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ガソリン決済「スピードパス」廃止!?の裏に“大人の事情”

2018年01月31日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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業界では非常に好評だったスピードパス。2019年7月には姿を消すかもしれない Photo by Ryo Horiuchi

 業界トップというプライドが、合理的な判断を阻む結果につながったのだろうか。石油元売り業界首位のJXTGホールディングス(HD)は、セルフガソリンスタンド(GS)の新ブランド「エネジェット」を発表。その新しい決済ツールとして「エネキー」を2019年7月から展開することを決めた。

 17年4月に、業界1位のJXHDと3位の東燃ゼネラル石油が経営統合し、国内ガソリン販売シェア50%を超える巨大企業になったJXTG。こうした吸収合併にはつきものだが、のみ込んだJX側の流儀が、のみ込まれた東燃側のそれを駆逐し続けている。

 今回の決済機能サービスの一本化もその典型であるといえそうだ。エネキーは、旧東燃系のセルフGS「エクスプレス」で採用するために開発された決済ツール「スピードパス」に“取って代わる”サービスとなる。

 スピードパスとは、キーホルダー型の非接触決済ツールで、17年末時点で、なんと570万本も普及しているのだ。給油が素早く簡単にできる決済ツールとして、業界内での評価はすこぶる高い。そのため、統合後もスピードパスが温存されるかどうかが注目されていた。

 旧JXにとって、旧東燃が開発したスピードパスは厄介な存在だったのかもしれない。旧JXにはスピードパスに匹敵するような強力な決済ツールがなかったからだ。そこでスピードパスの機能を“丸のみ”し、エネキーという新ブランドを打ち出すことにした。

業績堅調に潜む影

「東燃をのみ込んだ側の“勝者の論理”がまかり通ってしまったんじゃないの」。関東地方でエクスプレスを運営する経営者は、そう吐き捨てるように言った。

 今後、エネキーはJXTGグループのセルフGS約3900カ所で採用される方針。ブランド統一後のスピードパスの取り扱いについて、「今は検討中」(JXTG担当者)と言葉を濁すが、スピードパスがそのまま使える可能性は低い。利用者はエネキーへの交換を余儀なくされることになりそうだ。

 利用者の利便性よりも勝者の論理を優先させたJXTGの決断に、首をかしげる関係者は多い。前出の経営者は「遅れている。ものすごい手間だし、無駄だよね」とあきれ顔だ。

 目下のところ、JXTGの業績は堅調だ。17年度通期決算の見通しでは、在庫影響を除いた営業利益は4100億円。中期経営計画で示した18年度の目標を前倒しで実現できそうな勢いだ。

 だが、いまだに旧JXか旧東燃かというサービスの“出自”にこだわる姿は褒められたものではない。人口減少や自動車の電動化等により、石油製品をめぐる市場環境は厳しい。いつまでも業界首位の座にあぐらをかいていられるはずはない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 堀内 亮)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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