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中国の外食市場で日本の「お好み焼き」に可能性がある理由

2018年02月28日 06時00分更新

文● 藤岡久士(ダイヤモンド・オンライン

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中国人にとって日本のソースは「家庭では再現できない特別な味」と感じるため、「お好み焼き」にも普及のチャンスがある

巨大な中国の外食市場に活路を求めて進出する日本の外食企業は増えている。今後もますます増えるのは間違いないだろう。ところで、中国ではどんな日本食に可能性があるのか。外食企業の中国市場攻略のポイントを業態別に、中国在住でサービス業のコンサルを行っている筆者の経験を踏まえて解説する。(ゼロイチ・フード・ラボCEO 藤岡久士)

進化と拡大を続ける中国の外食市場に
活路を求める日本の外食企業

 シュリンクし続ける日本市場に焦りを感じ、打開策を海外に求める外食企業は少なくない。

 その進出先は、法的環境面、物価面で進出しやすい香港、シンガポールといった国(地域)から、2001年の中国のWTO加盟をきっかけに、市場規模が大きく将来性のある中国へとシフトした。

 その後、2012年の尖閣諸島問題(反日デモ)を機に、改めてチャイナリスクがクローズアップされ、注目はタイ、ミャンマー、カンボジアといったASEANの新興諸国へと移っていった。

 日系企業が撤退あるいは静観視してきたここ数年も、中国市場は引き続き拡大を続け、中国外食企業のレベルは、既に侮れないレベルまで進化してきている。

 常に過剰な需要過多と供給過多を繰り返す難しい中国市場だが、数の上では飽和状態に見えるその市場も、まだまだ発展途上であり、実は入り込む余地は十分にある。

今後は内陸部の地方都市へ展開できるか
回転寿司と日式焼肉

 まず、日本では外国人旅行客に人気の回転寿司業態。

 もともと刺身を食べる習慣がなかった中国人だが、近年、サーモンを中心に生食を受け入れる層は飛躍的に増えた。

「原材料が日本以上に高くつくこと」「投資額が大きいこと」「内陸部においてはコールドチェーン(低温流通網)が未整備なこと」等、それなりの課題はあるものの、以前に比べると参入のハードルは下がりつつある。

 今後は内陸部の都市(2級都市、3級都市)を巻き込みながら市場はさらに拡大していくと考えられる。

 焼肉業態は、特に高価なイメージの強い牛肉はハレ感もあり、その消費動向が注目されている。

「日式焼肉」は既に広く認知され始め、沿岸部の大都市(1級都市、2級都市)では見かけるようになってきた。

 今後、同業態が目指すべきは内陸部の地方都市(3級都市、4級都市)だと思うのだが、そこで課題となってくるのが価格である。

 現在、沿岸部で主流となっている「日式焼肉」店の客単価は200元(約3500円)前後。

 一方、地方都市で受け入れられる価格帯はその半分程度であり、現状中国で、その価格帯で満足のいくクオリティを再現するのは難しいのが実情である。

 規制緩和が進み、アメリカから安価な牛肉が入ってくれば、一気に市場が拡大する可能性がある。

値段とローカライズがカギとなる
日式ラーメンや麺類

 日式ラーメンは中国でも広く知られており、中でも豚骨ラーメンは、中国人にも人気の高い日本食の一つである。

 2000年頃の濃縮スープをお湯で薄めた豚骨ラーメンが中心であった導入期を経て、現在は沿岸部の大都市を中心に本格的な豚骨ラーメンが食べられる店舗が増えてきた。

 今後、「さらに普及するかどうか」という点を考えると、やはり課題は価格である。1杯40~60元(約700~1050円)のラーメンを受け入れられる層は限定的だからだ。

「油分が強いことを嫌う」「塩味が強いことを嫌う」「白濁したスープを好む」等、中国人の好みを捉え、値ごろ感のある価格で本格的な豚骨ラーメンの提供ができれば、大きく市場が開ける可能性がある。

 ラーメン以外の麺業態(うどん、パスタ)はどうだろうか。

 中国で一般的に麺は、「安価な、お腹を膨らます食べ物」と認識されており、「ジャンル」や「テイスト」を変えても“ハレ業態”に作り変えることは難しい。

「煮干し」や「鰹」を使ったうどんの出汁は、中国人に受け入れられにくい風味であり、万人向けではない。

 また、パスタも、スープがない拌面(バンミエン:混ぜソバ)と認識され、スープがない分、総じて「付加価値をON」するのが難しい。

 麺業態に関しては、日常の価格帯で、ローカライズできるかが、成功の鍵になるだろう。

日本のソースに可能性がある「お好み焼き」
懐石割烹は「日本のこだわり」を捨てる!?

 日本人にはおなじみのお好み焼きやもんじゃ焼きなどの粉物業態は、中国でも十分に普及の可能性がある。

 一般的に、日本人は、XO醤やオイスターソースを使った中華料理を食べると「本格的だ」と認識するが、中国人にとっては、日本のソースも同様に「スペシャルソース」である。即ち、「家庭では再現できない特別な味だ」と感じているからだ。

「たこ焼き」「(ソース)焼きそば」といった、日本のソースを使った料理自体は、既に中国国内には広く浸透しており、馴染みもある。現地化の進め方によっては、面白い展開が期待できるかもしれない。

 一方、本格的な日本料理ともいえる懐石割烹は、沿岸部大都市の一部を除くと、中国に本物の懐石料理や割烹料理を理解する層は存在しない。

 他方、目で楽しませるその提供方法に関しては、多くの中国人が一定の理解と興味を示している。職人頼りのメニューでは、中国市場で展開を広げることは期待できないだろう。

 日本のこだわりを捨て、小洒落た居酒屋料理を懐石風に仕立てる等、「チェーンオペレーション化」と「現地化(顧客目線)」を意識すると、アイデア次第で面白い展開ができるかもしれない。

日式カレーは根付くのに時間がかかる
本格的なイタリアン、フレンチもまだ馴染みがない

 既に中国ですっかり認知されている日式カレーだが、これをさらに根付かせていくためには、まだ時間がかかると思われる。

 本来、日本のカレーの素となるスパイスの多くは中国でも使用されており、カレー味の料理は存在していた。これが、これまでの日式カレー導入期においてプラスに働いたことは間違いない。

 一方、ラーメンが豚骨ラーメン一辺倒であるのと同様、日本にあるさまざまなカレーのバリエーションを、中国で広げていくことはなかなか難しい。

 妨げとなっているのは、「コク」や「深み」に対し、理解は示すものの、その価値を価格にONできないという現状である。

 中国人の味覚や価値観も変わりつつあるとはいえ、まずは都市部を中心にニッチ市場で展開するのが賢明ではないだろうか。

 そのほか、イタリアンやフレンチなど外国料理業態はどうなのであろうか。

 厳しい言い方だが、多くの中国人にとって既に日本は憧れの国ではない。日本人同様、中国でも外国料理に求めるキーワードは「本格的」あるいは「○○人に合わせた」の2つである。

 中国であれば、後者の○○人に当たるのは当然中国人であり、日本人ではない。即ち、中国人にとって、日本風の外国料理は偽物の「なんちゃって外国料理」であり、そこに「価値」を見出させるのは容易ではない。

 もっとも、中国人はいまだに欧米のバターや生クリームたっぷりのソースに馴染んでいないのが実情だ。味付けにおいては、本物より「日本風」の方が美味しいと感じる中国人は結構多いのだ。

 こうした状況を見ると、外国料理のカテゴリーは、まだまだ隙間が多くチャンスがあるだろう。

「日本」、「日本ブランド」に頼らず、市場に合わせた形でチャレンジするのであれば、可能性は眠っているのではないだろうか。

中国の外食市場は
中華料理主体でハレ食が中心

 中国の外食市場の特徴は、まだまだ「圧倒的に中華料理が主体な市場であること」と「圧倒的な“ハレ食”市場であること」だ。

 前者は、日系企業が提供する(外国)料理の市場が想像以上に小さく、多くの日系企業にとって、いまだにスケールメリットを享受しにくい発展途上の環境にある事を意味する。

 裏を返せば、今後この市場の比率は確実に拡大していくと考えられ、まだまだ伸び代が残されているとも言える。

 後者の傾向も同様に、日常使いの業態が多い日系チェーン店にとっては、厳しい環境を作り出す要因となっている。

 正直に言えば、中国市場の攻略は簡単ではない。

 しかし、日本の業態をただ再現するのではなく、中国人が「価値を感じられる業態への変換」「使用シーンを想定した業態への変換」を心がけることで、業態問わず糸口が見えてくるのではないだろうか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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