このページの本文へ

つみたてNISA、出足が鈍いワケは金融機関の「実入り」にある

2018年01月23日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
金融庁の森長官(写真)の肝いりで始まったつみたてNISAだが、鈍い滑り出しとの声が聞かれる Photo:JIJI

「正直、相当少ないですね」。1月に買い付けが始まった積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」の申し込み状況をめぐり、ある投資信託会社の担当者は思わず落胆の声を漏らした。

 つみたてNISAは、若年層の資産形成の普及を図ろうと、金融庁の森信親長官の肝いりで創設された新制度。申し込み自体は昨年10月に始まっており、日本証券業協会が1月17日に公表した、つみたてNISAを導入済みの証券7社(大手証券・ネット専業証券)の申込件数は、2017年末時点で合計19万6000口座だった。

 この数字は多いのか、少ないのか。日証協の鈴木茂晴会長は同日の記者会見で「(長期投資を想定した制度のため)やってよかったと認識するのに5~10年はかかる」として、「順調なスタートを切った」と述べた。だが、証券業界の関係者からは、冒頭のように出足の鈍さを嘆く声が少なくない。

 脳裏をよぎるのは、14年1月に導入された“元祖NISA”開始時の盛況ぶりだ。当時は各社がこぞってキャンペーンを繰り広げるなど、口座開設への積極的な誘致姿勢が目立った。それに比べ、つみたてNISAは今なお未参入の金融機関が珍しくなく、当時とは明らかに温度差がある。口座数を見ても、14年のNISA開始月末に主要証券10社で300万弱あったのに対し、足元ではその10分の1以下にすぎない。

目先の低収益のみ込めるか

 つみたてNISAの対象商品は金融庁が「適格」と定める投信に限られ、多くの投信や株式から自ら投資先を選ぶ必要のあるNISAより、投資初心者でも比較的手を付けやすい。両制度は非課税の投資額も期間も異なるものの、併用はできない仕組みとなっている。

 もっとも金融機関の目線で見ると、最大の違いは収益上の“実入り”の差にある。つみたてNISAの対象は販売手数料ゼロで、金融機関への信託報酬も極めて低い投信のみであり、相当残高を積み上げないかぎりは採算が合わない。

 中小証券会社や地方銀行などでは、システム投資との兼ね合いで導入を見送ったり、販売対応が遅れたりするところも散見される。

 とはいえ「貯蓄から投資」の本格化には、森長官が1月15日に都内の講演で「これまでは国民の資産形成ではなく、金融機関の収益形成のための販売が行われてきた」と改めて批判したように、手数料の高い毎月分配型投信などを短期間で次々に回転させてきた悪癖から、中長期の資産形成定着へと脱皮すべきなのは論をまたない。

 金融庁も自ら“範”を示そうと、庁内職員が対象の「職場つみたてNISA」の募集を開始済み。この形が一般企業にも広がれば、つみたてNISA普及が大きく進むとの期待感もある。目先の低収益をのみ込んで業界側が本腰を入れられるかどうかが、その鍵を握るようにも映る。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田幸平)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ