芸能人が、こぞって着手するサイドビジネスがある。“パワーストーン”だ。天然石を使ったブレスレットなど、オリジナル商品を作ってネット上で販売するスタイルが一般的で、最近では芸能人だけでなく、話題のキラキラ起業女子業界にも、このビジネスモデルが浸透している。パワーストーンビジネスの実態を、天然石の専門家に尋ねた。(清談社 北条マサ子)
芸能人からキラキラ起業女子まで
パワーストーンビジネスはなぜ流行る
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原価が安く、専門知識も不要なパワーストーンビジネスは手がける人が大勢いるが、中には「まがい物」の石を売りつけたりする輩もいる。天然石業者が語る業界の裏側とは? |
千秋や安田美沙子、辻希美、梅宮アンナ、クリス松村と、これまでパワーストーンをプロデュースしてきた芸能人たちは、数え切れない。中でも千秋がプロデュースする天然石ブレスブランド『Love Stone』は、芸能人にもファンが多い。
さらに、キラキラ起業女子たちの間でも、突如パワーストーンのオリジナル商品の販売を始めるケースが急増している。天然石のショップを経営する岡本孝氏(仮名)は、匿名を条件にパワーストーンビジネスのカラクリについて話してくれた。
「高価で希少な天然石を買う場合は、コネクションを持ったうえで、海外まで買い付けに行かなければ手に入りませんが、ブレスレットに使われるようなパワーストーンであれば、御徒町で買うことができます」
石の卸売市場といえば、東京・御徒町。ここに行けば大抵の石が手に入るのだという。市場では、水晶やなどの石が箱の中にジャラジャラと入って売られており、安いものだと1粒10円もしない。そのほかの細かい部品は、ユザワヤなどの手芸ショップで手に入る。
「センスに自信がある人なら、『かわいい』と言われるオリジナル商品を作ることもできると思います。服やバッグのオリジナル商品を作るよりも、資金や人件費を使わずにすむので、パワーストーンビジネスは、比較的参入しやすい業界と言えるのではないでしょうか」
製造に関しては工場に注文しなければならないケースもあるが、シンプルなブレスレットであれば、10分程度で出来上がる。安い石なら諸々の費用を含めても原価1000円ちょっとで作ることが可能だ。
石の原価が安いうえに
専門知識も不要
安くて簡単にオリジナル商品が作れるという、大きなメリットを持つパワーストーンビジネス。中には、無在庫のままビジネスをスタートさせるケースもある。
「ネット販売の場合、注文が入ってから石を仕入れるケースもあるという話は聞きます。注文が入った時点で仕入れれば、資金もいらないし在庫を抱える心配もありませんね」
いわゆる無在庫販売である。売れ残りのリスクもない、資金もいらない、専門知識もいらないとくれば、本当に簡単に思えてくるが、そう簡単にいくものなのか。
「もちろん、売れなければ何の意味もありません。ですが、芸能人もキラキラ起業女子も、一定数のファンがいるわけですよね。そういう人たちが作るのなら、ある程度の収益は期待できるのではないでしょうか。作った分だけファンが買ってくれるなんて人もいると思いますよ」
パワーストーンは「お守り」に近いため、女性に人気が高い。ただし、石そのものの価値に対して、驚くような価格を付けていたり、詐欺的な商品もしばしばあるという。
「石の品質といっても、色々あります。たとえば、恋愛運のお守りとして女性に人気のローズクォーツですが、石に色素を入れて、ピンクにしているだけのものもあるんです。それを本物の天然石と偽って、数万円で販売している悪質なサイトもあるので、気をつけてください。本物の石かどうかの見極めは素人には難しいので、石のプロに頼むのが一番だと思います」
サイト上で『本物の天然石』と謳っていても、どこまでが本当かはわからない。また、パワーストーンという言葉が和製英語であるように、天然石に意味があるというのも日本独自の文化だという。
「ローズクォーツが恋愛に効くだとか、ルチルクォーツが金運にいいだとか言われていますが、海外ではあまりそういったことを耳にしません。石の意味がここまで浸透しているのは、日本以外だと中国とタイくらいかもしれません」
高品質を謳っている商品でも、もしかしたら御徒町で1粒10円で売っている着色済みの石かもしれない。本物の天然石で作られたパワーストーンブレスレットがほしいならば、店選びの段階から見極めるべきだろう。
※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら
