ローエンドVGAを生産し続けるが
技術と資産をATIに売却
1992年にVL-Busの普及が始まると、同社もすぐさまこれに対応したOTI087を出荷する。VL-Busで常に問題になった不安定さはOTI087ではほとんど問題にならなかったが、その一方で基本的にはSuperVGAの延長でしかなく、描画アクセラレーター機能などは一切持ち合わせていなかったので、Cirrus LogicのGL-GD5434と市場を競うことになった。
ただこの当時、意外な用途で多用されることになった。それはWeitekのP9000用VGAである。連載158回でも書いたが、同社のP9000は2Dのグラフィックアクセラレーターとしてはきわめて優秀だったものの、VGA機能がないためにこのままだとMS-DOSやWindowsで利用できなかった。
画像の出典は、“VGA Legacy MKIII”
そこでP9000には別途VGAチップを組み合わせる必要があり、ここでOTI087に白羽の矢が立った格好だ。もっとも実際に使われたのはOTI087Xという外部メモリーバスを8bit幅に抑えたバージョンで、これもあって速度、解像度ともに芳しくはなかったが、なにしろWindowsが立ち上がるまでのつなぎという扱いなのでこれでもよかったらしい。
ただこの先もビデオチップで生き残っていくためにはテコ入れが必要という認識があったようで、1993年秋にまずSpitfireという製品シリーズを投入する。最初に投入されたのはOTI64105と64107で、BitBlt機能のほかいくつかの2Dアクセラレーターを搭載する。
この64105/64107をPCI対応にするとともに、RAMDACを内蔵したのが1995年に投入されたOTI64111である。もっともアクセラレーターの性能はあまり芳しくなく、結果としてローエンド市場でS3などとシェアを奪い合うことになった。
画像の出典は、“VGA Legacy MKIII”
このSpitfireはDRAMとEDO DRAMに対応した製品だが、せめてメモリーアクセスを高速化しようということで開発されたのがEONことOTI 64217である。
こちらはEDO DRAMに加えてSGRAMのサポートを追加しているが、まだこの当時SGRAMが高価だったことを考えると、同社の低価格路線とあまりマッチしていない気がする。実際搭載製品を筆者は見たことがない。
このVGAの最後の製品が、同社としては初の(そして最後の)3Dアクセラレーター機能を搭載したWarp 5ことOTI 64317である。
タイリング方式のレンダリングや、S3TCに似たテクスチャー圧縮技術などいろいろ見るべきものはあるのだが、テストチップでの評価はNVIDIAのRIVA 128に3割ほど差をつけられている程度で、市場での存在感を維持していくのはかなり大変と考えられた。
一応OTI 64217と完全ピンコンパチという配慮はあったのだが、残念ながらこれを出しても市場でのシェアはそう大きくなく、しかも今後も同じ存在感を維持していくには結構なコストがかかると判断したのだろう。
1997年秋に製品予告までしておきながら(なんでもMetadataがWicked 3Dのブランドで製品予定していたらしい)、最終的にOTI 64317は市場に出ることはなく、チップおよびその技術や資産と、おそらくは携わっていたエンジニアの大半を、丸ごとATI Technologiesに売却してしまい、ここでOak TechnologyのVGAチップの系譜は途切れることになった。
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