保湿ティシュだが、発売時はカテゴリーそのものの認知度が低く、売り上げにつながらなかった。その一方で、実際に使用しているユーザーからは好評だったという。

「お客さまからは『使用感がとてもいい』『パッケージのデザインも品のある美しい青色で高級感がある』など、好意的なお声をいただいていました。もちろん、品質には自信があったので、まだ保湿ティシュを使ったことがない人にも試していただけるように、ネーミングやデザインを思い切って変えることになったんです」(同)

 その後「ネピア モイスチャーティシュ」の企画部員・デザイナーが集まり、プロジェクトチームを結成。同商品の魅力である「しっとりふわふわなティシュ」であることや、「鼻などの肌当たりがやわらかい」ことがひと目でわかるデザインやネーミングを生み出すために、話し合いが重ねられた。

「企画会議では、代案となる商品名が100案近く挙げられました。その中のひとつに『鼻セレブ』があったんです。“鼻”というインパクトのある漢字と、高級感をあらわす“セレブ”を用いたことが当時の企画部長に響き、一気に商品化に向けて話が進みました」(同)

改名前の「ネピア モイスチャーティシュ」。ヒットはしなかったものの、使い心地の良さはユーザーから高い評価を得ていた

 そして「鼻セレブ」のもうひとつの特徴ともいえる、ウサギやゴマフアザラシなどの可愛らしい動物をあしらったデザインも、このプロジェクト内で生まれた。

「当初は、人間の鼻をデザインに使って面白さを全面に押し出そう、という意見もありましたが、最終的に『ふわふわ』『やわらかい』というイメージを連想できる、白くてふわふわした動物のデザインを採用。ただ、社内では動物をデザインに用いることに反対する声もあったので、時間をかけてコンセプトの説明を行うなど、さまざまな調整を経て、2004年に『鼻セレブ』の発売に至りました」(同)

 インパクトのある名前と、こだわりのデザインを携えた「鼻セレブ」は、ユーザーから「かわいい」「おしゃれ」「面白い」などの高評価を受けて大ヒット。今では「ネピア モイスチャーティシュ」時代の10倍以上の売り上げを誇る、ロングセラー商品となっている。

改名効果で売り上げ17倍!
「まるでこたつソックス」

 靴下メーカー・岡本のヒット商品「まるでこたつソックス」。冬場の冷え対策グッズとして若い女性に人気を集めているが、もとは「三陰交をあたためるソックス」という、ちょっと渋めの名前だったという。

「13年発売の『三陰交をあたためるソックス』は、中高年、シニア層をターゲットにした商品でした。独自技術による、冷えのツボ“三陰交”を温める靴下として、機能性には自信があったのですが、思うようにユーザーを獲得することができず、売り上げが伸びなかったんです」(岡本・広報担当者)

 具体的な商品名だが「さまざまな企業や団体と開発した商品だったため、機能性を伝えることばかりが先立ってしまった」と、担当者は振り返る。そこで、同社では根本からブランドコンセプトやターゲットを見直すことになったという。

旧パッケージ(左)と改名後のパッケージ(右)。売り上げは17倍以上になった

「社内ミーティングでは、市場や生活者のマインドを分析し、消費者視点での分かりやすさを重視したネーミングを検討。会議中、履いたときの温かさが『まるでこたつみたいだ』という声があがり、そのひと言がチームメンバーの心に響きました。また、靴下を脱いでから60分後も温かさを持続できることも実証され、名実ともに『まるでこたつソックス』といえることから、この名前に決まりました』(同)

 15年には“足もとから、ちょっといいこと”をコンセプトに据えた「靴下サプリ」というシリーズのひとつとして「まるでこたつソックス」の販売を開始。

「サプリメントをイメージした白いパッケージが他社製品と差別化され、すぐに売れ筋商品となりました。予想を超える結果に、一時は欠品したことも。『三陰交をあたためるソックス』の発売年度(13年度)と商品名変更後(16年度)を数量ベースで比べると、17倍以上の売り上げとなりました」(同)

 日本の冬に欠かせない“こたつ”を用いたことで、ユーザーに温かさを伝えることに成功した「まるでこたつソックス」。つい履いてみたくなる、そんなネーミングだ。

理解不能の新しさが
「カレーメシ」の魅力

 日清食品の「カレーメシ」といえば、お湯を注ぐだけでカレーと具材、ライスが一緒に食べられる新感覚の即席カップライス。実はこのカレーメシも、もとは「カップカレーライス」という商品だった。

旧パッケージ(左)と改名後パッケージ(右)。「カレーライス」とはまったく別ものであるというメッセージを前面に打ち出して成功した

「『カップカレーライス』は、ライスとルー、具材がすべてひとつのカップに入ったインスタントカレーライスとして13年9月に発売しました。お客さまの味に対する評価は高く、販売も好調でしたが、ライスとルーが混ざっている出来上がりについては『これはカレーライスではない』というご指摘もあったんです」(日清食品 マーケティング部第7グループ・ブランドマネージャー金子大介氏)

 そこで、「カップカレーライス」はユーザーの声を考慮しつつ、ブランドを再構築することになった。商品名を変えるにあたり “新ジャンルのカレー”であることを強く押し出そうとしたという。

「従来の“カレーライス”とはまったく別ものであることを伝えるために、あえてカレーライスというワードを使わず『カレーメシ』としました。また、わかりやすく覚えやすいネーミングである点も、決め手になりました」(同)

「カップカレーライス」発売からわずか半年後に“改名”し、「カレーメシ」が店頭に並ぶことになった。そのスピード感にも驚きだが、「カレーメシ」といえば謎のマスコットキャラクター・カレーメシくんが「ジャスティス!」と叫ぶ、強烈なCMが話題に。CMの“謎”もまた、同社の狙いだったという。

「ブランドを再構築するにあたって、若者世代にターゲットを絞りました。そして、まったく新しいジャンルの商品であることを伝えるために『理解不能な新しさ』を意識した、ユニークで尖ったプロモーションを展開したんです」(同)

 カレーメシの“理解不能な新しさ”を前面に押し出した結果、ネット上で「ヤバい!」「狂ってる!」「このカオスなCMのカレーメシって何だ?」という声が湧き上がった。

「狙い通り、若者世代を中心に支持をいただき、売り上げも伸びました。16年にはそれまでのレンジ調理から、お湯を注ぐ“湯かけ調理”へとリニューアルし、おいしさと簡便性が上がったことで、売り上げも倍増するなど、現在も日々成長を続けています」(同)

 わかりやすいネーミングと理解不能なコンセプトの絶妙なバランスも、今やカレーメシの魅力となっている。

 改名後にヒットした商品に共通するのは品質への自信。より多くの人に高品質な商品を届けたい、という気持ちが改名後のヒットにつながっているのかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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