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歌舞伎町ホストが「色恋営業」から「ハイソで知的」にシフトする理由

2018年03月02日 06時00分更新

文● 森 江利子(ダイヤモンド・オンライン

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約200店舗のホストクラブがひしめき合う新宿・歌舞伎町。そのど真ん中に昨年、ホストクラブが運営する「本屋」が出現した。現役ホストたちが“書店員”という新たな顔をあわせ持った背景には、歌舞伎町の街に起こっている変化があるという。(清談社 森 江利子)

文学知識もあるホストが店員に!
歌舞伎町に突如出現した「ホスト書店」

風俗嬢やキャバクラ嬢のお客が減ったことで、いわゆる「色恋営業」だけでは生き残れなくなった。ルックスの良さとともに、高い教養を身につけて知的な会話でお客を楽しませる、いわば“銀座のクラブ化”が進んでいる

 昨年10月、東京・歌舞伎町に現れた「歌舞伎町ブックセンター」は、歌舞伎町の現役ホストが書店員として店に立つ、別名「ホスト書店」だ。

 一見すると、本屋には見えない派手な店構え。しかし、店内に入ると落ち着いた雰囲気で、コーヒーを飲みながら読書している客の姿も見える。

 壁一面の本棚には、谷崎純一郎の『痴人の愛』や、ナボコフの『ロリータ』といった国内外の純文学から、詩集、エッセイ、マンガ(ボーイズラブも)、写真集など、ジャンルを問わず、「LOVE」をテーマにセレクトされた本が並ぶ。

 スーツを着込んだ“ホスト書店員”に話しかけてみると、本のあらすじから作者のバックグラウンド、感想までを教えてくれた。こちらの好みの本のジャンルや話を伝えれば、オススメの本を見立ててくれるとのことだ。

「普段から上司に本を読め、読めと言われているので、読書するようになりました」と言うホストは、世間一般がホストに対して抱く“女を騙してカネを巻き上げる”というイメージとはかけ離れている。歌舞伎町のホスト業界に、いったい何が起こっているのだろうか。

色恋営業では生き残れない
“銀座化”する歌舞伎町のホストクラブ

「ここ数年間、歌舞伎町を訪れる客が増えたことで、ホストたちの“質”に変化が起こり始めているんです」

 こう語るのは、ホストクラブ業界に詳しい作家の内藤みかさんだ。

「転機となったのは、2004年頃からの『歌舞伎町浄化作戦』と呼ばれる取り締まりだったと言われています。終電から明け方までの時間帯の営業が禁止になり、仕事帰りのキャバクラ嬢や風俗嬢を相手にする、ホストの“ゴールデンタイム”を失いました。一時、業界にとって苦しい時代が続きましたが、代わりに昼間に働いている女性たちがホストクラブで遊び始めたんです」(内藤さん、以下同)

 彼女たちは、仕事帰りの早い時間帯に来店し、1~2杯だけ飲んで帰ることも珍しくないという。高価なシャンパンやボトルを入れて豪遊することは少なく、ホストに貢いで身を持ち崩すこともない。

「ホストとは友達のような感覚でいて、楽しく、気持ちよくお酒を飲ませてもらえればいいという、割り切った考え方が特徴的ですね」

 彼女たちが求めているのは、ホストとの甘い擬似恋愛ではないようだ。さらに内藤さんが指摘するのが、ホストクラブのビジネス利用の増加だ。

「ここ数年、女性社長たちが、夜のおもてなしの場が歌舞伎町にあることに気づき始めたんです。接待や商談のためにホストクラブをビジネスに利用する女性客が増え、歌舞伎町のホストクラブが“銀座のクラブ”化し始めているんです」

 客層が変われば、ホストに求められるスキルも自然と変化する。「ホストは、これまでのような“色恋営業”だけでは生き残りが難しくなった」と、内藤さん。

「ビジネスの場では、『この子ならソツなくこなしてくれる』という信頼感が指名につながります。つまり、ルックスの良さや女性の扱いに長けていることよりも、知識や教養があり、その場を円滑に回してくれて、取引先の前に出しても安心という“質”の高いホストが選ばれているんです」

中国や韓国からのお客も増加中
ホストクラブは「ジャパニーズカルチャー」

 たとえば、昨年のアメリカ大統領選の時期は、「ホストとトランプ氏の話題で盛り上がることもあった」という。本や新聞を読み、時事問題に明るいホストも増えているようだ。一部のホストたちは、新たなニーズを理解して勉強し、人気につなげ始めているという。

「こうした流れの中で登場した『ホスト書店』は、業界にとってもホストたちの文化的素養やイメージを育てたい、歌舞伎町という街全体の“質”を上げたいという目的があるのではないでしょうか」

 歌舞伎町のホストも、銀座のホステスのような才色兼備型への進化を迫られているということだろうか。

 また最近では、外国人観光客もホストクラブに流れ始めているという。もともと歌舞伎町は、ロボットレストランや新宿ゴールデン街、サムライミュージアムといった人気の観光スポットを多く有し、外国人観光客が多く訪れるエリアだ。歌舞伎町を歩いていれば、自然とホストクラブの看板が目につくだろう。

「ホストクラブの初回料金は数千円とリーズナブルなため、外国人観光客にとっても立ち寄りやすいんです。とくにアジア圏の女性は、欧米のようなレディーファースト文化に馴れていないため、ホストの丁寧な応対がとても新鮮に映るようです。中国、韓国などの隣国からはリピーターも見込めるため、ホストにとっても新規開拓の余地があります」

“言葉の壁”は大きな問題となるが、外国語のスキルを勉強し、身につけるホストも少なくないという。

「海外にはホストクラブのような業態の店はほとんどないこともあり、ホストクラブ=“ジャパニーズカルチャー”という側面は、今後さらに注目を集めるでしょう」(内藤さん)

 ホストたちが、より“スマート”に進化を遂げることで、世界有数の歓楽街・歌舞伎町にも新しい表情が生まれているようだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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